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2-2 出会い1

うぉー!苦しい!早速死んでしまう!

しまった。

潜水の術にすればよかったと早くも後悔。

俺は必死にもがいた。


すると、誰かに背中を引っ張り上げられ、水の中から助け出された。


「お前、何してるんだ?」


ブファ!助かった。

俺は助けてくれた恩人の顔を見た。

キリリとした二重瞼の色黒イケメン。

腕の筋肉が甲冑の隙間から垣間見える。

背も高く180㎝はある。

年頃は23、4と言ったところか。


甲冑を着ている?

ん?この姿。

もしかして。


やったー!!

忍者全盛期の世界じゃないか!


「お前、忍者か?なんで田んぼで溺れてるんだ?ダサいな」


ハッと、周りを見るとそこは水の張った田んぼだった。


「お前、田んぼを荒らすな」


そう言って、少し離れた所に馬に乗った人間もいた。

赤い甲冑が光っている。

眩しい。逆光か。

顔が見えない。


と、突然、目の前にいたイケメンが俺の視界から消えた。


!?

田んぼから突如現れた何かに顔と肩を掴まれて、田んぼの中に引きずり込まれている。

引きずりこまれているイケメンの顔と肩に手をかけているやつ。

人間ではない事はすぐにわかる。

緑色の細い腕から伸びた水かき全開の鋭い爪のある異様に長い指の手。

落武者のような頭、赤くギラついた目の中にネコのように細く黒い瞳が見える。

舌は真っ赤でヘビのように長く、出したり引っ込めたりしている。

足元は田んぼの中でよく見えないが、体長は1メートルは超えているか。


・・何これ!


「ぐわっ」


甲冑を着たイケメンがこの不気味な生き物に、どんどん引きずりこまれている。

その場所だけが、底無し沼のようだ。


「化け物め」


そう言って、馬に乗った人間が弓を引いている。

いや、これ男に当たるだろ。


俺はとっさに身を翻し、空を蹴り上げ回転しながら化け物の後ろ側に回り込む。


着地と同時に


「火よ!出ろーー!!」


俺はじいさんがやったように、両手を合わせてから指先を化け物に向かって開くように向ける。


ゴウ!


俺の両手から放たれた青い炎は化け物の背中に命中する。


ギャー!!


化け物の背中に火が着き、一気に燃え上がる。

俺の放った炎は粘着性があるのか、一気にカッパを包み込む。

化け物は男を放し、のたうちまわり、炎に包まれ跡形もなく灰に変わった。


はぁはぁ。

俺は威力の凄さと、化け物の気持ち悪さとで吐きそう。


「炎?」


馬に乗った人間が呟き、馬から降りてきて化け物に襲われたイケメン男に近づく。


「彦丸。大丈夫か?」


太もも辺りまで引きずり込まれた『彦丸』と呼んだイケメン男を引っ張り上げる。

180㎝はあるかと思える大きな体を引っ張り上げるとは、すごい力だな。


「ぐっ。は、はい。大丈夫です」



大丈夫と言いつつ、引っ掛かれたのか頬から血が滴っている。


「そして、お前。名は何と申す」


不意に俺の方へ歩みよる。

へっ?俺?

背は、180センチ程か。

キラキラ光っている赤い甲冑を着ているが、肩からのラインを見れば細身なのは分かる。

身分の高い人間か。

相変わらず逆光で顔は見えない。

俺は目を細めながらこたえた。


「久瀬、一翔」


「一翔?変わった名前だな」


「・・これ、何だ?」


俺は、灰になった化け物を指差す。


「お前、知らんのか?これはカッパと言う魔物だ。人や村を襲う」


カッパだと?これが?

初めて見たぞ。

気持ち悪いな。


「・・・お前、年はいくつだ?」


「17」


「17だと?もっと子供じゃないのか」


失礼な。背の高さで判断するなよ。


「お前、炎を扱うのか?気に入った。私にについてこい。

彦丸。一翔を連れていく」


「ははっ!」


ちょっと待て!

俺には魔物を倒すという使命があるんだよ。


「勝手に決めるな」


すると、馬に乗っていた人間は、クルッと立ち位置をかえ、俺にあごクイをしながら言った。


・・!?


サラサラな髪から見える、切れ長のアーモンド型の目の中に色気を放つブルーグレーの三白眼の瞳。

形のいい高い鼻と、少し薄い口角の上がった大きめの口。

尖った顎と、シワのない白く綺麗な肌。

さっき逆光だと思っていたのは、この美女の後光なのか?

こんなに整った顔を今まで見たことがない。

彫刻のような美しさだ。




「どうだ?私の顔が見えるか?」


言葉にならない驚きで、無言で頷く俺。

すると、俺の耳元で


「だったら、ついて来るよな?」


と、綺麗な奥深い少し青みのかかった瞳でじーっと見られ、


「はい」


と、応えてしまった俺はダメなやつ?



そんな俺の心の叫びに気がついているのか、


「よし」


と、艶やかな瞳を斜めに俺へと向ける。

いや、その顔もスゴい色っぽいんですけど!


「光秀様。こいつ、大丈夫ですか」


彦丸が赤い顔をしている俺を見ながら言う。

光秀様? 

えっ?男?うそだろ?

いや、この容姿は女だろ。

俺の頭の中は男か女かでパニック。


しかも『光秀』という名前。

この明らかに高貴な光をまとうのは・・

あの戦国武将の光秀?

だとしたら男じゃねーか!


「あ、あの。あなたのお名前は」


俺は恐る恐る、その絶世の美人に名前を訊く。


「明智、光秀」


ああ!やっばり。

男だった。

うっ。

何か悲しい俺。

俺は、男に反応してしまったのか。


「男だった・・」


思わず呟く。

すると、光秀はピクッと反応し


「私が女だったらよかったのか?」


そう言って綺麗な形の目を斜め45度から俺に向けじっと見た。


!!

この角度。ヤバイ。目の前にいるのは美の女神か。

どこか儚げにさえ見えるブルーグレーの瞳は、一度見たものを放さないように俺の心まで釘つけにした。

三白眼の破壊力は半端じゃない。


・・・やっぱり女、か?

男でこの色気と魅力はありえない。


しまった。

透視術にすれば良かったな、と、二度目の後悔。


「あの。女ですよね?」


念のため訊いてみる。


「・・知りたければついて来い」


フフン、と斜めに顎を上げ、キレイな口は誘うような笑みを浮かべる。

ああ、口から首元へのラインが綺麗すぎでしょ。


もう。どっちでもいい。

あなたは絶世の美人です。


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