2-3 出会い2
明智光秀ってあの戦国武将の?
俺は、馬に乗る二人に置いて行かれないように走りながらついていく。
しかし。光秀ってこんなに美人だった?
と思ったところで、そうか。ここは、あのジジイが創った世界だった。
単に昔にタイムトリップしたのとは違うと気付く。
でも、信長もいるのかな?と疑問が。
「あの。織田信長って知ってます?」
訊いた瞬間、光秀からゴンッと頭を殴られる。
「知ってるに決まっているだろう!呼び捨てにするな!」
睨む光秀のお美しい事。
「見とれるな!」
ゴンッ!
今度は彦丸から殴られる。
痛い!
いいじゃねーか。見るくらい!
彦丸。お前、力すごいんだよ?
あぁ。さっきの顎クイ、またやってくんねーかな。
新たな発見だ。
俺は男でも女でも関係ないみたいだ。
そして、走りながら色々と知った。
ここは、丹波の国。
前の世界でいう兵庫県だ。
確か歴史では、明智光秀が攻めいって平定した土地だ。
この世界の事が少し分かった。
全国各地に魔物が住んでいるという。
元々は魔物と人間は共生していたらしいが、だんだんと魔物が凶暴化したらしい。
ここ、備前には凶暴なカッパの魔物が住んでいる。
壊滅した村もあるとか。
そして今、最近カッパに襲撃されているらしい村に向かって俺達は走っている。
まあ、走っているのは俺と馬だが。
「着きました」
彦丸が光秀に伝える。
はぁはぁ。
俺は息も切れぎれに周りを見る。
そこは、豊かな田んぼが連なる村だった。
奥から老人が出てきた。
「光秀様」
そう言って、膝まつく。
「遅くなった。そなたは無事か」
光秀が老人に話かける。
「私は無事ですが、昨日も8人が殺されました」
老人は震えている。
すると、光秀は俺の顔を見た。
「一翔。さっきのカッパは、恐らく子供だ。
親のカッパはもっと大きく凶暴だ。
何匹いるかも分からない。
今夜は雨が降るから、必ずカッパは現れる。
戦える者をこの村に200程手配しているが、ここへの到着はもう少し後だ。
私と彦丸は近隣の村も見に行かねばならん。
万が一を考えてお前はここに残り、援軍が来るまで一人で守れ。」
えー!俺一人でなんて無理でしょ!
相手はあの気持ち悪いカッパでしょ?
しかも何匹いるかわからんって。
突然の命令に俺が拒否ろうとすると、また光秀が俺に近寄った。
「一翔。しっかり守ったら褒美をやろう」
そう言って、俺の頬をすっと触る。
冷たそうな、でも強く光る三白眼の目。
少し首を傾け、斜め上から俺の顔をじっと見る。
少し開けた口と少し細くした目からはただならぬものが放たれている。
あかん。
ひょっとしてあなたは彫刻ですか?
何この色気!!
「やります」
即効で答えた後、彦丸が一言
「進歩のないやつ」
はっ!?
くそっ!またハメられた!
俺はまんまと光秀の色気にやられて、一人で半端なく怖いこの村を守る事になってしまった。
光秀は老人に何やら話しをして、馬に乗る。
「じゃあな。一翔」
光秀が俺の頭をポンポンとしながら、彦丸と共に行ってしまった。
残された俺は一気に不安になる。
援軍、早く来てくれ。
そして俺は、今から始まるカッパとの死闘の果てに、光秀に召し抱えられる事になる。