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【書籍化決定!】薬師ヒナタは癒したい~ブラック医術ギルドを追放されたポーション師は商業ギルドで才能を開花させる~  作者: みんと
第二章 総合ギルド 編

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第91話 因果応報


「ヒナタくんはいるかな……?」


そう訪ねてきたのは、元気になったガイディーンさんだった。


「ガイディーンさん!」


そういえば、改めてお礼にくるとか言ってたっけ……。


「もうすっかり良くなって……。前より100倍元気だよ。ありがとう」


「よかったです。そういえば、聞きましたよ。ガイディーンさん、医術協会会長になられたんですね。おめでとうございます。僕も嬉しいですよ」


僕が助けたガイディーンさんが、出世までするなんて、自分のことのように嬉しいね。


「ああ。ありがとう。それもこれも、全部ヒナタくんのおかげだよ。君のおかげでうちのバカ息子も少しはまともになった」


「いえいえ……」


「それでだ、お礼に関してなんだがな……」


「別にいいのに……お礼なんて……」


「君を国立医術大学に私の名で推薦しておいた。受けるかどうかは君の自由だが、ぜひ考えてみてほしい……」


「え?」


ガイディーンさん、今なんて……!?


国立医術大学!? 推薦!?


僕は平民なのに!? それに、お金もないし……。


「よかったじゃないですかヒナタくん! ぜひ、医師免許をとりましょうよ!」


横で聞いていたライラさんが飛び跳ねる。


「ですがライラさん、ギルドの仕事もありますし……。それに、スカーレット王女のことも……」


「それなら気にしないでください! ギルドのことは大丈夫です。ヒナタくんの好きな時に、好きなだけ来てくれるだけでいいんですよ?」


「ええ……どういうことですか……それ。それに……僕にはそんな、大学にいくようなお金なんて……」


「それなら心配しなくていい。お金も大丈夫だ。私は医術協会会長だぞ? そのくらい、なんとでもなる」


たしかに、ガイディーンさんの鶴の一声で、なんとでもなるんだろうけど……。


僕に医師免許なんて取れるんだろうか……?


たしかに免許があれば、もっと多くの人を救える。


もともと僕はポーション師だけど、もし僕が貴族に産まれていたら、医者を目指したかもしれないね。


「わかりました。ギルドや家族に迷惑のかからない範囲で……頑張ってみようかな」


「大丈夫ですヒナタくん! ヒナタくんなら余裕ですよ」


「えぇ……だからライラさんのその根拠のない謎の理論はなんなんですか……」


「ははは、まったく、君たちは仲睦まじいな」


ガイディーンさんがそんなことを言うものだから、僕たちは二人して照れる。


「まぁとにかくだ、そう言うことだから、私はこれで」


それだけ言うと、ガイディーンさんは帰っていった。


医術協会会長になったんだし、忙しそうだね。


「ヒナタくん、そんなに心配なら、私もついて行きましょうか?」


「ええ!? ライラさんも大学にですか? そんな……いいですよ……」


ライラさんは冗談で言ってるのか本気で言ってるのか、わからない時があるなぁ……。


「でも心配だなぁ……僕は平民だし、学もない」


「そんな! 自信を持ってくださいヒナタくん。なんといったって、あのガイアックですら卒業できるんですよ? ヒナタくんなら一瞬で帰ってこれますよ」


「あ、たしかに。そうですね。なんだかそう考えると気が楽になりました……」


ガイアックには悪いけど……。


なんだか行ける気がしてきたぞ!


医師免許を取って、もっとヒナギクやライラさんを守れるようになるんだ!





