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151 会長とエンドレスサマー

カヌレとのドタバタ動物園デートも終わり、部屋に帰ってきた僕達。

積もる話も多いので、まずは一息つこう。


おもむろに僕は立ち上がり、一人冷蔵庫へ。

ガチャリと開けた後、


「なんか飲むー?」

「んー、お茶とかでいいよ」

「コーラしかないわ」

「ならなんで聞いたの……じゃあコーラでもいいよ」

「よく見たらコーラじゃなく醤油だったわ。ならこれは関西風の出汁じゃなくルイボスティーかな?」

「なんで自分の部屋なのに把握してないの……」


暫定的ルイボスティーのボトルとコップ二つを手に取り、リビングに戻る。

テーブルにそれらを置き、二人分を注いだ。


「どうぞ」

「中身不明のやつを先に飲ませようとしないで……(すんすん)……まぁ匂い的に大丈夫か」

「(コクコク)うん、ルイボスだ。まぁ冷たい出汁だったとしても飲めるけど」

「それで喉の渇きを癒すのは嫌だよ……」

「そういえば、市内の駅前にあご出汁とかの自販機あったよね。飛び魚が500のペットボトルにまるまる一匹入ってるやつ。他には味噌とかも売ってたかな?」

「ああ、あったね、市内に何台かそんな自販機あった気がする。買った事は無いや」

「こっちに遊びに来た他県民とかが間違えて買って飲まないかしら」

「いや、流石に間違えないでしょ……千円くらいするし」

「めっちゃ喉乾いてて商品見る余裕もなけりゃワンチャンあるかもしれない」

「TikT◯kだかでふざけてやる人ならいるんじゃないかな……そこまで面白い映像でも無いけど」


カランカラン……


開いた窓に吊るした風鈴が揺れる。

学園祭デート中に買った、どこかの部の手作りのやつだ。

スズランの可愛い形をしたやつ。


「てか、なんだか今年の夏、長過ぎね?」

「え、そうかな。こんなもんだと思うけど」

「一年以上夏、してる気がする。エ◯ァみたいにいつの間にか一年中夏になった?」

「気のせいだと思うけど……」

「そりゃあ夏続いてくれればの水着イベントは増えるだろうけどさ、有り難みも薄れるよね」

「よね、と言われても」

「え、待って。そいえばまだ君の水着姿見てなくね?」

「嫌な予感してたけど気付いちゃったか……」

「次のデートは無人島でケッテーだね。そのまま一週間くらい遭難して俗世から離れようぜ?」

「んー……私は構わないけど」

「ノリが良くなったなぁ」


コクコク……

カヌレはルイボスティーを口につけ、コクコクと喉を鳴らす。

コップをコトンとテーブルに置いて、彼女はフー と艶っぽいひと息。

電気もつけず、僕らを照らすのは赤い夕暮れのみ。

外ではリリリと虫の声。


「さて。どこから話そうか」


本題に入るらしい。

赤い陽に照らされた顔からは覚悟が滲み出ている。


「なんの話?」

「さっきアマンが口を滑らせた件の、だよ」

「なら、僕は君の生まれた日から知りたいな?」

「流石に戻り過ぎ……いや、ざっくりなら、それもあり、かな。話題が話題だから、ふざけてるようにしか聞こえないと思うけど」

「よし、信じた」

「まぁ聞いて」


ピンポーン……


と、ここでインターホン。

ピザの配達だろうけど、早いな。

店の場所が近いってのもあるけど、十五分は理論上最速値だ。


「ま、食いながら話そうや」


と僕は立ち上がり、玄関へ。


ガチャリ


「まいどー、ピザ屋でーす」

「おや?」

「えっ? ここって……ウカノ君ちだったんだっ」

「元メスガキじゃないか」

「メスガキ……?」

「違った。モブガールAちゃんじゃないか」

「私Aなんだ……」


ピザー屋の赤い制服を着た少女。

声が中まで聞こえたのか、カヌレも玄関まで来る。


「なんだ、翡翠か。いつの間にピザ屋のバイトなんて始めたんだ」

「普通にカヌレもいるし……店長が知り合いでね、時給が良いから始めたんだよ。ちょっと欲しいものがあるって目的だから短期のだけど」

「あの学園祭に来た野郎の誕生日が近いからだろモアちゃんよぉ?」

「ぷ、プレゼント買う為にバイトしてるんだろって? 違うから! ってかモアって誰!?」

「モブガールAだと長いから」

「モアイみたいだな……普通に名前で呼んでよ」

「どうするモアちゃん、君も僕らのシリアスな会話に参加する?」

「なんで!? 巻き込もうとしないでよっ」

「今ならピザ付きだぜ?」

「私が持ってきたヤツ!」

「カヌレ、この子が聞いても大丈夫な話?」

「うーん……まぁ、翡翠は『色々見てる』から大丈夫、かな?」

「そこは拒否ってよカヌレ!」


モアちゃんを引きずってリビングへ。

ピザやらチキンやらポテトをテーブルに置き、コップを一つ追加、お茶を注ぐ。


「まーまー座って座って」

「えっと、これ麦茶? 烏龍茶?」

「出汁じるかもしれないよ」

「君なら出しかねないな……てか部屋暗くない? 電気は?」

「雰囲気作りに暗いまま進めるよ」

「帰りてぇ……ねぇ、ホントにこれ、私が参加していい流れ?」

「モブのガヤ的な反応も欲しいからね」

「面白い反応期待しないでね……?」

「よっ、カヌレ、面白い話期待してるよっ」

「そういう話じゃないと思うけど……」

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