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【書籍化決定!】薬師ヒナタは癒したい~ブラック医術ギルドを追放されたポーション師は商業ギルドで才能を開花させる~  作者: みんと
第三章 王国・首都 編

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第96話 尋問【side:カエデ】


「ん……」


「どうやら、目覚めたようだね……」


あれからしばらくして、私は目を覚ました。

どうやら私の身体は、ロープで縛られているようだ……。

それにしても、ヒナタ・ラリアークにあそこまでの力があったなんて……想定外だ。

これでは王女さまに面目が立たない。


「っく……任務は失敗だ! 殺せ!」


「いや、殺さないよ……。それよりも……どういうことか、聞かせてくれるかな?」


「シノビの口を割らせようとしたって無駄だ! 私たちは決して情報をもらさない!」


「さっきはあれだけ漏らしたのに……?」


「あ……それは……」


私はとたんに恥ずかしくなる。

まさかシノビであるはずの私が、そんな辱めを受けるなんて……!


「っく……殺してくれ……!」


「いや……殺さないって……それよりも、話をさせてくれないかな?」


「わかった……どうしても殺してくれないというのなら、もはや降参だ……。私は生きる目的を失った。帰る場所はない。煮るなり焼くなり、好きにしてくれ」


「いや、だから手荒な真似はなにもしないって……」


仮に、上手く逃げおおせたとしても、王女のもとに帰ればどうせ私は殺されるだろう。

そもそもこれは表向きの仕事じゃないし、失敗は死を意味する。

つまりは、私は自殺せねばならないのだ……。

それだけは避けたかったが……仕方がない。


――ガリ。


私はあらかじめ口に含んであった毒入りの玉を奥歯で潰す。

すぐに体に毒が回り、私の命は消えるだろう。


「う……」


「どうしたんだ!? ……! 大変だ! 毒を飲んだみたいだ……。ライラさん、すぐに水を!」


「は、はい!」


ふん……無駄だ。

この毒は我々シノビに代々伝わる、即効性の致死毒だ。

どんな手を尽くしたって、助けるのは不可能!


「――活性(ブースト)


「……は?」


ヒナタ・ラリアークめ!

どういうつもりだ!

こいつ、よりにもよって私の身体に活性(ブースト)の魔法をかけやがった!

クソ! これでは私の免疫が活性化して、毒のまわりが遅くなる。


「――活性(ブースト)


「く! やめろ!」


「やめないよ。僕は絶対に君を殺さない……」


――キュン!


は?

私は自分でもわけがわからなかった。

ヒナタ・ラリアークの、真剣なまなざしに、一瞬ときめいてしまったのだ。

私が殺すべき対象である、彼に。


私は今まで、すべての人生を暗殺者として過ごしてきた。

我々はいわば捨て駒で、いつでも命を落とす可能性がある。

そして、代わりはいくらでもいる存在だ。

そんな私の命に、ここまで一生懸命になってくれるだなんて……。


「ポーション錬金(クリエイト)!」


「やめろ、なにをしている! ポーションなんか作るな!」


「――活性(ブースト)


ヒナタ・ラリアークは私の声など無視して、淡々と目の前の作業に没頭する。

その真剣な姿は、どこ職人のようでかっこよかった。


「できたよ、解毒ポーションだ」


「う……やめろ」


私は必至に口をつぐみ、飲むのを抵抗する。


「仕方がないなぁ……ちょっと我慢してよ……」


「え? は? う……」


突如、ヒナタ・ラリアークは何を思ったか、解毒ポーションを自分の口に含みだした。

そして私に接吻し、口からそれを流し込む。

そんな……。

辱めを受けただけでなく、初めての接吻まで奪われるなんて……!


「やめろ……! くそ! やめろよ……! はじめてだったのに……!」


「え、あぁ……それはごめん……」


くそ、解毒ポーションを飲んでしまった……。

自殺に失敗したシノビなんて……もはや何者でもない……。

私はこれから、どうすればいいのだろうか……。


「でも、助けられてよかったよ。君が死ななくて」


「う、うるさい!」


なんでこいつは、ここまで満面の笑みを私に向けることができるんだ?

私はお前を殺そうとしたのだぞ?

