130 お嬢様とおねショタ妖怪
今日は休日。
サキュバスとモーニングを済ませた後、手ぶらになった僕。
姉妹の家に行くと、妹のわらびちゃんがVRホラーゲーム実況をしていた。
いつもと違うキャラを見せられ、興奮する僕。
当然凸。
「初めての方もいると思うんで自己紹介をっ。普段は『植物園グリーンボックス』の広報やら公式チャンネルで色々やってる【ノウカ】ですっ。くずもち先生とはお友達なんですよー、ねっ?」
「……まぁ、そういう事で」
「そういう事なわけでっ、先生の家に凸しちゃいましたっ。サプライズコラボですっ。協力プレイ頑張りましょうっ。このゲームがマルチ対応で良かったですねー」
「私はソロ攻略したい派なのに……」
因みに、視聴者の反応はというと……
『おお! 先生が初のコラボ!』『しかも相手はあの食人植物の異名を持つ精霊ノウカちゃん!』『子供が見られない放送になっちまうー!』
「おいおい、僕ぁどんなイメージを持たれてんだい?」
「御覧の通りでしょ……」
「ま、いいや。さ、ゲームゲームッ」
VRゴーグルを装着し、いざプレイ再開。
視界一杯に広がるゲーム画面は、その世界の登場人物と錯覚させる。
コンテニューは彼女がおっ死んだ所から。
目の前には、帽子を被った八尺(250センチほど)はありそうな長身白ワンピース女性。
元ネタは有名なアノ怪異だろうが、彼女を倒すボス戦か。
場所は田舎の日本家屋の庭。
怪異は ぽぽぽぽ と呟きながらゆっくり迫って来る。
プレイヤーは基本手ぶら、特殊な家の出自でもない一般人で、特殊なカメラや銃などの武器もなく、その場に都合よくあるおフダやら口裂け女に対するポマードのような撃退ルールを見つけて怪異を排除する流れ。
「八◯様に勝った逸話なんてあったっけ? 確か原作? でも戦略的撤退よね」
「……どうだったかな。一時期ファンアートがネット上で増えて子供好きのお姉さんと化してたから、それで恐怖のイメージが薄れて弱体化したと思うけど」
「つまり弱点は彼女自身のエッチなイラスト……? このステージにPCかスマホがある筈だっ、探せ探せっ」
「そんな撃退条件な訳ないでしょっ、全年齢向けだからこれっ」
「むっ、スマホが落ちてたぞっ。VRだから拾い難いな……よし拾ったっ。アプリでTwitterらしきものを開いて……ほらっ、八尺様イラストあったっ」
「なんであるの……ギリ全年齢でいけるような水着イラストだし……」
「くらえー!」
スマホの画面を向けると、◯尺様は ぽぽー! と赤面し、霧のように消えてしまった。
「おー、ドンピシャだねぇ」
「ホントに倒しちゃったよ……これが正規ルートなの」
「どうだろ? 結構ステージには色んなアイテムが落ちてるからね。大抵が選択肢を増やして負けさせる為のフェイクだろうけど、正規の攻略法もあるんじゃない? つまり、僕らがやったのは隠し撃退法だっ」
「(ティロン)あっ……『小さい子が大好き』……変なトロフィー獲得してるのを見るに、確かに隠し撃退法みたいだね……」
「ウェーイ、次行くよー。今度の女の子の怪異はどう辱めて倒すんだろうねっ」
「そういう敵ばかりじゃないと思いたいけど否定出来ないな……」
その後も……凡ゆる怪異が僕達に立ち塞がる。
蛇巫女、お札を顔に貼った着物の女性、クネクネと蠢く女の怪異などなど。
有名所の和製ホラー話を、神社や田んぼなどの多種多様なステージと攻略法で倒す構成は、僕には新鮮で、普通に楽しめている。(フリーゲームでは結構あるけどVRゲーという意味で)
そして……
「しゃあっ! 倒したー。まさか、ラスボスが地球を調査にやってきた宇宙人とはねー」
「やっぱクソゲーだった……」
「そうかなぁ? 君はクソゲー扱いしてるけど、僕はこういうB級映画みたいな感じ、嫌いじゃないよ」
海外製らしいけど声優含め日本語対応してるし、田舎の日本という文化も理解してるし。
「だからぁ、私がしたいのは純粋なホラゲーであって、ネタゲーとかバカゲーじゃないの。結局、最後まで裏仕様な攻略法ばっかりでクリアさせられたし……」
「これも裏エンドじゃない? 全部裏攻略でボス倒す条件のさ。最初から普通の倒し方すればネタゲーじゃないホラーなノーマルエンド見られるかもだから頑張れ」
「もうやる気起きないし……終わり終わり」
スタッフロールの途中でゲームを落とすわらびちゃん。
それから、カポリとゴーグルを外す。
「ゲーム終わりぃ?」
「終わり。配信も終わらせるから」
「えー。お絵描き配信してよー、君がお絵描きしてるとこ見ーたーいー。ねーみんなー?」
それなー、と同意するコメント群。
「ほらほら、ちょちょいと描いてよ、簡単でしょ?」
「それ絵描いてる連中が一番ムカつくセリフだからね?」
「内容は、僕らが向かい合って手組んでイチャイチャしてるやつでっ」
「コイツ……変な切り抜き動画作られなきゃいいけど」




