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6手作り夕餉


「みたいなお昼でさー。どう思うー?」

「えー? 何か言ったー? (トントントン)」


手を動かしながら人の話を適当に聞き流すアンドナ。

彼女は現在台所にて、夕飯の支度をしている。

寝転がりつつ、彼女の姿を眺めた。

現在、アンドナはあのエッチな格好ではなく私服姿。

タンクトップとショートパンツ、ポニテ、そしてエプロン。

これだけ見ると普通にカヌレ会長だが、頭には申し訳程度にツノが有るから違うな。

まぁこれはこれでエロい格好だけど。


「ふんふんふ〜ん♪」


なにがご機嫌なのか、鼻歌を漏らすアンドナ。

ごま油の匂いからして、メニューは中華系だな。

まるで『僕の台所を前から使い込んでる』ように、順調に調理は進んでる様子。

まるで……そう、これじゃあまるで。


「夫婦か」

「えっ! 夫婦!?」

「それは聞こえてんのかよ」


バッと振り返る彼女に呆れつつ、暇なので調理の様子を見に立ち上がる。


「フンフンーン♪」

「えいっ(ギュッ)」

「うひゃあ!?」


不意に後ろから抱きしめてやると、ビクンッと良い反応。


「ちょ! い、いきなりはやめてよ! 調理中だよ!」

「それで指落としたら今日は『あーん』て食べさせてあげるよ」

「今日限定!? 最低でも一生は介護してよぉー」


アンドナは包丁をまな板に置き、鍋の火を止め、それから、僕の回した手の上に自らの手を添えた。


「で、なにしてるの?」

「んー? 見ての通り、豆腐を切ってお湯にくぐらせようとしてたんだよ? こーすると豆腐の水分が抜けて味が染み込みやすくなるからねっ」

「主婦の知恵が豊富なサキュバスだなぁ。となると、今日のメインは豆腐が主役な?」

「そ。マーボーだよっ。辛いの平気?」

「庭に山椒を栽培してるくらいには。そこの瓶の中身が手作り山椒粉だよ」

「あれって育てられるんだ……じゃあそれ使わせて貰って、あとこの手作りっぽいラー油も多めに、だね」


フー


「ひゃん! ちょ……きゅ、急に耳攻めるのはやめて……」


ボソボソ……


「み、耳元で変な事言わないでっ、くすぐったくてゾワゾワするからっ。も、もうっ。だから今はご飯の支度中だよっ。寂しいならご飯の後構ってあげるからっ」

「なに言ってだ。これも立派な『サキュバス実習』の一環だよ」

「実習……そ、そういえばそういうミッション的なのあったね……それで、今の状況にどんな意図が?」

「そりゃあ『ラブラブカップルを再現』だよ。男を知る前に、まずは『イチャイチャの良さ』を知らないとね」

「い、イチャイチャの……?」

「そ。君だって、これからサキュバスとして生きるのに『使命感』やら『惰性』での仕事なんて嫌だろ? どうせなら楽しくて遣り甲斐のあるものにするべきだ」

「う、うん、そうだね……?」

「君の商売相手は、まぁ基本男だろう。だからこそ、僕で『男との触れ合い方と楽しみ方』を知りな」

「ふ、触れ合い……(赤面)」

「もう、エッチなのを想像したでしょ。ま、それも含めて、これから、ね」


パッと、僕が潔く離れると、「え……?」と名残惜しそうなモジモジ揺れるアンドナ。


「そうと決まれば、おら、早く飯作れ」

「り、理不尽だよ! 君のせいで遅れたの!」

「しゃあねぇ、手伝ってやるか」



パパパッと、マーボー、タマゴスープ、春雨サラダを用意し、テーブルに。


「「いただきまーすー」」


手を合わせ、夕食開始。


「(パクッ)……んーっ、んひーっ、辛い辛いっ。辛いってか山椒だから舌ビリビリで痛いっ」

「そう? こういう刺激がクセになるんだよ」

「た、確かに、これはこれで……(ハムッハフハフッ)」

「(モグモグ)そーいえば、うちの県では【マーボー焼きそば】なるものが有名らしいけど、食べた事ある?」

「んー、無いかなぁ。昔からあったみたいな空気だけど、急に出て来た感あるよね、アレ」

「やっぱマーボーはライスだよなぁ。あんかけ系焼きそばも嫌いじゃ無いけどさ、中華飯しかり、ライスでワシワシ食いたいんだよ中華は」

「それなー」


なんて、サキュバスと日常的(状況は非日常)な会話をしながら食事を進めていって……


「……ん? ……、……むむ。てか、こんなにニンニク、入れたっけ?」

「こっそり追いニンしといたよ(サムズアップb)」

「追いニン!? やめてよ! 私女の子だよ! 匂い残っちゃう!」

「細けぇ事を……ならこれでも飲みな(トクトクトク)」

「んー? (クンクン)お茶? んっ……不思議な味だね」

「ルイボスティーだよ。とんこつラーメン屋にあったの飲んだらハマったんだ」

「ふーん、コレがねぇ。ま、確かに、慣れればこれはこれで……(ゴクゴク)」

「『ニンニクの匂いを抑える効果』もあるらしいからね。しかもノンカフェイン」

「至れり尽くせりだねぇ。おかわりっ」


食後は、冷蔵庫に冷やし固めておいた【杏仁豆腐】を取り出して……


「んー、サッパリ。お店のランチセットみたいな充実した夕食だったね。お腹いっぱいだよー」

「中々に家庭スキルのあるサキュバスだと分かったよ。それも男をダメにするサキュバススキルかい?」

「スキルだとかはよく分からないけど……いつか君と『こんな時間を過ごしたい』と思って腕を磨いて来たんだよ。まさか『こんなに早く実現するとは』思わなかったけど」

「誰にでも言ってんのそれ? 油断ならないね」

「い、言ってないってっ、もうっ」


汗だくなアンドナは、湿ったタンクトップの首元をパタパタと仰ぐ。

甘ったるい、彼女の香りにムラッとなったので。


「さっ。汗を流す為に一緒にお風呂入ろっか」

「一緒に!?」


彼女のパタパタする手が止まる。


「あ、汗流すだけなら別々で良くない!?」

「サキュバスがガタガタ抜かすな。食欲の次は性欲だろぉ?」

「で、でも……あっ、そう! お腹がポッコリしてて色気ないからさ! また今度でっ」

「偶然だね、僕はポッコリお腹フェチなんだ」

「性癖が歪んでるよっ。き、緊張してお風呂で吐くかも!」

「うーん……流石に嘔吐は困るかな。それは今の所ストライクゾーンじゃないし」

「それはいつまでもアウトでいて欲しいかな……」

「んぁー(ゴロン)萎えたわー、腹休めにテレビでも見るかー」


ピッ テレビをつけると……『床下女VSふすま女』


「おっ。丁度映画の時間帯だったか。夏らしくホラー映画、しかも見るか悩んでいつの間にか公開終わってたやつだ」

「ひぇ! チャ、チャンネル変えて!」

「ああん? 悪魔のクセに幽霊にびびんなよ」

「苦手なものは苦手なの!」

「あらすじとしては、人気のホラー映画二作の顔である女怨霊二人を対決させるっていうネタ映画だね。でも中身は本格的なホラーらしいよ」

「聞いてないっ、聞いてないっ」

「電気消すよー(カチッ)」

「雰囲気出さないでー!」

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