【side:ガイアック】


俺はヒナタに、善行を積むと誓った。


そして宣言通り、ダッカーの首をとった。


だがまだまだ、俺のしてきたことを考えれば、足りないのだろう。


「俺は、善行を積む旅に出ます。一から自分を見つめなおしてみたいんです」


俺は元気になって出世した親父に、宣言する。


「よく言った。お前もヒナタくんのおかげで、ずいぶんマシになったな。応援するよ」


「では、行ってまいります」


俺は荷物をまとめ、家を出る。もうこの街にはしばらく戻らないだろう。


俺は生まれ変わるために、修行の旅に出るのだ。


「そうだ、最後に、あの場所に寄っていこう」


あの場所、というのはもちろん――医術ギルドのことだ。


「よう、キラ。出世おめでとう」


「ガイアック……」


俺の元部下……安心して、このギルドを託せるな。


「なんのようだ?」


「いや、最後に、ここの景色を見たかっただけさ……」


「そうか。まあ邪魔にならないようにな。用が済んだら帰ってくれ」


つれない奴だ。まあ、俺がそれだけのことをしてしまったのも事実だ……。


「おい、ここにまとめてあるポーション、捨てるのか?」


俺はふいに目に付いたポーションの塊を指さす。


「ああ。それはあんたがギルド長だった時代のものの残りだ。もう患者に出すには少々古いのでな……。もし欲しければ餞別にくれてやるよ」


「おお、そうか。ではありがたくいただこう」


旅の途中、けがをしたりすることもあるだろう……。


それに、俺の時代の残りだということは、もともと俺のもののようなものだ。


「では、そろそろ行くぜ。迷惑かけたな、キラ」


「ほんとだよ。さっさと消えてくれ、ガイアック」


まったく、最後まで俺のことを許してはくれないのか……。


だが、それも仕方ない。俺はそういうことを背負って生きていくのだ。


右腕を失い、アイデンティティも失った。父を失いかけて……。


とうとうプライドまで捨て去った……。


俺があのヒナタに、頭を下げるなんてな……。


だからもう思い残すことはなにもない。俺には何もないんだ。


「よし、ここから新たな人生の始まりだ!」


俺は旅に出る。





「ぐあああああああああ!」


旅の途中、俺は怪我を負ってしまう。


なに、軽いけがだ。これくらいならポーションを飲めばすぐに回復するだろう。


うさぎの魔物から受けた、擦り傷だ。街を出てすぐの草原で、攻撃を受けた。


「えーっと、一番古いのから飲まなきゃな……。よし、これか。少々瓶の形が変だが、まあいいだろう」


――ぐびぐび。


俺は一気に飲み干す。


「う……!」


だがなんだコレは!? これが回復ポーション!?


味が変だし……これは、毒!?


俺はもう一度、ポーションの瓶を確認する。


これは……どこかで見覚えがあると思っていたが……。


俺の頭を走馬灯が駆け巡る。


「これは、あのとき俺が用意したポーション!?」


あのとき――すべての始まりの日。


俺がヒナタをギルドから追放した日だ。


■■■■■■■■■■■


「不満そうだな? だがそれだけじゃないぞ?」

「え?」

「昨日お前が作ったポーションが原因で、患者が死んだ。これが証拠のビンだ」

「は?」


「ありえない! これは僕の作ったポーションじゃありません!」

「うるさいそんなのどれも同じだろ」

「いくら僕でも、自分の作ったものを見間違えるわけがないです」


「嘘をつくなよ。ポーション師はお前だけしかいないんだから。お前が作ったに決まってるだろ?」

「さっきあなたたちだって、混ぜるだけなら誰でもできると言ってたじゃないですか!」

「は? 俺たちは暇じゃないんだから、わざわざそんなことするわけないだろ。さっきはお前がいなくなった後の話をしただけだ」


「裁判にかけてもいいところを、特別に追放で許してやるんだ感謝しろよ」

「っく……」


■■■■■■■■■■■


俺はヒナタのポーションを毒入りのポーションにすり替え、その罪を着せたのだった。


その時に、毒入りのポーションを何本か用意した。


それの残り(・・)が……コレだ。


「う、げほっげほっ……!」


俺は必至に、さっきのポーションを吐き出そうとする。


まさか自分が用意した毒を、自分が飲むことになるなんて……!


結局、神は俺を許さないのか……!


せっかく心を入れ替えようと思ったのに……過去の行いで……俺は……!


「うぅ……」


こんなことなら……いや、後悔しても遅いか……。


だんだん意識が遠ざかる。


目が覚めたら地獄なのだろうな……。


まぁいいか……これがみじめな俺に相応しいラストだ……。


俺はそこで意識を失った。





新たなチャンスを手にしたヒナタとは対照的に――。


ガイアックは自分の蒔いた種で、自分が苦しむことになってしまった……!


そんなガイアックの命運はいかに!?


ガイアックはどうなってしまうのだろうか……!?


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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒナタ頑張れ~! 害悪は旅にでる!?…予想が当たったのか、感想を参考にして下さったのかは分かりませんが!…ありがとうございます! ハハハ!最期までオツムの残念な人間!それが害悪だ! […
[気になる点] ガイアックいつまで引っ張るの。早くころして次のストーリー展開に進んでほしいです
[一言] ガイアックが(無駄な)プライドを捨てる前ならざまぁって思えたけどここまで来るとガイアックが死んじゃうと悲しいから是非生き残ってほしい
2021/08/20 17:32 退会済み
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