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15二人のサキュバス

「え?」


言ってる意味が分からない、と言いたげなカヌレのポカンとした間抜け面。


「逆に、昼も夜も美人さんと過ごせて男にとって不都合、ある?」

「び、美人さん……(照れ)って、ほ、ほだされないよっ。それっ、凄い不誠実じゃないのさっ。倫理観は無いのかっ」

「倫理観んー? 不誠実ぅー? はんっ、まさか淫魔に道徳を諭されるとはねっ。そんな形の無いモノこそ、繁殖繁栄を本能とする生物として不要なモノさっ」

「こ、コイツ、魔王みたいなこと言い出して……そ、それなら、今のこのどっちつかずな関係の事、カヌレに言えるのっ?」

「勿論言えるさ。どっちつかずとかじゃなく総取りだけどもね。まぁ家にサキュバスが居るなんて言ったらそっちのが困惑されそうだけど、カヌレなら理解してくれるさ」

「ぐぬぅ……は、繁殖だのなんだのって君がそんな考えならっ、女の子の方の浮気も認めるって事だよねっ?」


「いいわけねぇだろ。僕だけの子供をポコポコ産ませるつもりだが?」


「強欲!」

「他の雄に良い思いをさせない、繁殖を妨害させるって考えも自然で本能的なモノさ。それともアンドナ、何かい? 今現在、『僕以上の男』が居てそっちに『男を教えて貰いたい』って気持ちでもあるのかい?」

「……居たとしたら?」

「どっちもコ◯ス」

「バイオレンスだよ!」

「言ったろ? 他の雄の繁殖排除も本能って。その対象は雌も含まれるよ。仮に一度僕の手元にあったのがホイホイ別の雄の元へ……ズタズタにされたプライドと同じくズタズタに◯ロスしかねぇな?」

「猟奇的だよ!」

「なんて、嘘嘘(笑)そこまで小さい男じゃ無いから(笑)好きな男が出来たなら君の自由にするがいいさ(笑)そのかわり二度と僕の前に現れるなよ淫魔(笑)」

「目が笑ってないし最後罵倒みたいな本音漏れてるよっ。居ないから! 他に気になる男の人なんて! ウカノ君一筋!」

「ほんとお? 僕が脅したみたいになってなぁい?」

「無い無いっ。本音っ」


それを聞いた僕は、ギュッとアンドナを抱き締める。


「はわっ!? な、何を突然……」

「でも、ホントに好きな人が居るんなら、気遣わないでね。実際、君は一切、僕に素性を明かしてないんだから、いつでも僕の前から消えられるんだよ」

「そ、そんな事……しないよ……君の前から消えるわけ、無い。だから、そんないぢわる言わないで」


ギュッ

力強く抱き締め返すアンドナ。


「ふふ、それを聞いて安心した。僕が君にいぢわる言うのは、全部君の事を思って、だからね?」

「ぅぅ……まるでDV彼氏みたいなアメとムチ……」

「おっと。勘違いしないでよ? 節操無しみたいに思ってるかもだけど、僕の人生で興味を持った異性は『今の所』カヌレと君だけだぜ?」

「ど、どーせ、そのカヌレって子と同じ顔だからでしょ、もぅ」

「拗ねるなよー」


ギュッギュッ ギュッギュッ


「ふむ。抱き締めてるのにそれに割り込んで邪魔するように阻む君の弾力性ある大きなお胸……哲学を感じるね」

「こ、コラッ! どさくさ!」


バッと離れるアンドナ。


「も、もうっ、真面目な話してたのにっ」

「僕はずっと真面目だが?」

「君は存在が不真面目なんだよっ。……君の考えは分かった。私を真剣に見てくれてる、って判明したから取り敢えず納得してあげる。


……でも、そのカヌレって子はどうなのかな?」


「むー?」

「だって、今まで節点無かったのに急に接近して来たんでしょ? 色々怪しくない? 同じアパートってのもおかしいっ」

「不法侵入者が何言ってんだ」

「そ、それはそれっ、これはこれっ。その子、ホントに恋愛感情で動いてるの? ウカノ君の一方通行じゃないの?」

「恋愛感情も無いのに何かの目的で僕に近づき誘惑してくるカヌレか……彼女の心情を考えるとそれはそれで興奮するね……そんなカヌレも僕は受け入れるよっ」

「変態! 器が大きいってのとは違うよっ」

「お前を受け入れてる時点でそれは気付いとけよ。それとも今から君を受け入れられない狭量でまともな僕に成ろうか?」

「そ、そんなのウカノ君じゃないよっ」


ムギュっと、アンドナは僕の腕に抱きついて、


「さっ、買い出し行こっ」

「そういえばそういう目的だったね」

「ちゃちゃっと作れるマーボーとかどうかな?」

「えー、またー?」

「そうだっけ?」


僕達は再び歩き出す。

アンドナが抱えていたモヤモヤは殆ど答えてやった筈だから、もう立ち止まるような障害は無いだろう。

僕に至っては、さっきも言ったように、カヌレやアンドナが『何かを隠して』いようと気にしてないし。


「でもウカノ君、ホントに気を付けてね? 女はみんな『女優(嘘付き)』だから」

「なんのこっちゃ」



アンドナのポエミーな注意喚起に取り合わなかった僕。

しかし、この時彼女の言葉を真剣に聞いていれば『あんな事には』ーー

なんて事は、特に無く。

この先も僕は、自分のやりたいように物語を進めていった。

ああ、そうそう。

少しこの先のネタバレを。

多分、アンドナの言いたかった事とは関係ない展開だろうけどーー


翌日の事。


「で、カヌレ。あの眼鏡とセーラー服姿は変装兼オシャレ?」

「あ、あのっ……私は……【わらび】です。カヌレは、私の『双子の姉』で……」


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