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22 さんぴー

「あっ、カヌレだ」


反射的に、隣のわらびちゃんを窺う。

ーー今の彼女に、表情はなかった。

どういう感情? それ。

わらびちゃんは僕の視線に気付くと、すぐに『姉と会ってしまって気まずそう』な顔に。


「うへぇ、こりゃ修羅場ぢゃん……?」「どう出るの? 元凶くんっ」


「こうして一堂に介したのも何かの縁だ、みんなで祭りまわろうぜっ。さ、何食べよっかなー」


「動じてねぇ!」「一周まわって王の器や……」

「あっ」


僕はふと思い出す。


「そういえば、コレでカヌレの自演説は消えたね、わらびちゃん」

「そ、そうですね……」

「自演……?」

「こっちの話だよカヌレ。ほら、君はこっち側(わらびの反対)に立って僕を『両手に華』みたいな感じにしておくれ」

「自ら火に油を注ぐのか……」「逆に正解に見えなくも無い凶行……」

「……一旦、落ち着かせてくれ」


カヌレは頭痛が痛い(重言)のか俯き、おでこを人差し指で押さえ、


「まず、ウカノ君。私からの連絡には気付いてたかな」

「連絡? (スマホチラッ)あら、してくれてたんだね、なんで気付かなかったんだろ。……ああ、この着信時間の頃は確か漫喫で『舐め舐めタイム』だったから」

「舐め舐め……?」

「う、ウカノさん!?」


焦ったように叫ぶわらびちゃん。


「ああ、ゴメン。ペロペロタイムだった」

「何が変わったんだ!?」

「そ、ソフトクリームを食べてただけですっ……!」

「そうそう、ペロペロに夢中で気付かなかったんだよ」

「わらび、なんで赤面してんの?」「ホントにペロペロしたのはソフトクリームかぁ?」


それから、僕が余計な事を言う前に(自覚あり)出会いの経緯を話すわらびちゃん。

黙って聞いていたカヌレは、なおも俯いたまま殆ど微動だにしない。

てかこの姉妹、会話ねぇな?


ーーわらびちゃんが話し終えると、カヌレは顔を上げ、僕を見て、


「オーケー、疑問が全て解消した。偶然出会い遊んでいただけ、と」

「ククッ、『表向き』は、ね」

「この男は何故自分から話を混沌にするのか……」「逆にMなのかな?」

「さ、カヌレが納得したとこで祭りを再開するぞっ」


と。

ジリリリリ!!!

不意に、黒電話の呼び出し音が響く。


「あっ、も、もしもし……はい……はい……分かりました……」


電話を切り、シュンとなるわらびちゃん。


「す、すいませんっ、迎えの者がすぐそこまで来たようで……」

「そっか。じゃ、お祭りお祭り」

「話聞いてたのウカノくん!?」「会話バグり過ぎでしょ……」

「え? 待って貰えば良くない? なんならお祭りで買った荷物も積めるしその流れで最後は僕ら全員家に送って貰おうぜ?」

「ふてぶてしい!」「夢先家に好かれる気が一切無いムーブしてる……」

「ーーごめんなさい。『また』、ね?」


言って、わらびちゃんは頭を下げ、タタタッと浴衣姿のまま去って行った。

……なんだろう、今の『違和感』。

『人が変わった』ような感じだった。

ま、いいか。


「全く、忙しないなあの子は。いつもあんな感じかい?」

「……いや、『初めて見る』よ。あんなに『積極的』なわらびは」

「積極的? そうかなぁ。ま、いいや、連絡先交換はしたし、お祭りは改めてって事で。カヌレは屋台まわるでしょ?」

「……いや、悪いが『急用を思い出した』。私も帰るよ」

「えー、急ぎじゃないなら後でいいっしょや、一緒に帰ろ」

「急用だってば」


スタスタスタ

あっさり、カヌレも帰って行った。


「はぁ。ノリが悪い姉妹だよね」

「君のノリが良すぎるんだよ……」「今更だけど、姉を落としたと思ったら次は妹か……姉妹丼とは食いしん坊だね君はっ」

「あっ、考えたら君らがナンパされまくったのってカヌレがいたからじゃ?」

「なんで今その話蒸し返したの!?」「知ってるけど!」

「しゃあない。じゃあ三人でお祭りだ」

「「どんだけお祭り優先なの!!」」


ーーその後は三人でお祭りを普通に楽しみ、僕は手土産片手にアパートに帰宅した

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