第127話 中継地点
僕らは海を彷徨って、何度も困難にぶつかった。
けどそうして、1か月が過ぎた頃、ようやく死の大陸と呼ばれる大地に――。
――行く前に、その中継地点となる島へと着いた。
死の大地には、ここからまだ数日かかってしまう。
それに、街の漁師さんたちが船を出してくれるのは、ここまでという約束だ。
ここから先は、普通の人間には危険すぎるらしい。
けど、この中継地点となる島で、案内人に話をつければいいらしい。
案内人は、気難しいことで有名なエルフ族だそうで、彼らの力を借りないと、死の大陸へ行くのは難しいのだとか。
なんとかエルフさんたちの協力をとりつけたいけど、できるだろうか……。
一応、案内人に渡すための手土産を、王様から預かってきている。
これさえ渡せば、案内をしてもらえることになっているそうだけど……。
エルフの島までやってくると、僕らの中央大陸と違って、かなり雪が薄かった。
けど、それでも地図的に考えるとおかしなほど、雪が降っている。
それほど、この世界は凍り付いてしまっているのだ。
氷のせいで困っているのは、エルフたちも一緒だろう。
だからきっと、話をすれば力を貸してくれるはず……。
中継地点の港に降りると、さっそく長身のエルフの男性たちに囲まれて、弓を向けられた。
「何者だ……!」
「こ、こんにちは……。あやしいものではありません。事前に手紙でお知らせした、勇者一行です」
勇者のユーリシアさんが、毅然とした態度でそう答える。
ユーリシアさん、さすがは勇者だ。こういうときも物おじせずに、度胸があるなぁ……。
弓を向けられていて、僕なんかさっきから委縮しちゃってる。
「そっちのお前、お前はなんだ?」
「え……? 僕ですか?」
勇者さんに続き、エルフたちの視点が僕へと向く。
「えーっと、僕はポーション師ですけど」
「ポーション師ぃ……? なんだそれは、きいたことがないぞ! 勇者一行なのにポーション師だと……? ふざけるな、あやしいやつめ!」
「ぼ、僕はただの薬師ですよぉ……! あやしくありません……!」
「ポーションなどなんの役に立つというのだ」
そう言って、僕はあやうく弓で殺されかけそうになる。
勇者さんがあわてて説明をする。
「ヒナタくんは優秀なポーション師なんだぞ! ぼくらのことを何度も助けてくれたんだ……!」
「ふん、怪しいな……。だがまあ、勇者どのがそういうなら、仕方がない。通そう」
「どうも……」
なんとか勇者さんが強く言ってくれたおかげで、事なきを得たね。
僕らは島へ入ることを許された。
これから、エルフの族長さんのもとへ挨拶にいくことになっている。
でも、おかしな話だ。
ポーション師って、エルフたちからも蔑まれているのかな……?
死の大陸には、ポーション師っていう職業があるのかどうかも謎だ。
そもそも、エルフたちはポーションを使わないのかな?
僕らはエルフのお兄さんの案内で、族長の家の前までやってきた。
しかし……。
「残念だが、今日は族長に会うことはできない」
「えええええ……!? なんでですか……!?」
「それが……申しわけないのだが、族長は今病気になってしまわれてな……。しばらく滞在してもらっても構わないから、もう数日待ってくれないか?」
「そんなぁ…………せっかく来たのに……」
というリシェルさん。
でもまって、病気なら、僕になんとかできるかも……!
「だったら、僕が治します……!」
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久しぶりの更新になってしまいすみません
ゆっくりですが完結へと向かって動いていこうと思います
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