表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

360/369

335 職員とパーフェクトプラン

「で、探してるのは自衛のアイテム、だっけ? どんなタイプのが良い?」


「た、タイプ?」

「うん。自衛って言っても、解釈は様々じゃん? 相手を『暴力で無力化』するのか、相手からの『暴力を防ぐ』のか、相手の『戦意を無くす』のか、相手と『関わらないように』するのかとか、色々さ」

「そ、そうか、ううん…………変な人と関わらないように、ってのが一番、かな?」


出来るだけトラブルは起こしたくない。

既に、最大級の引力を持つ同行人が目の前に居るというのに。


「つまり『回避系』ねー。僕的には能力ちからで捩じ伏せる『パワー系』とか、相手の能力を反射する『カウンター系』が見てて面白いんだけどな」


全然面白くなどない。

一般客をなんだと思ってるのか。



それから、慧音さんと共にデバイスに従い、目的の『異常存在』があるという露店に到着。


「しゃっせー」

「えーっとねぇ……おっ、あったあった。店員さん、ちょっと触らせて貰うねー」


慧音さんはしゃがみ、敷物の上に置かれた商品群の中から、二つのモノを摘み上げる。

片方はキラキラした緑の液体の入った小瓶、もう片方はキラキラした青い宝石の付いた指輪。

一応、どちらも前もってデバイスで検索した通りのモノだが……


「どっちがいい? 飲むタイプか、装着つけるタイプか」

「ええと……因みに、どっちかが上とかあるの?」

「それは使う場面にもよるけど、単純な持続力とか強力なのはって話なら、断然前者(飲むタイプ)だよ。理由はなんとなく分かるでしょ?」

「……薬で身体を変質させるというリスクがあるから?」

「実際、リスクというほどのリスクはないんだけどね。でもまぁ、なんとなく嫌じゃん? 薬飲むとか。そういった意味で強力らしいよ」


『で、どっち?』と目で急かしてくる慧音さん。

……それぞれの『異常存在』の効果はこうだ。


指輪タイプ……【リョーセイバイ】は、危機を察知したら『身体が透明に』なって難を逃れられ、

飲むタイプ……【トーメイコーソク】は、敵意を向けられた相手から『敵意を無くす』という平和的な効果がある。

前者にリスクは無いが、後者には『逆に好意を持たれてしまう場合も』というリスクがある。


「……指輪の方で」

「冒険しないねぇ。お、こっちの指輪の効果は……っと、丁度いい。そのデバイスのカメラモードでコレ、撮影して見てよ」

「さ、撮影?」


言われるがままにパシャリ。

すると、すぐに画面の下部に文字が浮かび上がり……


「これは……商品説明?」

「そ。そーゆー検索も楽でしょ。因みに、効果はなんて?」

「……『ビーム』が出せる指輪、らしい」

「ええやん。買わない?」

「い、いらない……」


人間相手ならまだしも、ここの住人を一撃で無力化出来る威力も無いだろうし、下手に反撃をすれば、それこそどちらかが死ぬまで収拾が付かなくなる。

そう考えると、この『不戦の指輪』はとても都合がいい。

出来れば、薬の方も飲んで二重に万全を期したい所だが、流石に後が(体調的な意味で)怖いので……もう少し、効果が弱くても良いから、別の薬も検討したい。

いや、わざわざ薬タイプでなくとも、この指輪のようなアクセサリータイプのを追加でいいのだが。



「ありあとしたー!」


デバイスで会計を済ませ、店員から指輪を受け取る。

ここの責任者であるあのエルフ(のような見た目の)プランから直接招待されたからか、デバイスに初めからチャージされていたお金は潤沢にある。

まぁ、これだけのお金でも買えないような商品もあるんだろうが。


「指に着けないでネックレスみたいにして貰ったんだ」

「う、うん……こういうアクセとかあまり着けないし……」

「これを機に着けてみればいいのに。サイズは使用者に合わせて可変してくれるよ?」

「ま、まぁ、このままでも問題なく使えるみたいだし……」

「早速使ってみれば?」

「そ、そうは言っても……敵意のある相手が居ないと発動しないっていうし、そうそう相手に敵意を持たれるなんて場面も無いし……」

「確かに。あっ、そーいや『敵意を持たれる香水』があそこに売ってた気が?」

「ほ、本末転倒……」


ここで『試しに僕が襲いかかってみるね』なんて言われなくって良かった。

指輪の力で透明になれると言っても、息遣いなどの気配や体臭が消えるわけではない。

この街中ならまだしも、植物園などの野生下で、五感の鋭敏な獣達相手にどれだけ誤魔化せるのやら。

他にも、この市場にだって嗅覚や感覚の鋭い者もいるだろうし。


それになにより……

目の前のこの人、慧音さんからは『何を用いても』逃げられる気がしない。

例え私が、他の『異常存在』を用いて気配や体臭を消したとしても、この人相手のかくれんぼに勝てるビジョンが見えない。


(それに、いまだ私は、慧音さんの事を何も知らない)


分かっているのは、彼女の名前と、そして、『恐怖』だけ。


その恐怖は、不快感や威圧感を匂わせてくるようなソレとは違う。

言うなれば『根源的恐怖』を、彼女は感じさせてくるのだ。

暗闇や火、高所などと同じ、周囲に当たり前に存在している恐怖のカテゴリー。


彼女の特徴に合わせるなら……『音』に対する恐怖。


今もこうして、普通に会話出来ているように見えるが、実際は集中など出来ていない。

彼女が声を発する度に、頭の中の脳みそをこねくり回される感覚。


なにか、こう、『逆らえなくなる』ような、陶酔に似た感覚。


恐怖と陶酔……それは、相反するようで、殆どはセットだ。

歴史上の『為政者』が皆、持っていたモノ。

即ち、『王』となる資格を持つ者だろう。


直感だが、彼女の『異常性』は、この市場で買えるような『異常存在』を摂取したり身に付けたりして『発現』出来るものでは無い、気がする。


それだけで、彼女を量産出来るとは到底思えないから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