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【書籍化決定!】薬師ヒナタは癒したい~ブラック医術ギルドを追放されたポーション師は商業ギルドで才能を開花させる~  作者: みんと
第一章 医術ギルドと商業ギルド 編

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第12話 クズ素材の山【side:ザコッグ】


「はあ……困ったなぁ……」


 俺はガイアックから押し付けられた、大量のクズ素材の山を前に、うなだれる。


 薬草(F)6000個を、60000Gかぁ……。


 自分でも、呆れるほどぼったくられたものだな。


 まさかランク(F)を売りつけられるとは……。


「くそ! あのガイアックのヤロウ! 許せねぇっスよ!」


 他のギルドメンバーたちも、ガイアックへの怒りをあらわにする。


 俺の不注意のせいで、こうなったというのに……。


 それでも俺のことなんか恨み言一つ言いもせずに、擁護(ようご)してくれた。


 なんていいヤツらなんだッ……!


 そして、だからこそ……!


 俺はこのギルドを守らなくてはならないッ!


 ギルド長として!


「なんとかならないかな……?」


「俺、近隣の商業ギルドにも、相談してみるっス!」


「ありがとう! 頼むよ」


 俺たちは手分けして、なんとかこのクズ素材の山を処分できないか、考えた。


 それはもう……(わら)にも(すが)る思いで!





「ザコッグさん! 一つ、協力してくれるかもしれないギルドが!」


「なに!? 本当か?」


 まさか……!?


 クズ素材の山をどうにかしてくれるのか?


 いや、そんなうまい話はないだろうが……。


 それでも、一縷(いちる)の望みにかけたい!


「ライラさんという方が、最近立ち上げた商業ギルドで、世界樹(ユグドラシル)というギルドなんスけど……知ってますか?」


「いや、知らないな……。だがそんなことはどうでもいい! 今は誰だろうと構わない! 無名のギルドだろうと、助けてくれるのなら、神にも等しい存在だ」


「ですね! さっそく、会談をとりつけます」


「そうしてくれ」





「こんにちは、世界樹(ユグドラシル)のポーション師、ヒナタ・ラリアークです」


 やってきたのは、ギルド長ではなく、ポーション師の青年だ。


 ずいぶんと若い印象を受ける。


 だが、見た目もキレイで、物腰も柔らか。


 絵にかいたような好青年といった感じだ。


東区(ひがしく)医術師ギルドのギルド長、ザコッグです。この度は、ほんとうに、なんといったらいいか」


「いえ、困ったときは、お互い様ですから」


 若いのに、礼儀正しく、しっかりとした人だ。


 一人でやってきたということは、ギルド長からの信頼も厚いのだろう。


「実は……薬草(F)が6000個ほど、余ってしまって……。うちのギルドは倒産の危機なんです」


「そうですか……それは大変ですねぇ」


「正直、これを解決してもらえるなら……なにをしたっていいくらいで……。もうほとほと困り果てているのですよ」


「でしたら……」


 と、ヒナタと名乗ったその若いポーション師は、口を開く。


 俺にはその後、彼が放った言葉が、どうしても信じられなかった。


 だって……そんなこと、ありえない(・・・・・)と思ったから……。



「でしたら…………うちで、買い取りますよ」



「は……?」


 ??????????


 俺には本当に意味が分からなかった。


 なんで?


 どういうことだ?


「ですから、その薬草(F)が6000個をうちで買い取ります」


「え?」


「そうですねぇ……30000Gでいかがです?」


「は、はい……」


「では、そういうことで。僕はこれで……」


「ちょ、ちょちょちょちょっと待って!」


「はい?」


「いいいいいいいんですか!?」


「なにがですか?」


「だって、薬草(F)ですよ? 使いものにならないんですよ!?」


「ええ、まあ……」


「そんな……うそだろ……。あんたは神様か!?」


「あはは……まあ、うちでなんとか活用しますよ」


「そんなことができるのか!? 世界樹(ユグドラシル)……なんてすごいギルドなんだ!?」


 まさかそんなすごいギルドが、まだ無名のままなんてな。


 俺は、歴史の一片をかいまみているのかもしれない。


「詳しくは企業秘密ですけど、僕のスキルでね……」


「あんたは神様か!?」


 たたずまいからして、ただのポーション師じゃないとは思っていたが……。


 まさかこんな若者が、そんなすごいスキルを持っているなんて!


「ほ、本当にいいんですか!?」


「だから、そう言ってるじゃないですか」


「あああ……! あんたは本当に命の恩人だ!」


「大げさですよ」


「困ったことがあったら、この俺、ザコッグを頼ってくれ!」


「ええ、そうします」


「きっとだぞ!」


 俺としては名残惜(なごりお)しかったが、彼はいそがしそうに帰っていった。


 きっとまだまだやることがあるのだろうな!


 彼ほどのポーション師だ!


 ポーション師ヒナタ……。


 俺はその名を、一生胸に刻むことにした。


窮地(きゅうち)を救ってもらっただけでなく、金までもらえるなんて!


 彼と彼のギルドには、頭が上がらないな……。





 こうしてヒナタはまた一人の人間を救った。


 ヒナタ自身はそのことをそれほど理解していないが、これはザコッグにとっては、忘れられない出来事となる。


 こうした人の輪が、まわりまわって、自分自身を救うことになるのだ……。


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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、ザコッグは悪い奴じゃなさそうだね。 騙されるものが悪いとは言うが、それはそれとして、騙したやつを懲らしめなくっちゃ!
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