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【書籍化決定!】薬師ヒナタは癒したい~ブラック医術ギルドを追放されたポーション師は商業ギルドで才能を開花させる~  作者: みんと
第三章 王国・首都 編

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第101話 入学初日


「じゃあみんな、行ってくるよ」


入学して初回の授業日、僕は朝早めに起きた。

そしてみんなに挨拶をする。


「行ってらっしゃいませ、ヒナタさま」


リノンが玄関まで僕を見送ってくれる。

ヒナギクたちはまだ寝ているから、起こしてはいけない。

ヒナギクたちも今日から学校みたいだけど、心配だな……。

そんな僕の表情を察してか、


「大丈夫ですよヒナタさま。ヒナギクさまたちは私がちゃんと学校まで送り届けますから」


「ありがとうリノン」


これで安心して大学にいけるね!





「え、私がポーション科学の授業を担当するグリオス・フランドルです」


ポーションの授業だね。

授業は先生の挨拶から始まった。

正直、ガイアックのことを考えると、医術大学で本当にポーションの授業なんてやっているのかな? と思っていたので、案外ちゃんとしていてびっくりした。

これは僕にとっては簡単すぎる授業かな……。


「えーでは……まずはポーションの解説をしていきます……」


その後、先生はなんだかよくわからない呪文をつぶやきながら、黒板に文字を書き始めた。

正直、なんのことだかさっぱりだ。

みんなは本当にこんなの理解しているのかな?

ガイアックがこれを理解できたとは到底思えない。

初日から、ちょっとレベルが高すぎるんじゃないかな?


まあガイアックはもっと質の低い田舎の大学に通っていたらしいけど……。

それであんなにポーションを軽視していたのだとするとマヌケすぎる……。

一応、ここの大学はポーションもじっくり教えているみたいだけど……。

さすがは王都の大学。

でもちょっと難しすぎだ。


「あのー先生、さっぱりわからないのですが……」


突然、一人の生徒が手をあげた。

よかった、僕だけじゃないんだね。


「そうですか……でもこれ以上わかりやすくすることはできませんよ? あとで残って教えてあげますから、黙って聞いてなさい」


えぇ……!?

ちょっとこの先生、適当すぎるんじゃないかな?

これがわからなければダメってことなのか?

厳しいな……。


「では、今からテストをします。さっきの説明を理解できていれば、簡単なことですよ」


えぇ……!?

どうしよう、さっぱり理解できてないぞ……!?

いったいどんなテストなんだろう……。

ポーションのことを科学的に説明しろなんて言われても、僕にはなんのことだか……。


「テストの内容はシンプルです。中級回復ポーションをつくる、ただそれだけです。下級回復ポーションならつくったことのある者もいるかと思いますが、これは初めてでしょう?」


えぇ!?

テストって、そんな簡単なことなの!?

拍子抜けだなぁ……。

中級回復ポーションだったら、さっきの理論とか全然しらなくても余裕でつくれちゃうんだけど……。

先生は難しく教え過ぎなんじゃないかな……?

余計にわからないと思うんだけど……。


そして僕の予想は当たっていた。


「アレぇ……これ、どうやってやればいいんだ!?」


「くそ……火加減が難しい……」


「だめだ! 下級ポーションと比べて難しすぎる!」


ほとんどの生徒が苦戦を強いられていた。

これじゃあみんな、ポーションの授業が嫌いになるわけだ……。

成功している生徒は、一割にも満たなかった。


「なぁ、そもそも俺たちは医師を目指してるんだろう? こんなことする必要あるのかよ?」


「そうだよな、こんなの下っ端に任せればいいだけだよな」


「あの先生、なんかおかしいんじゃね?」


生徒たちはみんな、不満たっぷりに愚痴を言い始めた。

先生に聞かれてないといいんだけど……。

なるほど、毎年一年生は、こうやってポーションの授業から遠ざかっていくのか……。


第2第3のガイアックを生み出すわけにはいかない。

ここは僕がしっかりとポーションの重要性を見せないと!


「よし、ここをこうやって……っと……」


さすがに授業のテストで、スキルを使って混ぜるわけにはいかない。

僕もあえて手動で、調合器具を使って、素材を火にかけるよ。


「おい、なんだアレ……!」


「すごい、火加減や手の動きが完ぺきだ!」


「あれは熟練の動き! ヤバすぎる……!」


みんな僕に注目しているね……。

僕の現場で覚えた技術でも、通用するみたいだ!

だがそこに先生が寄ってきて、


「君、そこ! なにをやっているのかね……」


「なにって、ポーションをつくっているだけですが……?」


「そんなデタラメな混ぜ方があるか! ちゃんと私が教えた手順通りにやりなさい!」


そう言われても……さっきの説明じゃチンプンカンプンだ。

それに、僕は長年の経験でこれが一番早いし効率的な混ぜ方だって知っている。

それはスキルと比べてみてわかったことなんだけどね……。

だからまあ、先生が知らないのも無理はない。


「いや、これが一番いいやり方なんですよ? 見ていてください」


「なにを馬鹿な……」


――ジュ!


僕はある特定のタイミングで、火加減を強くする。

これはスキルを鑑定で詳しく調べてもわかることなんだけど、スキルでの調合時にも内部で同じことが起こっているんだ。


「な!? こんな方法は初めて見た! いや、だがまさか……そんな!?」


僕のやり方で作ったポーションを見て、先生は驚いて口がふさがらない。


「ね? できたでしょう?」


「君、これはとんでもない発見だぞ!? 早く学会で発表したまえ! ポーションの根幹を、根本から揺るがす理論だ!」


「えぇ!? 大げさですね……」


「いや! 君はもうポーションの授業は免除でいい。これからは代わりに、私に君の技術を学ばせてくれ! いったい君は何者なんだ……!?」


先生の目はもはや、ものを教える教師の目ではなく、ただ未知のものを知りたがる探求者の目になっていた。

どうやら先生の研究熱心な心に、火をつけてしまったみたいだね。


「そういうことでしたら……わかりました。僕もポーションの研究に協力しますよ。僕のスキルをもっと客観的に分析すれば、さらになにかわかるかもしれません。そうすれば、ポーションをもっと簡単に調合できるようになって、みんなのためになるかも……」


「君は素晴らしい生徒だ!」


なんだかよくわからないうちに、大変なことになったぞ……。

まさか先生の説明が未熟すぎて、僕にはわからないだけだったなんて……。

僕はどうやら既存のポーション研究の数世紀先を地で行っていたみたいなんだよね……。

そりゃあ、かみ合わないわけだ……。


これも、僕の裏スキルの成長が関係していたりするのかな……?


「おいおい、なんだかとんでもない生徒があらわれたぞ!?」


「ああ、俺たち大丈夫かな、あんな天才と同学年だなんて……」


「学年主席はあきらめるしかないな……」


ひどく注目を集めてしまったようだね。

でもしかたない。

僕はどんな奇異な目でみられようと、ポーションの研究に貢献したいからね。


そんなこんなで、僕はポーションの授業を免除となった。

さらに、先生に週2、3回、ポーションの授業をすることになってしまった。

案外、思っていたよりも医術大学も難しくないのかもしれない。


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[気になる点] >ここでそう言われても……さっきの説明じゃチンプンカンプンだ。 それに、僕は長年の経験でこれが一番早いし効率的な混ぜ方だって知っている。 それはスキルと比べてみてわかったことなんだけど…
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