267 ラストラウンド
「今の若は魔力がオーバーフローしてるからね! その証拠に髪色が変わってるでしょ!? それが『精霊化』のサインね! 魔力が多過ぎてっ、逆にこの辺の魔族連中には魔力を感じて貰えないかもね!」
なんて言うプロメさん。
髪が長いから、肩から垂れる自身の髪を見て色の変化は分かってたけど……
昔から、たまに髪の色が変わったりして自分を(今風の色んな色に変わる)サイ◯人かと思っていた。
妹のセレスが『自分だけ変身出来てズルい』と嫉妬してたのを思い出したよ。
僕的には、ママンと同じ緑色はキャラが被るから嫌なんだけどね。
「なんか知らんが凄いんだなぁ僕は。早い話、ここじゃもう『僕の相手』になるのはプロメさんだけって事かぁ」
「何の話!? 相手しないからね! 兎に角! 満足したんならもう帰ろうよ若!」
「えー、魔法覚えたばっかなのに? 折角だし魔法バトルしようぜプロメさん!」
「そうは言っても! 今の私は若に喚ばれた状態だからっ、召喚者の若に危害は加えられないルールだよっ!」
「ふぅん。召喚士に逆らう召喚獣みたいの居ないの?」
「力不足の召喚士ならそんなケースもあるけどっ、若の場合は無駄に完璧な召喚してるからね!」
「ふーん。でも魔法ってのが自由だってんなら、そんな逆らえないってルールは簡単に捻じ曲げられるなっ。(バッ!)おらっ、『オートマタ(自由人形)』!」
「(フッ)……うわっ、ホントに『縛り』が解けたよ! やりたい放題が過ぎるよ!」
「じゃあ戦んぞ!」
「やだよ! 他の精霊喚んでポ◯モンバトルさせるつもりでしょ!」
「いいや、勿論僕自身がプロメさんと戦うわけだが……」
そんな事を言われると、確かに〇ケモンバトルさせたくなったな。
何か……おばさん達を召喚せずとも、なんか強くてカッコよな子を喚べないかと周囲をキョロキョロする僕。
近くでワーキャーと【王子様】が何やら罵倒的な放送禁止用語を叫んでいるが、無視無視。
……ん?
ふと、気になったのは『プロメさんが』最初に消し飛ばした山。
今なお、ポッカリ抉られたままの状態。
無機物も復活せると言ったが、観客席含め、この辺はまだ修復していないようで。
いや……
気になるのはそんな部分では無く、山があった所の更に奥に見えている【それ】。
気になっていたのは『魔界に来てからずっと』だけど。
僕はそちらの方に指を差し、
「プロメさん、あの【世界樹】だかって樹あるじゃん? なんで『あの樹は吹っ飛んでないの』?」
「んんっ? ああ! まぁ若なら気になるよねぇ! で、吹っ飛んで無いってのはどゆ意味っ?」
「いや、ほら。プロメさんが最初に飛ばした『黒点の銃弾』あんじゃん? アレって、山吹き飛ばしたあとに消えた感じ? だから、あの樹は無傷なん?」
「またさりげなく私の所為にするしダサい技名固定にするじゃん! あの魔法は別に勢いは死んでなかったよっ。ただっ、あの樹が『壁』になって勢いが死んだのさっ」
「ふぅむ……やっぱり、あの樹はこの世界じゃあ『別格』だねぇ……よしっ、決めた!」
「決めたっ?」
思えば、最初から、僕の『魔法適正』ってやつは決まっていたんだ。
炎だの水だの光だの闇だの、やってみたい魔法沢山あるけれど。
それでもやっぱり、『僕らしい』のはコレだ。
僕は、スッと右手を天へと掲げる。
別に、このポーズに深い意味は無い。
ただ、この手が『あの子に見えるように』。
「いくぜプロメさん!」
「もしかして今の話って……そゆこと!? 【アレ】喚ぶ気!? 止められそうにないねぇっ!」
「貴様ら! まとめて殺す!! (王子)」
『うおおお!!! 新たな魔法を出そうとしているU! 迎え撃つプロメ! その二人から掻かされた恥を! 汚名を返上しようと襲いかかるモレク王子! 勝負の行方はあああ!?』
ド バ ッ ッ ッ ! ! !
↑↓
一瞬、世界が闇に覆われたのかと勘違いした。
普段から薄暗いこの魔界ではあるが、【何か】が天を塞いだ。
きっかけは、【彼女】が天へと掲げた手の平を、パンッとステージの地面へと叩き付けた、その瞬間。
ドバッと、地面から【何か】が現れたのだ。
一瞬、また、召喚魔法? と思い、のんきに眺めていたが……
召喚された【それ】は、一瞬で、この闘技場よりも『高く伸びて』いき……
ドームのように『広がり』、天を覆った。
誰もが、その存在が何かを、すぐには理解出来なかったろう。
向かい側の観客席が見えなくなる程に『太く青黒い幹』。
その『全長』は前述の通り見上げる程に高く、頭の部分にあたる『樹冠』は学園を覆うほどに空に広がっていて。
一部の葉っぱは、呼吸をするように青白く点滅しつつ『魔力を放出』……
まるでその光景が、星空のよう。
これと同じ光景は、昔、一度見た事がある。
子供の頃にだ。
そこは、一般の魔族が近寄れない神聖な『聖域』。
王族だからこそ見る事が許された、その雄大な出立ち。
忘れようがない……
『な、なんという事でしょう! 今日は驚きの連続でしたが! 遂にはU! 世界樹すら召喚してしまいました!」




