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104 会長(?)とサイコパス

学園祭夜の部。

ママンがグラウンドのステージで自身のチャンネルの生放送を始めた。


今は、マシンガンのようにタネを飛ばす植物の紹介中。


『皆さん、この程度で驚いてはいけませんよお? メガテッポウウリの脅威度はCランク! 異世界の森での強さは下の方です!

近付いた獲物を種で貫き! その死骸を栄養に育つ! ……のですが、多くの生物はこの種飛ばしを苦にしないという事です!

……さて! 次の植物はこの子! 【ヨイゴシアオイ】!』



「あのママン見てみ? してやったりって顔だぜ? 性格悪いなぁ。人を驚かせるのが趣味みたいな人だからなぁ」

「似た者親子だね……」

「失礼な、僕は特定の子のみを楽しませる目的で動いてるんだぜ? 好きな子にだけ意地悪するような少年さ。興味の無い相手の反応見て何が楽しいんだい」

「まず意地悪をやめようね……」

「ま、例外があるとすれば妹のセレスかな。あの子は僕の分身だから何してもいいと思ってるよ。ママンさえいなきゃ、僕があのステージに上がってセレスをアゴで使いたいぜ」


ボボンッ!!

むっ、殺気!

パァンッ!


……掌に衝撃。


「ふぅ。あんにゃろうセレスめ、お兄ちゃんに向けて『撃って来やがった』」

「だ、大丈夫!?」

「うむ、ナイスキャッチ」


ぬめりとした(鶏卵大の)メガテッポウウリの種が、僕の手の中に『二つ』。

スーパーマンな僕じゃなく、普通の相手だったら部位破壊してたぞ? とセレスを睨むと、プイッと顔を逸らしやがった。


「これだけ離れてるのに、さっきの小言が聞こえたか? 地獄耳め(パクッ むしゃむしゃ)」

「え? その種食べて平気なの……?」

「平気どころか美味しいよ? 長野名物のおやきとか肉まんとかピロシキみたいな食感と味するの」

「どれも似たような食べ物だね……」

「昔はよく、セレスと外で遊ぶ時は決まって、メガテッポウウリを見つけては棒で突ついて種出させてオヤツ代わりに食べてたなぁ」

「恐ろしいクソガキどもだ……一応確認するけど、プランさんの植物園は出来てまだ数年だよね?」

「んー? ああ、そういう。遊んだのはママンの『実家近くの森』だよ、正確な場所は知らんけど」

「適当だなぁ……」

「因みにこれ、めっちゃ毒あるらしいぜ。まぁベニテングダケの旨味成分イボテン酸しかり、毒は旨味っていうしな。食べるかい?」

「いや、君ら兄妹ほど胃が丈夫じゃないからいいよ……ベニテングダケも、食べる時は相当大変な解毒処理するらしいよ……?」

「なんか煮てる時の蒸気も吸っちゃだめとかだよねー。僕は普通に焼いて食えたけどなぁ……ん? ああん? オメーら(周りの客)何こっち見てんだ?」

「脅さないのっ」



『ハイハイ! 皆さんそちらの可愛い子を見るのもいいですけど、再びこっちに注目して下さーいっ、次の植物の紹介ですよーっ。

……さて皆さんっ! この白くて可愛いお花【ゴジアオイ】をご存知ですか? 主に地中海沿岸、ヨーロッパなどに分布するお花でしてー』


と、その時だ。

ヒュッ カラン

……不意に、ステージの上から、小気味の良い音。

犯人は、木の【ドリー】だ。


樹冠から、バスケットボール大のタンブルウィード(西部劇の映画で見るようなコロコロした枯れ草の塊)みたいなのを飛ばし、ママンとセレスの側に落とした。

ただ、実際のタンブルウィードは軽いんで、あのような硬い音はしないだろう。


ヒュッ ヒュッ コロン カコン


続けて同じようなモノを二つ飛ばすドリー。

その三つの塊は、すぐにメキメキと蠢き出して……

ズモモモ……!!!

