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271 会長とカチコチ

遂に魔界へとやって来たヒロイン、カヌレ。


僕を召喚したタルトちゃんとは姫同士、なにかしら因縁があるようで……


思い出話聞かせて? と言ったが、突っぱねられた。



はぁ、とカヌレは一つ息をついて、


「そんな『国同士の話より』も、先にタルトには『言いたい事』があった……が、もういいさ。【悪魔の招待状ラブレター】の件もね。我々には積もる話も無いし。この南の大陸に、私のような者が居るのも問題だろう。今すぐ、立ち去らせて貰うよ」


さっきから早く帰りたがりだな、カヌレ。


「そ。なら『貴方は』お帰りなさい。ただし……『その子は置いてって』貰うわよ」


「んー?」


タルトちゃんが熱っぽく真剣な視線を僕に送ってくる。


「いやいやタルトちゃん、もう偽装結婚なんて不要だぜ? 王子だって、今後はチョッカイなんて掛けてこないと思うし」


「ええ、そうでしょうね。さっきも言ったけど、感謝してるわ。でも今は、あのバカ王子周りの事なんて『どうでもいい』の?」


「ふふ、なぁに? アレほど惚れるなと釘刺したのに、戦う僕が格好良すぎて抑えられなかった?」


「ええ。そのように取ってくれても構わないわ」


「会った時はドギマギしてたりツンツンしてたってのに、随分と落ち着いたもんだ。モテるのも困りものだよ、ねえ?」


「いや、ねぇと私の顔を見られても……」


カヌレの反応が気になっただけ。


「実はタルトちゃん、このカヌレこそが僕の『二人(三人)の彼女』の内の一人だよっ」


「そう。見てれば分かるわ」


「まぁ僕だけそう(彼女だと)思ってて、カヌレは『爛れた関係』としか思ってないかもだがなっ」


「前者の認識で良いよ。そんなわけで、タルト」


カヌレは僕の手を握り、


「君はさっき『なにか』言ってた気がするが、聞き逃した事にしよう。この話はこれで終わりだ。帰るよ」


「えー、どっか寄って行こうよー。なんかゲテモノだらけの市場とかあるっしょー」


「どこまでも能天気だな……今度ね。というか、なんでここ、『アルコールくさい』んだ?」


「さっき果実酒を作ってね。だからカヌレが握ってる方の手はお酒でベタベタだよ」

「どういう状況……?」


ガシッ


「ならもう一度言ってあげるわ。その子を置いていきなさい」


空いてる反対側の手を、タルトちゃんに掴まれた。



『(フゥー)……白い息? (ブルルッ)それにこの肌寒さ……ハッ! 皆さん! 注意して下さい! ここは再び戦場になります! 見て下さい二人の王女の周囲を! キラキラと宝石のように輝く大気! あれは寒過ぎる環境で大気中の水蒸気が昇華して出来た氷晶現象! ダイヤモンドダストです!』



「タルト。自分が何を言ってるのか自覚してるのか?」


「アラ。あの『冷めたガキ』だった淫魔風情が、随分と感情のある目をするようになったじゃない」


「おかげさまでね。厄介な相手を好きになった所為で『変わらざるを得なかった』」


「貴方には荷が重い相手なんじゃないかしら。あの子がどれほどの力がある者か理解していて?」


「生憎、君以上にそれは痛感してるよ。君こそ、気紛れに喚んだ相手は、君の扱える相手じゃなかったろ?」


「ええ。けれど、それも時間の問題よ。今日一日で、随分と距離は縮められたしね」


「ふっ、どこからその自信が来るのやら。その子を飼い慣らせると思わない方が良い。『安い餌』には釣られないよ」


「そうかしら? 今まであまり良いモノを食べさせて貰えなかったように見えたけど」



「プロメさーん、僕ら置いてけぼりだねー」

「もう私帰っていいかなっ!?」



「はぁ……埒があかないな。どうすればお前は引くんだ?」


「貴方、話し合いで解決出来ると思ってるの? 人間界で随分温くなったのね」


「ふぅ」と。

カヌレは気怠そうに首の裏を掻きながら、


理解わからないか? お前の事を慮って、話し合いで解決してやろうとしてるんだぞ」


「はっ、言うじゃない」


パキ パキ パキ


未だ二人が離さぬ僕の両手、そこを起点に『女子制服だけ』が、徐々に『凍結』していく。


「あのー、二人とも。僕が凍っちゃうよ。メインの僕がフリージングしちゃうよ」


「年中変な事を考えてるんだから、少しは頭を冷やしてくれ」

「どうせ平気でしょう? 風邪でもひいたら看病して上げるわ」


二人とも息ピッタリだぜ。

流石、魔界のお姫様ーズ。


「出会う場が違えば、親友ともになれたものを……」


「二人とも若の適当な名台詞っぽいの聞いてないみたいだよっ」

「プロメさん、暇なら僕の凍った服溶かしてよ」

「二人に余計な事するなって言われそうだからヤッ!」

「おばさんがヤッ! とか言うな」


にしても……

ここまで喧嘩腰なカヌレも珍しいな。

学校で見せるビシッとした生徒会長時の彼女からは、どこか離れた荒々しい姿。


「どうやら、多少は『氷魔法』を使えるようになったようね」


「それは先程見せたろう」


「なに? まさか、さっき『世界樹を凍らせたのは自分』とでも言うつもり?」


「目の前の現実が信じられないか?」


「ええ。そんな事が可能なのは『側に居たあの子』だけよ」



「確かに。実は僕の氷魔法じゃないか?」

「若は何もしてなかったよっ」

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