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310 職員と繁殖

『異常存在』だらけの観光島の目玉、植物園へと足を踏み入れた私達 山百合学園一行。

そこで出会ったのは、木ほどの巨大なキノコ(冬虫夏草)と、その元キノコだったと自称する人型のお姉さん(従業員)。


キノコが成長すると、人に変態する?


あまりの非現実的(『異常存在』を扱う『組織』の『職員』だった私が言うのもなんだが)な話に、学生一同がポカンとしていると、


のそのそ うねうね


視界の端から……

巨大で……

ふわふわな……

長細い……

毛玉?


いや、『巨大な毛ムシ』だ。

キノコに負けないくらいの、トラックみたいなサイズの。


見た目はカラフルで、不思議と不快感を覚えない、ぬいぐるみのような愛嬌を感じる見た目。

まぁ感性は人それぞれなんで、私のように(比較的)好印象の者も居れば、逆の者も居て、お嬢様方からは ワーキャー と様々な声。


「皆様ぁ、アレはメガキャタピラーの幼虫ですよ。成長したら綺麗な羽を持つ蛾、モスラになりますー。体毛であるあのモフモフは『皆様には』猛毒なんで、抜け落ちたやつにも近付かないで下さいねー」


「数日苦しんだ後全身の毛が抜けて死ぬ毒だからねぇ。てか、デカいからって頭にメガだの安直な名前付いてる生き物多くない? ここ(キノコお姉さん)」


「そして皆様っ。今から少しショッキングな『大自然の摂理』が行われますっ。グロテスクな光景に耐性のない方は顔を伏せる事をお勧めしますっ。まぁこの植物園に来た以上必ず一度は『似た事態に遭遇』すると思いますけどねっ」


「美味しいんだよねぇ、あの虫」


のそのそ うねうね


まるで警戒心を持たず、毛ムシことメガキャタピラーはキノコの側を通り過ぎようとして……


ズルル!!!


まるで置物のように佇んでいたキノコが、唐突に ギュン! と動き出し、まるで蛇のような柔軟さで毛虫の体に巻き付く。


ズズズ!!!


それから間髪入れず、自らごと、地中へと引き摺り込んで行った。


シーン…………


時間にしてわずか二秒ほどの狩り。

その光景に、お嬢様方は言葉を失っていた。


「相変わらずキノコらしくないハントやねぇ。もっとこう、菌ばら撒いて身動き取れなくするとかスマートに行けんのか?」


「出来なくもないけど、幼菌時代はまず何より栄養ある菌床を早々に必要とするからね。菌が効かなければ逃げられるし、逆に、あの毛ムシに負けて食べられちゃうパターンだってある。物理的(直に襲う)が最も効果的なのさ」


「植物系も色々面倒いんやなぁ。…………さてっ、皆さんっ。丁度良いので、何か彼女に質問はございます?」

「おい、私も仕事中なんだが」

「これも仕事や」

「全く……」


するとすかさず、ハイハイ! と手を挙げるお嬢様たち。


「キノコお姉様のようなお方(人型)は現在他に何人いらっしゃるんですかっ」

「ここには百人くらい居るよー」


「キノコお姉様は普段ら人間ひとと変わらぬ生活をっ?」

「そうだね。この姿になってからは普通に過ごしてるよ。じゃー悪いけど、次最後の質問でいいかな?」


そんな、健全な質問タイムが進んでいた時、


「はーい。その姿であれば、人間と普通に繁殖出来ますのー?」


「はぁ」と、『彼女』の隣でため息を吐くのはわらびさん。


質問者である彼女とは、言うまでもなくピンク髪のポルノじょ……女優のアマンさんである。


「いい質問やね! ほら答えんかいキノコ女っ」

「キツネ女は黙ってな。……おや? 君達はよく見れば…………まぁ、いいか」


キノコのお姉さんは一瞬、二人を見て少し驚いていたが、すぐに表情を戻し、微笑んで、


「ええと、人間との繁殖、だっけ? 思春期だねぇ。何故伴侶の対象を人間限定で訊いたんだい? いやまぁ実際、伴侶は人間相手が多いけどもさ


「同種族同士とか気持ち悪いやんなぁ」


「普通は同種族同士だろ……コホン。ええと、まぁ、その辺(繁殖)は問題ないよ。キノコから人型に変態すると、身体の器官も人間のそれと相違なくなるからね」


「ふぅん。てか、ここ(の住人)って人型に変態する連中多くあらへん? 安易な擬人化は好きじゃないわぁ」


「お前がそれを言うか狐が」

「狐の擬人化は王道やからねぇ。日本では昔から神の使いとして有名なんやでー」


「たく、減らず口を。まぁ真相は、人型の方が暮らしやすいからとプラン様……園長が上手く(進化ツリーの調整を)やってくれてるんだろうさ」


「アンタんとこの旦那さんも人間やろ? 旦那さん、キノコなアンタとチョメチョメした後病気になったりせんかったん?」


「学生の前で女同士の飲み会みたいなノリの話題を振るな。至って健康だ。……ふぅ、こんな所でいいかな? では、私はこれで。楽しんで行ってね」


スタスタスタ(早足)


「あ、そそくさ逃げよった。……さて! (パンッ)」


クルリと、切り替えるように手を叩きつつ、狐花はこちらに身体を向けて、


「皆さんっ、植物園もまだ入り口っ。ここの魅力の紹介としては少し『パンチが弱い』と感じたでしょう。これからですよこれから。次行きましょ」


スタスタと、先を目指して歩き始めた。


お嬢様方からすれば……いや、私からしても、十分に凄いものを見た感覚なのだが、まだ序の口らしい。


狐花について行きつつ、ふと、キノコが居た場所に目を向けると、


ズモモ……


地中でもう、毛ムシへの『処置』を終えたのか、幼菌キノコが再び、頭を出し始めていた。


冬虫夏草と性質が同じなら、地中に埋めた『獲物(毛ムシ)』がカラカラになるまで栄養を搾りつつ、日々成長していくのだろう。


本来の冬虫夏草であれば、寄生する『獲物』はその生涯に一匹のみ……だが、このサイズだ、或いは再び狩りを始めるかもしれない。


このキノコが成体おとなになり、人の姿を得た時。

観察していた私たちの事は覚えているだろうか。

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