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2-9 光秀と彦丸

「はぁ」


光秀と彦丸が部屋から出て行ってから、とりあえずため息をつく。


数日前まで俺は、忍者村で忍者の演舞をしながら平和に過ごしてきたよな?

何でこうなってしまったのか。

全てはあの神ジジイが悪い。

こうなったら魔物を全て倒して、絶対に元の世界に返してもらう!

可能かどうか知らんけど。


ともかく、肩と足のケガが治るまで、あと2、3日休んでいいとは言われたが。

と、思いながら窓の外を覗く。


すると、光秀が弓の訓練?をしていた。

俺から見て左に光秀、右側に的。

距離は200メートルはあるか。

長身の光秀が遠すぎて、小さく見える。

ただ、後ろに束ねた髪が風に揺れているのがわかった。


こんなに離れていたら当たらんだろ。

しかも、光秀は的より少し左側を向いているように見える。

俺は懐疑的な気持ちで見ていた。


ビュンッ


あれ?矢が数本一気に飛んだような?


ドッドッドンッ


えっ?

三本の矢が的の中心に刺さっている。


うそ!

すげえ。


・・・。

まさか、少し左を向いていたのは風を読んでいたから?

そういえば、俺に襲いかかっていたカッパも顔を矢で貫かれてたっけ。

あの時も強風が吹いていた。


風の強さを計算して、的の中心に当てるだと?

信じられない!


だが、更に信じられない光景を目の当たりにする。


光秀が、『ピー』と口笛を吹くとどこからともなく鷹が飛んで来た。

その鷹は光秀の肩に乗った。

そして彦丸がその鷹の足に何かを付けている。

光秀が反対の腕を上げ合図をしたのか、足に何かをぶら下げた鷹が空高く飛んだ。


光秀が鷹を見て矢を構える。


ビュンッ


光秀の矢が飛んだ。

グサッ


・・・鷹に当たった?

酷い事をするんだな、と思って俺は鷹を見る。

あれ?落ちずに飛んでる?


『ピー』


また口笛と共に鷹が降りてきて近くの鷹用?に作られた止まり木に着地した。

よく見ると、鷹の足につけられた物に矢が刺さっている。


まじか。

動く物にも命中するの?

この距離で?

この風で?

どうゆう事?


次は彦丸。

腰にかけた刀をスルリを鞘から引き抜く。

青く光る刄。

キラリと光るそれは、かなり手入れをされているのがわかる。

そして、一本の木を立たせて自分は十数歩離れる彦丸。

じっと木を見て精神統一をしているのか、動かない。

すると突然、


「はーっ!」


ブンッ!


刀をどういう方向か分からないがすごいスピードで振った。


・・・んっ?


ドンッ


木が横に切られて倒れた。


えっ?

今、木に触って無いよね?

木に触らずとも切れるの?

何で?


俺の頭が混乱している。


この二人がすごいのか。

この世界の人間は皆こうなのか。


後者だったらヤバイ。

俺はしばし呆然とした後、落ち着こうと決める。

うん。寝よう。

寝たら落ち着くだろ。

いや。落ち着かせてくれ。



それから、三日が過ぎた。

時折女の人が部屋に入ってきては、傷口に何か分からない薬を塗ってくれた。

そこで分かった事。


光秀と彦丸は相当人気がある。

彦丸はあのイケメン故に女が寄ってくるが、全く興味がないらしく全て無視しているとか。

光秀は知的で物腰も優しく誰に対しても平等に扱う事に加え、あの美貌。

神か女神かと言われ、全ての人間から慕われている。

男からも女からも町の人間からも。信長にも。


「その光秀様が、どこの馬の骨か分からない不細工な子供を抱えて帰ってきた、って、お城の中で噂になったのよ。うふふ」


ちょっと待て。

どこの馬の骨か、は、いいとして、今、サラッとすげえ失礼な事言ったよな?


