18マンキツ
3
「ーーふぅ。やっと落ち着けるね」
「そっ、そうですね……! (ソワソワ)」
僕らが選んだ場所。
そこは『漫画喫茶inカップルシート』。
落ち着いて会話をするならベストな場所だ。
個室鍵付きだから話も外に漏れず。
だらだらと時間を過ごす為の漫画やPC、喉が乾いたらドリンクバーもある。
他にもカラオケやダーツがあるらしいけど、興味は無いかな。
ま、ホントのベストスポットはやっぱりホテルだけど。
「漫喫は結構来たりする?」
「そ、そうですね、落ち着いて『作業』したい時などに……」
「作業?」
「ッ! べ、勉強とかですっ……」
「そ」
僕は食べ放題なソフトクリームを一口パクリ(殆どの漫喫の鍵付きルームは規定で店の飲食持ち込みは禁止らしいがここは大丈夫らしい、理由は知らん)として、
「で、カヌレ。あの眼鏡とセーラー服(今は手提げ袋に畳んである)姿は変装兼オシャレ?」
ほんとに今更だけど、なんとなく先延ばしにしていた話題。
いい加減聞いとこう。
ーー問い掛けに対し彼女は、
「あ、あのっ……私は……【わらび】です。カヌレは、私の『双子の姉』で……」
「成る程」
肯く僕。
妹が居るとは聞いてなかったが、まぁ居てもいいだろう。
寧ろ、居てくれて感謝しかない。
だが、一応は確認。
「なんて、実はカヌレが変装してるってオチは無い? やろうと思えばこっそりウチの学校の生徒会から抜け出してあの女学園に先回り出来たよね?」
「そ、それは無いですっ……! 姉はそんなパワープレイをする人ではありませんっ……!」
「そっかぁ。ま、妹がいるかどうかなんて調べればすぐにバレる事、しないよね。いや、だからこそ調べないであろうと『あえて』、か……?」
「あ、あの……」
「一応君は、夢先わらびカッコカリ(仮)、としておこう」
「わ、わかりました……」
わかってなさそうな顔は置いといて、
「んー、でも、実際妹が居たら居たで警戒しなきゃな事も増えたな……」
「け、警戒、ですか……?」
「双子ってよく殺人入れ替わりトリックで使われるから君も油断してたら首を切られたり……」
「猟奇的ですっ……!」
「因みに、今の姉妹の仲の良さは?」
「……た、たまに、顔を合わせたりはしますが……」
「良くないってか。つまりは些細な切っ掛けで君はカヌレに首を切られたり……」
「そ、そんなバッドエンドを迎えるほど憎まれてはないですっ……!」
「昔は仲の良かった姉妹……しかし次第に開いていく個人差……輝きの舞台へと駆け上がる姉とは対称的に自分は……そうして家ではギスギスした空気になり……結果的に姉は家を出て一人暮らしを……」
「い、いえ、そんな悲しい回想のような展開や私自身姉に対し劣等感も特に……寧ろ『今の生活の方が充実』していて……」
「つまんねぇな!」
「ごめんなさい……!」
そんな悲しい過去も無い普通の女の子わらびちゃんは、「あ、あの……」と上目遣いで僕を見て、
「い、今更ですが、その、カヌレ……姉とは、どういった関係で……?」
「ふむ。改めて訊かれると難しい質問だ。言うて、しっかり話すようになってからまだ一日二日だしなぁ(ゴロン)」
「ッゥ……!?」
僕は仰向けに寝転ぶ。
ゴテンと、頭はわらびちゃんの膝(太もも)の上。
ピクンと彼女は小さく跳ねるも、特に拒否反応も無く。
「とりあえず、僕が『芸能界辞めろ』と言ったら二つ返事するくらいには仲が良いんじゃないかな?」
「あ、あれは『やはり』、『ウカノさん』が……」
「ん? 僕、名乗ったっけ?」
「えっ!? あっ、そ、その……ウカノさんは、ウチの学園でも有名、ですから……」
「そっかー」
膝枕から見上げても、彼女の今の表情は窺えない。
胸という遮蔽物で、物理的な意味で。
はえー、和服って胸が目立ちにくい服装なのに、乳袋とかリアルに発生するもんなんだねぇ。
姉妹揃って、やはり下品で素晴らしい躰だ。