2-6 丹波の国
叫ぶ俺の声も虚しく、カッパは走っていく。
そして、俺を狙っている八匹のカッパが木に登ってきた。
手の平が滑り止めのようになっているのか、そのまま幹を登ってくる。
俺は、木から飛び降りざまに炎を放つ。
バシュ!
バシュ!
バシュ!
ゴウ!
木に登っていたカッパは避ける事が出来ず、三匹が炎に包まれる。
あと、5匹。
と思った瞬間、後ろから左肩を噛まれた。
「ぐぁ!」
俺は手のひらから炎を背中にいるカッパに向ける。
「ギャア」
顔に炎が当たり、叫び声を上げながらカッパが離れた。
血が滴る。
相当深く噛まれた事がわかる。
痛すぎる。左腕が上がらない。
でも、子供達を助けに行かなきゃ。
俺はさっきのカッパが入って行った家に向かって走った。
間に合ってくれ!
家が見えた!と思うと同時に見たもの。
それは小柄なカッパを先頭に子供や女達、30人程が一列に並んでこっちに向かって歩いている。
周りをガードでもしているかのように、数匹カッパが囲んでいる。
が、カッパはケガをしているのか?
カッパの様子がおかしい。
子供や女達は全員ボーとしながら、静かに歩いている。
!?
その時、先頭にいたカッパが怯えた顔をしてこっちを見た。
俺に怯えてる?
違う!
今、正に俺の上にいる、俺を襲おうとジャンプしてきたカッパだ!
俺は殺気を感じて横飛びに転がりながら、炎を手当たり次第に投げる。
バシュ!バシュ!バシュ!
どれも当たらない。
カッパが俺の上に馬乗りになった。
さっき噛みつかれた左腕が動かない。
殺られる!
と思った時、信じられない事が起こった。
子供達を連れていたカッパ達が、俺を襲っているカッパに噛みついた。
ギャア!
4、5匹が一斉に飛びかかって噛みついた為に、俺を襲っていたカッパは悲鳴を上げて俺から離れる。
助けてくれたのか?
そうしている間に残りの三匹が襲いかかってきた。
俺は一瞬で起き上がり炎を放つ。
ギャア!
一匹仕留める。
小さなカッパに噛まれたやつが、反撃して加わる。
あと、三匹。
ジリジリと俺を囲うカッパ。
さっき俺を助けてくれたカッパたちも三匹のカッパに立ち向かおうとしている。
どういう事だ?
こいつら、仲間じゃないのか?
体格差がある。
俺を襲おうとしているカッパは180㎝はあるかという程に大きく見えるが、俺を助けたカッパは130㎝ほどか。
小学生くらいの大きさだ。
間違いなくこの小さなカッパ達は俺を味方しているようだ。
中には顔から血を流し、引っ掛かれたような爪あとが見えるカッパも数匹いる。
その時だ。
大きなカッパが一匹俺に飛びかかり、もう二匹は小さなカッパに飛びかかった。
俺はとっさにジャンプをして大きなカッパから逃げながら、小さなカッパの前に結界を張った。
結界の向こう側には小さなカッパと、女と子供たち。
襲おうとしていた二匹のカッパは、激しく結界にぶつかり跳ね返された。
そして、そのまま俺は三匹のカッパに狙われる。
あまり考えずに動いたが、俺、今度こそヤバイ。
一匹が俺の足に噛みついた。
うぐっ!
鋭い牙が俺の足を刺した。
痛い。牙が食い込む。
すごい力だ。動けない。
そう思った時、カッパが俺の足から顔を上げ鋭い爪を立てて、俺の心臓を目指して手を降り下ろした。
その時だ。
ビュンッ
火の矢が俺に馬乗りになっているカッパの顔を貫く。
ギャア!
と、叫び、俺の足を離し燃え上がる。
!?
矢が飛んできた方向を見ると、100メートル程向こうに援軍らしき人間たちが。
そして、援軍の先頭に光秀が次の矢を構えて立っていた。
あんな距離から射ったのか?
ビュウッ
雨が降るのか、風が強くなった。
残り二匹のカッパはギェー!と声を張り上げ光秀に向かって走っていく。
させるか!
俺はカッパの背中に炎を投げる。
が、突如吹いた向かい風の強風で炎が跳ね返された。
風が渦を巻くように吹いている。
まずい!
二匹がもう光秀に向かって飛びかかった。
危ない!!
「光秀様!」
彦丸の声と同時に矢が放たれる。
ビュン!ビュン!
光秀の炎の矢が二匹の額に刺さった。
ボウッ
ギャア!と叫び声を上げながら、二匹のカッパはのたうちまわり炎に包まれた。
・・・・・・。
二矢同時に放ったのか?
すげえ。
俺は呆然とした。
そして、ポツポツと雨が降ってきた。