まあ、でもこうして見ると不細工ではないわね、もぐらみたいって。

・・また微妙なところだな。


そして光秀は弓矢の達人だと教えてくれた。

知ってる。

その実力は既に見たし。

この国で光秀の右に出る者はいないらしい。


そして彦丸。

彦丸は刀の達人。

しかも切り方が斬新。

触れずに斬る。

余りに早い太刀筋のせいで、物に触れなくとも空気ごと斬ってしまうらしい。

ああ、あれか。

丸太を真っ二つにしたやつ。


光秀がたまたま通りがかった村で彦丸が木を斬り倒しているのを見つけ、その腕を光秀が気に入ったらしく、名もない彦丸を最側近にしたらしい。



「でも、一翔さん。あまり光秀様に近付かない方がいいですよ?」


何で?


「何でって、彦丸様は光秀様の絶対的ファンですもの!光秀様に可愛がられたら、嫉妬で斬られるかもしれないですよ?

皆光秀様に近寄りたくても、彦丸様が怖いから近寄れないんです」



何だって?

斬られるだと?

ああ、あの睨みはそうだったのかと気付く。



それにしても、いつも塗ってくれる薬に何が入っているのか、驚くほど良く効く。

あれほど深かった肩の傷もすっかり治った。


それと同時に光秀からこれからの俺の役割を聞く事になった。


まず、天下統一されたとはいえ、未だ反対勢力も多少はいるらしく、信長の最側近である光秀は時折襲撃されるとの事。


そこで俺の役割は二つ。

城の中にも敵忍者が潜んでいる事があるため、城の中でも外でも光秀を護衛し、敵を倒す事。


二つ目。魔物退治。

信長様から指令があれば直ぐに行く。

その際は、光秀と彦丸、その他兵と共に俺も同行する事。


・・・城の中でも外でも働け、と。

じゃあ、何か?

俺に休みは無いのか?

これをブラックって言うの知ってる?


クソ!あの神ジジイ。こんな世界に送りやがって。

今度会ったら覚えとけ。


夜。

俺は光秀の眠る部屋の前にいる。

彦丸が、自分が傍にいる!とうるさかったが、城全体の警護をまだ、俺が出来ないとの理由で俺が傍にいる事になった。


・・・。

これ、ずっと起きて見てるの?

俺、いつ寝るの?

う~ん。何か良い手はないかな、と考える。

そうか!おれは一つ思い出す。


光秀を結界ドームに入れれば光秀は守れるんじゃね?


俺は光秀の部屋にそっと入った。


!?


そこには月明かりに照らされて、綺麗に整った顔をした光秀が眠っていた。

眠っていても、美しさは衰えず。

俺はくぎ付け。

・・・・。

ゴクッ

思わずつばを飲み込む。


すると、突然光秀が起き上がり素早い動きで俺の背後に回った。

おわっ?

避ける事も出来ず俺は光秀に首を締め上げられる。


「苦しい!ご免なさい!」


俺は直ぐに降参。


「何だ。一翔か」


光秀の力がふと弱まる。


「紛らわしい事をするな」


光秀がギロリと睨む。

三拍眼で睨まれるのって、めっちゃ怖いけれど、色気も半端ない。

思わずうっとりする俺の頭に

ゴンッ

とゲンコツを食らわせる光秀。


睡眠を妨げられて怒っているのだろう。

こんなに強いなら、俺の護衛なんて要らないんじゃね?

と、思いながら俺は結界ドームの提案をした。


「おお!それはいい」


光秀もご満悦。

あっそうか。

俺も結界ドームの中にいれば、襲撃されないじゃん。

とっさにそう思って、光秀と一緒に結界ドームの中に入った。


「はいはい。光秀様、寝ましょ?」


俺は光秀の隣りで寝ようとした。

ところが、

ゲシッ


「お前は出ていけ」


光秀に蹴られた。


「いや、だって俺も眠いから!寝させてくださいよ。

じゃないと、明日守れませんよ?」


・・・。

無言の光秀。


「じゃあ、端で寝とけ」


と、許された。

俺は布団をもう一組持ってきてドーム内の端に敷く。

ラッキー!言ってみるもんだな。

俺は安心して深い眠りについた。


ところが、夜中になって起こされた。


「一翔。起きろ」


見ると、光秀が銃を片手に俺の横にいる。


「さっき、何か気配がした」



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