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第2話 青い瞳


「う〜ん、」


かれこれ2時間は聞き込みをしなから

市場を回っているが、全くと言って良いほど

手がかりがない。


「ライ、光が真上に来ている。そろそろ休憩しよう。」

「うん、」


本当はまだ探したいけど、お腹も空いたし、

なにより足がもう限界でクタクタだ。

そう思い休憩出来る場所を探していると


「おい、お前。お前だよちっこいの。」


男の声で何度も呼びかけてくる。

あまりにしつこいので僕のことを呼んでいるのだろうと思い

声のした方へ振り向く。


「青い瞳じゃねぇか。珍しいな。」

「…」


いきなり言われ、驚いて固まってしまう。

振り向いたのは間違いだったかもしれない。

そう思いながら、動けないでいると

男は不意に手を伸ばし僕の頬を触った。


「…」


振りほどくことはしなかった。

手つきはとても優しかったけど、

彼の目は気味が悪いほどに真っ赤だったから。


「…お兄さん、誰?」


長い沈黙の末、周りの雑音だけが耳に響いていたが、


「離れてください!!」


後ろから聞こえてきたレオの声に、思わず振り向き、

珍しく焦っているレオを見て、直ぐに側へ走る。


「大丈夫か?」


レオは僕の頭を一撫したあと、後ろに僕を隠す。


「…魔人が何の用ですか。」


そしてすぐにまた男を警戒し、距離をとる。


「獣人か…使役されてる分際で、誰に口聞いてんだ?」


肉食系の獣人を中心に使役する存在である魔人は、

三種人の中でも気性が荒く、残虐としても有名。

下手なことは出来ない。


「…。」


「だんまりか。それはそうとお前珍しいもん飼ってんな。」


僕を指先して笑う。


「…この子は親戚の子です。…家畜のような言い方は

やめてください。」

さっきよりも念入りに僕を後ろに隠す。


「ハッ、獣人なんて家畜と変わんねぇだろ?

俺たちがいるからお前らが生きていけるんだ。」

「…私達が貴方達の生活を支えてるんですよ。」


レオの不服そうな物言いに、


「ぷ、あはは!」


いきなり大きな声で笑ったかと思うと、

一気に距離を詰め、レオの首を掴み締め上げる。


「っゔ!!」

「俺が優しいからって調子に乗るなよ〜、

…殺しちまうだろ。」


体格的にはレオの方が大きいが、

男の腕はみるみる上へ上がっていき、

あっという間にレオの足は地面から離れてしまう。


「あが、!」


苦しそうにもがくレオを見て、恍惚と笑う男に

寒気がして、「やめて!!」と、大きな声で怒鳴ると


「!!…」


男は直ぐに手を離し、僕とレオから距離をとる。


「レオを虐めるのは許さない!!」


倒れ込むレオを庇おうと、咄嗟に前に出てるが、


「っ!…ライ、」


レオは、危ないから。と僕の腕を掴み後ろから

守るように抱きしめる。

こんな時でも庇おうとしてくれるなんて、

そう思いながら、優しいレオを苦しめた男に

怒りを抑えられない。


「はぁ、めんどくせぇな…。あ、そうだ!」


何かを良いことを思いついたと言わんばかりに

無邪気な笑顔を見せる。そして


「このガキ、俺が貰っていいよな!」


考えうる中で最悪の提案をし始めた。


「!、言い訳ないでしょう!!」


レオがまた怒りを露わにする。


「おいおい、ほんと頭悪いなぁお前。

三種人の言うことは絶対なんだよ。

お前に拒否権なんてねぇの、分かる?」


頭をかきながらイライラとした態度を

隠す気もない男は、足に力を入れ地面に

ヒビを入れる。


「それでもこの子は渡せません。…貴方がこの子に

危害を加えないとは思えない。」


レオは魔人の男に何やら憎しみの籠った目を

向けながら立ち上がる。


「…知能の低い肉食獣人の方が余っ程危険だろう?」


言葉尻をすくうように、すぐさま反論するが


「…魔族は…賢いからこそ残虐性は肉食獣人以上でしょう。」


というレオの言い返しに、大きな舌打ちをすると


「はっ!別に何もしねぇよ、ただ気になるから

連れて行くだけだ。飽きたら返す。」


そういって悪びれもなく、話す男に、


「っ!…いい加減にしろよ!!

あの時もそう言って…結局兄さんは!!」


ついにレオは怒りを露わにする。


「レ、レオ!」


レオがこんなに怒るなんて、

普段僕が何をしても怒ることはまず無いし、

それこそこんな姿、見た事がない。

そのレオが額に青筋を浮かべる程、

激昂している姿を見て、思わず息を飲む。


「兄さん?なんの事だ?」

この男には思い当たる節がないのだろう、

不思議そうに首を傾げている。

その姿に、レオは拳を握りしめながら

ゆっくりと話し始める。


「…あんたらは、自分の世話をさせる為だけに、

気にった子をまだ幼いうちに攫って使用人に育てる!

素直に従わない子には、…暴力を使って従わせて…

少しでも気に食わないと簡単に切り捨てて

また次の子を探す!!」

「あー。」

「気に食わないなら家に返してくれれば

いいものを、お前らは!!」


レオはそこまでいうと、ぐっと我慢し口を

つぐんだ。これ以上は言いたくなかったのか、

聞かせたくなかったのか、どちらかは分からないけど、

「?、それが獣人だろ?」


悪びれもなく、さぞ当たり前と言わんばかりの、

その表情に思わず目を見開く。


「っ!!…だから、…あんたにはこの子を渡せねぇんだよ!!」


苦しそうな表情を浮かべるレオは

目の前の男に怒鳴ると、

僕を抱き上げてその場から走り出した。


「レオ、!」


肉食獣人が、三種人に逆らうなんて

前代未聞。捕まれば確実に殺されてしまうだろう。

レオもそれが分かっているからか、

普段は使わない裏路地へと入っていく。


「すまないライ、俺が我慢するべきだったのに。」


レオの声は弱々しく、僕を抱きしめる手に

力が入る。


「レオ、」


本当は怖かったはずだ。ただでさえ肉食獣人は

魔人に酷い扱いを受けてきた。

レオの家族だって例外じゃない。

それなのに、身を呈して僕を守ってくれた。


「僕を守ってくれてありがとう…。」


めいいっぱい抱きしめると、「こちらこそ」と

言って頭を撫でる手は凄く優しい、なんて思って

いたが、そうこうしているうちに裏路地を抜け、

また違う通りに出る。そこでレオは小さなマントを

買って僕に着せると、また抱き上げた。


「少し我慢してくれ、このまま移動する。」

「うん、分かった。」


人混みの中を抜け、西側の通行所から

外へ出ようと試みたが、既に情報が

回っているのか、何やら騒がしい。

どうするべきか悩んでいると、


「貴方達、そっちは駄目よ。」


話しかけて来たのは、

長い白髪と背中に羽を持つ種族。

天人族だった。


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