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4ハグ


「ふわぁーあ……」


翌日、昼、中庭、ベンチの上。


前夜は妙に興奮し、なかなか寝付けなかった。

まさか、我が家にサキュバスがやって来るなんて……。

夏に不思議な出会いと体験をして一皮向けた男の子になる、そんなジュブナイル小説の主人公になった気分だ。

これはまだ誰にも言えないな。


「ニャー?」

「んー? ただの考え事だよ」


僕の膝の上でゴロゴロする【キツネ】に心配された。

そうそう、キツネってコンコン鳴かずにニャーニャー猫みたいな声出すんだよね、犬科なのに。

てかこの子、今更だけどどこから来たんだろう?


「ウカ」


「おや、セレス。ご苦労様」

いつものように、生徒会書記様が空の弁当箱回収に来て下さった。

「『今日は』キツネ?」

「そ。昨日はタヌキ。いや、アライグマ? レッサーパンダ?」


手を伸ばし、キツネの頭を撫でるセレス。

キツネも気持ち良さそうに目を細める。

こう見ると人懐っこく見えるが、この子『達』がこのように懐くのは『僕とセレス』のみ。


「もふもふ」

「冬にはもっともふもふだろうねぇ」


「や、やぁ、こんにちは」


ふと、こちらに向けられた声。

誰だと思って顔を上げると……


「どうしたの、会長」


セレスが告げたその相手は、僕が気になる張本人。

夢先カヌレ。

今日も今日とておっぱいが豊満で、組んだ腕の上にズシリとのっていた。

強調。

まるで、僕に『見せる』ように。


「い、いや、思えば、『彼に』ちゃんと『挨拶』した事が無いと思ってね」

「彼。ウカに用事?」

「そ、そうだよ」


ふむ?

いつものカラッとハキハキ堂々とした会長では無いな。

どこかオドオドと挙動不審。


--既視感。


「コイツなんかに挨拶する必要、あるの?」

「おいセレス、あまり僕を怒らせるなよ?」

「うるさいナマケモノ」

「なにぉぅこのまな板め」


グニーとホッペを抓り合う僕達。

お互い、この勝負で引いた事が無い。

大抵、


「ふ、二人とも、やめなさいっ」


誰かに止められるまで。

逆に言えば、止められたらすぐ止める意志の弱さ。


--会長と目が合う。


ドキドキと早くなる鼓動。

一瞬、慌てたように逸らされたが、すぐに視線を戻して、


「あ、改めて。こんにちは、箱庭ウカノ君」

「えいっ(ギュッ)」


不意打ち。

僕は会長に抱き付いていた。


「え」


ピタリと止まる会長。

ふむ……フワッとした抱き心地……この感触は……。


「こら」


セレスに襟を掴まれ、猫のように引き剥がされる。


「にゃー、何するのさ。もう少しで何か『わかりそう』だったのに」

「アンタの方が何してるの、唐突に」

「印象つける為に先制攻撃しなきゃって」

「悪印象はつけられたかもね。ごめん会長、この通り、変なやつだから」

「……あ……う、うん、大丈夫。聞いた話の通り、面白い子、だね? 私はす、好きだよ、ストレートな子は」

「ならもっかい良い?」

「お、おう。どんとこいっ」

「会長。このアホに付き合わなくていいから」


もちっと抱きたかったのに。

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