一瞬で、二メールはあろうかという『人型』に成った。

全身、木の枝を寄せ集めて作ったような怪人。

この事態にざわめき出す観客達、だったが……


『わっ、皆さん! 異常事態発生です! あからさまに怪しい怪人さんがやって来ました! このままでは危険です! 皆さん我々に勇気の声を!』


「がんばえーセレスたーん!」「まけないでー!」「俺も討伐してくれえええ!!!」


ショタや幼女、女生徒や野郎どもの野太い声が入り混じるカオスな声援を受け、セレスはもう帰りたそうな顔だ。

因みに分かっていると思うが、この襲撃イベントも仕込み(やらせ)である。


『おっと、私とした事がっ。見た目で怪人と判断してはいけませんね! 友好な子達かもしれません! 怪人さん! 友好の証としてこの【ヤシの実】を受け取って下さいっ』


シュパ!


『ああっと! 繊維だらけでガチガチに硬いヤシの実が怪人の触手一振りでいとも簡単にカッティングされたぁ!

これにストローを立てれば立派なヤシの実ジュース! 怪人さんは敵意満々だぁ!』


ノリノリなママン。

ヤシの実を受け取ってゴクゴク飲み始める隣のセレス。

ジリジリと寄って来る枝怪人達。


……ふと。


いつの間にやら、両者の間には【一輪の白い花】が咲いていた。

ゴジアオイ。

正確には、ママンの言うところの異世界版『ヨイゴシアオイ』だ。


見た目は普通のゴジアオイと同じ、小さく可愛いお花だが……違いをあげるなら、線香のように『白い煙』が出ている所。


それは、嗅いだ者を引き寄せる芳香。

あの枝怪人らも例に漏れず、一人(?)がふらふらとヨイゴシアオイに近づいて行き、花弁に手を伸ばして……


ボワッ! 燃えた

自身ごと、相手を巻き込んで。


『見て下さい皆さんっ! コレがヨイゴシアオイです!

可愛らしい見た目な儚い存在……と思うのは早計です!

確かに『本来の』ゴジアオイは一日だけしか花を咲かせられない『一日花』という宿命を背負っています……が!

この花、またの名を『自殺花』!

一部ではサイコパスと呼ばれる程に自分勝手な花で、条件が整えば今のように発火するのです!』


『原因は、茎から出る揮発性の油!

35度以上の『気温』で自然発火します!

海外では山火事の原因として問題視されるほど!

因みに、コアラが大好きなユーカリも似た特性を持っていて、テルペンという引火性の成分を放ち度々山火事を起こしています!』


『おっと皆さん! もし日本に咲いていたら……と不安ですよね?

大丈夫です! ゴジアオイは高温多湿に弱いので、日本では群生が難しいのです!』


『話を戻しましょう!

ゴジアオイは山火事を起こし自らも燃えた後、その場に種を遺します!

その種は耐火性を持っていて、火事に巻き込まれた周囲の植物の灰を栄養にその後育っていくのです! なんと自分勝手!

サイコパスと呼ばれる所以です!

しかしそれこそが残酷で美しい弱肉強食な野生の世界!』



「まぁ今のママンのゴジアオイの話、全部『嘘』なんですけどもね」

「え、そうなの?」

「嘘っていうか真意不明、かな。確認された例は無い、って意味でね。

確かにゴジアオイは油分が多くって香水に利用されたりはしてるよ?

でも、山火事の原因の殆どはユーカリだ。ゴジアオイは近くに咲いてたって理由で混同されてる気がする。

第一、花言葉が『明日私は死ぬでしょう』だよ? 出来過ぎな話だ。まさに日本人が好きそうなロマンチックな設定ね」

「ロマンチックかな……」


まぁ、本家のゴジアオイの話は盛ったモノだとしても、あのステージに咲く『ヨイゴシアオイ』に限っては、話は別だが。


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