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52 もう無理

「ね? ね? 『しよ』? このまましちゃお?」

「いいよ」


この先はセンシティブ不可避だけれど、過程を飛ばして朝チュン(二回目)で誤魔化せばいいかと、彼女が自らのパンツ(ピンク)に手を掛けたのを眺めて


ガチャガチャ


「っ!?」


バッと入り口の方を見るアンドナ。

こんな朝からの来客。

インターホンも押さずノブを回す不躾さ。


「だ、誰……?」

「カヌレとかわらびちゃんだったらこんな場面見られたらやばいねぇ?」

「やぁ……んァ!」


クリクリッ


「はぁ……! ど、どこ摘んでるのぉ……!」

「どこだろうねぇ? ほら、来客より僕に集中しろ。若しくはデカい声出して外の奴追い返せ」

「んにやぁ……!」


カチャン

鍵を解錠する音。

こんな事をするような奴は……


「(ガチャ)はぁ。ん? うわ」


開口してからのため息とドン引きという失礼な来客。


「おい。今取り込み中だから帰れよ」

「言われなくても帰る。母さんから伝言預かってるだけ」


僕の妹セレスの目は冷ややかだ。

勝手に入って来といてそりゃあないぜ。


「伝言? んなのケータイで済ませろよ」

「『様子見て来て』って言われたから」

「素直に応じるなよー。んで、伝言は?」


チラリ 僕の上にまたがるアンドナを見るセレス。


「別に彼女が聞いてもいいでしょや。てか、そういや君にはまだ紹介してなかったね」

「紹介?」

「ちょ、ウカノ君っ」


彼女が紹介されたく無さそうに口を挟むも僕はスルーし、


「この子はアンドナ。サキュバスで僕のすけさ」

「すけ!?」

「サキュバスぅ?」


訝しげにすけをジッと見るセレス。

「ううっ」と気まずそうに視線を逸らすすけ。


「『あんたが』それでいいならいいけど。で、本題」

「サキュバスを軽く流すとか我が妹ながら大物だな。あ、本題の方は(ママンの伝言とか)面倒いから言わないでいいよ」

「『十時までに実家に来い』って」

「言うなよー」


聞いてなきゃセレスの伝達ミスという体でサボれたのに。


「なんで休みの日に実家行かなきゃなんだよー」

「『理由言ったら来ないから言うな』って」

「更に行きたく無くなるわい」


はぁ、と僕はため息をつき、シッシと手を仰ぎながら、


「行くから、キミもー帰っていいよ」

「言われなくても帰る。パンツ履いてから来い」

「今も履いとるわい」


去り際、フンッと不機嫌に鼻を鳴らし『アンドナを睨んで』、セレスは帰って行った。


「なーにあの子。やーなーかーんじー」

「……まぁ、私が睨まれる心当たりは『有りまくり』だけどもね」

「気にしないでいいよ。アイツ、僕にエッチな体験とか女とか色々先越されたからイラついてんだよ」

「……大好きなお兄ちゃんに【変な虫】が付いて怒ってるって可能性の方が大きいと思うよ」

「んな可愛げがあったのは幼女の頃くらいさ。それに、憑かれたのは悪魔に、だよ」


僕は扉に向けていた視線をアンドナに戻して、


「さ、続きしよっか?」

「……もう、無理」

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