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2-7 丹波の国

ザッザッ。

光秀が近付いてくる。


「遅くなった。一翔。よく頑張ったな」


「わぁー!痛いし!怖いし!遅いし!」


俺は光秀に抱きつきながらわぁわぁと大声で泣いた。

そんな俺達を、消えた結界ドームから出てきた村の男達が囲んで見ていた。


「こら!光秀様に触るな」


彦丸の声が聞こえたが、俺は、怖かったのと、助かって安心したのと、誉められて嬉しいのとで、涙が止まらない。


ところが、


「待て!!まだカッパがいる!」


村人が叫ぶ。


「何!」


光秀が視線を向ける。


「違うんだ!あのカッパたちは、いいやつなんだ。俺を助けてくれた」


俺は説明した。


「カッパが、人間を助けるだと?」


見ると結界の向こう側で、カッパは小さく丸くなって座っている。


足をケガしている俺は、光秀に支えられながらカッパの方に近づく。


「この壁は何だ?」


光秀が、結界に触る。


「結界」


「結界?一翔。お前何者なんだ?」


そう言いながら、結界を触る。


「ほう。ところで、早くこの結界を消せ」


あれ?どうやって結界を消すんだ?

消し方が分からなく、仕方なく俺は手の平サイズの結界を作る事にした。

結界は一つしか作れないのだから、小さいのを作ればこの大きな結界は消える。


小さな結界を作ると、カッパの前にあった大きな結界がフッと消えた。

俺は小さな結界を服の中にしまう。

そうか。ここに入れておけば体を守れるな、と気付く。




カッパは、


「キュー」


と鳴いて俺の顔を見る。

あれ。目の色が白いぞ、と気付く。

こうして見ると可愛いじゃないか。と思ってしまう。

だがカッパの後ろで、さっきから全く動かず一点だけをボーと見ている女と子供達に気付く。


「おい。カッパ。何をした」


カッパに言葉が通じるのか分からなかったが、子供たちを指差してカッパに話しかけた。


するとカッパは立ち上がり、子供達の前に立ち、じっと女と子供の目を見た。

すると、フッと何かが解けたように急に全員がワァー!と叫びながら怯えて走ってきた。


何だ?


子供たちは自分の母親や父親にしがみついている。

何があったのか、女たちが話してくれた。


家の中で隠れていたが、急に大きなカッパが入ってきたという。

襲いかかってくるカッパに、家にある武器で戦おうとしていたところ、この小さなカッパたちが現れ、大きなカッパと戦い助けてくれたらしい。


その時、小さなカッパの赤く光る目を見た、と。

その後の事は何も覚えていない。

何故、外を歩いていたのか。

どこに行こうとしていたのかも。


とにかく、この小さなカッパたちが居なかったら、大きなカッパに殺されていた、という事は分かった。


光秀は、


「そうか。お前たちは守ってくれたのか」


そう言って、カッパに手を出した。

カッパは、じーっと光秀の手を見て自分の手を合わせた。


「そうだ。握手だ。ありがとう」


すると、カッパは光秀の手を握ってどこかへ行こうとする。


「おい。どこへ行く?」


光秀は左手を引っ張られた。


「彦丸!一翔を頼む」


「はっ!」


彦丸が走ってきて俺を担ぐ。


「チッ」


彦丸、今舌打ちしなかったか?

と思いながら彦丸の顔を見ると、ものすごい顔で俺を睨んでいた。

俺、彦丸になんかした?


カッパに連れられる光秀の後ろを、援軍と村人全員で後を追う。

着いた所は、村の上流を流れる比較的に小さな川。

だが、悪臭がする。


「誰か、火を持って照らせ」


光秀の声で、村人が持っていたたいまつで川を照らす。

そこには、村から出る汚水が混ざった汚れた川があった。

川の少し上は人工的に川が掘られ、綺麗な水がどこか違う方へと流れている。


「あの作られた川はどこへ向かう?」


光秀が村人に訊く。


「はい。あれは、私たちが田んぼや生活で使う水として村の方へと繋がっています」


「そして、生活するのに出た汚水をこっちの小さな川に捨てているのだな?」


「はい」


その汚い川の周りは、人間が汚物など運ぶのに通りやすいためか、不自然に木も斬り倒されていた。

光秀はしばらく黙って見ていたが、何か決心したのか大声で言う。


「明日から、この川に汚物を捨てる事を禁止する。その代わりに、汚物を捨てる場所を別途造る。

彦丸。お前は明日までここに残り汚物を捨てる場所を定めよ。

村人と連れて来た援軍と共に、早急に作り上げるよう指示を出しておけ」


そして、光秀の手を握っている小柄なカッパを見る。


「お前たちの大切な場所を荒らしてすまなかった。

お前たちは、私たちに怒っていたのだな」


光秀はカッパと共生する道を選んだ。

カッパを襲わないように、川の上流をカッパの住みかとして、人間が立ち入らないように村人に言い渡す。


ここは、魔物と人間が共生する世界だ。

人間は自分たちに便利なように木を切り倒し、川を汚す。


そういえば、俺がいた前の世界も人間が便利を求めた末に自然災害が問題になっていたっけ。

ここも同じようなものだ。

ひょっとしたら、邪悪なカッパは人間が作り出したのかもしれない。

 


「一翔、私と共に城へ行くぞ」


誰かに支えられていないと立てない俺は、光秀と共に馬に乗せられ城に運ばれた。


読んで頂きありがとうございます!

丹波の国編終了しました~!


これから次つぎと魔物と戦いが始まります。

そして光秀様の色気話も徐々に出てきます。


頑張ります!!


次、読んでやってもいいよ


と優しいお心の方がいましたら、評価頂けると

とっても嬉しいです!


宜しくお願いします。ペコリ



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