ある意味イカレている……。

スカーレット王女がこいつを危険視するのも、納得だ。


だが私もどうかしている……。

さっきから、胸の鼓動が抑えられないのだ。

顔が紅潮しているのは、毒で死にかけたからではない。

私は初めて、優しさを向けられたのだ。


どのみち行くところはないのだ。

ならば彼に、その責任を取ってもらおう――。





【side:ヒナタ】


どうやら、解毒には成功したみたいだね……。

本当によかった。

暗殺者と言えども、ヒナギクと同じくらいの歳の女の子だしね。


「それで……これからどうするんだい? まだ、話す気にはなれないかな?」


僕は、妹に話すように優しく語りかける。

やっぱり、こんな小さな子を脅すような真似は出来ない。


「責任をとれ!」


「……は?」


急になにを言い出したんだろう……?


「私の婚約者になれ!」


「ええ!? いったい、何がどうなったらそんな話になるの!?」


するとそこに、水をとりに行っていたライラさんが戻ってきた。


「だ、ダメです! ヒナタくんは私の婚約者なんですから!」


「えぇ!? ライラさんまで!?」



「「いーーーーーーー!」」



2人はにらみ合い、歯を見せあって威嚇する。

どういうことなの……。





「で、その子をヒナタくんの元に置くんですか……? 本当に?」


「ええ、この子はとりあえず、僕が預かります。彼女もそのつもりみたいだし……。それに、ヒナギクとヒナドリちゃんがいるので、一人くらい増えたって、どうってことないですよ」


「そういうことではなくて……! その子は、ヒナタくんを殺そうとしたんですよ!?」


「大丈夫ですよ。もう彼女に殺意はないみたいですし……」


僕は言いながら、彼女――カエデちゃんの頭をなでる。

彼女もなんだか嬉しそうだ。


「そうだぞ! 私はヒナタの婚約者になるんだ! もう暗殺業は足を洗う! これからは、ヒナタだけが私のご主人なのだ!」


よかった。

カエデちゃん、もう暗殺なんて物騒なことはやめてくれるみたいだ。

まったく、こんな子供にそんなことをさせていたなんて……どういう人たちなんだろう。

ヒナギクのいい友達になってくれるといいなぁ。


「ほら、ライラさん。カエデちゃんもこう言ってるんです。大丈夫ですよ」


「むむむ……どこまでお人よしなんですか、ヒナタくん……」


「そうだぞ! 私はヒナタを絶対裏切らない! 一度負けたからな。もうシノビとしての私は死んだんだ……!」


「はぁ……まあ、私が止めても無駄なんですよね。わかってます。でも、くれぐれもヒナタくん、油断しないでくださいよ?」


「はい。大丈夫ですよ。僕もなにも考えがなしに言ってるんじゃありませんから……」


もしもカエデちゃんがまた僕を殺そうとしても、僕はまた返り討ちにする自信がある。

それに、そんなこと、ありえないしね。

それは彼女の目を見てればわかる。

ヒナギクとぜんぜん変わらない、普通のかわいい女の子だ。


「それにしてもヒナタくん……あれだけ活性(ブースト)を何回も使ったのに、大丈夫なんですか? 傷口も、もうふさがっているようですし……?」


「ああ、それでしたら大丈夫です。何回も使ううちに、だんだんと活性(ブースト)で疲れなくなってきたんですよ。さすがにやりすぎるとダメですけど。それに、傷口も活性(ブースト)の自然回復でへっちゃらです。上級回復ポーションも塗っておきましたからね」


「そうなんですか……。ますますとんでもないですね、ヒナタくん……。でも、なんともないならよかったです!」


と、まあ……そんなこんなで、カエデちゃんが僕の家族に加わった。

僕に出来ることは、暗殺者なんていう歪んだ生い立ちを持つ彼女に、精一杯優しさをあげることだけだ。

いったい誰が彼女を差し向けたのか……。

それはまた、カエデちゃんが話したくなったときに聞こう。


そして僕は、絶対にそいつを許さない。

こんな小さな子を、暗殺者なんかに仕立て上げたそいつを――!


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― 新着の感想 ―
[一言] カエデを簡単に許すとはお人好し過ぎる自我が無い。
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