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95 会長(?)とカキ氷

恋愛神社に参拝に来たモブガールBさんに『恋愛相談お受けしますよ?』と提案したら逃げられました……失礼ですねー。


「彼女の恋のお相手、気になりましたのにー」

「とんだ神主も居たもんだよ……しかし、『こんな所』にまで来るほどだ、余程切羽詰まってるのかもしれない。『翡翠』にも内緒で一人で来たんだろうし」

「翡翠? 誰? どこかで聞いた名前……う、頭が……触れちゃいけない気がする……!」

「どしたの急に? あ、因みに君がモブモブ言ってるさっきの彼女の名前は」

「ええいやめろっ。モノに名前を与えると意味が生まれるんだよっ。モブはモブのままにしておけっ」

「君のその拘りはなんなの……?」


呆れ顔の彼女は見慣れたものだ。

寧ろ呆れ顔しか見てない気がする。

動揺して崩れたキャラを直したのち、彼女を楽しませよう。


「ほらほらカヌレさん、モB子さんの事は忘れて笑って下さーい(コチョコチョ)」

「ちょ、急に何を……そ、そういうので笑わせるのはノーカウントっ、心から笑わせたいのなら大人しくしててくれっ(ペシッ)」

「ああん……一日しか無い学園祭だというのにー。しかし貴方がそれを望むならば一〇分くらいなら大人しくしますねー。マグロなら死んでますよー」

「陸を泳ぐマグロが居たら恐怖だろうね……サメなら知ってるけど」


プープペー

……どこぞで演奏会でもしているのか、吹奏楽部の頑張りが聴こえてくる……聞き覚えのあるアニソンなりゲーム音楽もチラホラ……普段は気持ち悪がられる曲も、こうして演奏して貰えたんなら違和感無く夏の甲子園で流せそう。


バッシャーン

……この水音は屋外プールの方かな? そういやまだ行ってなかった……水着イベントとかあるのかい? あっ、でも男子のシンクロ披露とかだっけ? なら行かんでもええか。


デワハッピョーシマスッ

……んー? この遠くから響くマイクの声、どこぞで美少女コンテストでもしてるのか? なら優勝は『いま会長をしている彼女』しか居ないだろう。


はぁ……自分が何もしてなくても世界は回ってるんだなぁ……ゆったりした時間だなぁ…………はぁ、あづい。


「のんびりしていると、木陰とはいえふとした時に夏のジリジリとした暑さを意識してしまいますねー。全く、こんな陽の光を集めやすい黒くて長袖な修道服を着せられるとは……」

「責任転嫁甚だしいよ……」

「ふー(パタパタ)」

「スカートをパタパタしないっ。正面から(見ればパンツが)丸見えだよっ」

「誰にも見えませんしー。それに、野郎のパンツ(女物)に需要などありますのー?」

「君に限ってはあるから問題なのっ」

「見える、というなら貴方もそうではありませんかー? (グィー)」

「ッ! 体を傾けて堂々と人のを覗こうとしないっ(サッ)」

「おー、さすが、おパンツ隠しは淑女の嗜み。手で隠す姿が堂に入ってますねー(ジー)」

「待っていれば諦めて手をどけるなんて思わないでよっ。ほらっ、戻った戻ったっ」

「(グィー)よいしょ。ふぅ……しかし、夏なのにニーソとか正気の沙汰じゃありませんねー、よいしょ(脱ぎ脱ぎ)……これでスッキリですー(足の指クパクパ)」

「はしたないなぁ……」


ニーソを脱いだはいいが、それでも夏の暑さは容赦が無い。


「はぁ……動いてなくても汗をかきますねー(首元パタパタ)汗くさくありませーん?」

「え? ああ、全然。寧ろ……」

「寧ろ?」

「い、いや、なんでもない」

「A くさい方が興奮する B 良い匂いがする C 私がくさくてゴメンね どれ?」

「く、くさく無いから私っ! ……ないよね?」

「(クンクン……スーハースーハー)ンフッ、好きな匂いですよー、汗と混じって濃厚ですー」

「どっち!? ああもうっ、汗拭きシート持って来る!」

「くさくないですってー。そもそも香水とか柔軟剤とか、くさいくさくないなんて基準は人それぞれでしょー?」

「なんの話だっ、やっぱり君の嗅覚は信用ならないよっ」

「私の匂いのフェチズムは理解され難いかもですねー。濃厚なのが好きな貴方と同じですー」

「何も言ってないのにどんどん属性盛っていかないで……と、兎に角、せめてブレザーだけでも脱がせて貰うよ、普通に暑いし(ヌギッ)」

「プルルンッ たゆゆんっ」

「変な擬音付けないで……」

「胸元もキツいでしょー? ワイシャツのボタンも半分まで開けてみてはー?」

「無理やり着せた後は隙あらば脱がせようとして……ま、まぁ、首元くらいまで開けるよ、キツいのはホントだし」


彼女が一つ二つ首元のボタンを開けると ムワリ 風が運んだ甘く濃い匂いに意識がクラリ。

全く……コス通り恐ろしい淫魔だぜ。

妥協して少しだけボタン開けたんだろうけど、首元の肌がチラリと見えるくらいじゃ僕が興奮しないだろうって?

そりゃあ自分を過小評価し過ぎだ。

長袖にも半袖にもズボンにもスカートにも全裸にも下着姿にも、それぞれのエロスがある。

上も下も無い。

つまり何が言いたいかというと……この女、僕の前でエロい格好するとか誘ってやがるな?


「ふんすふんすっ」

「なんで急に鼻息荒く!?」

「汗でワイシャツがしっとり濡れてますねー、ちょいスケですー」

「くっ……どこ見てるのっ(胸を隠す)」

「ワキー」

「予想外すぎるっ」

「っと、やらしい視線が露骨過ぎましたねー。夏の暑さで少し思考回路がショート寸前だったようですー」

「平常運転に見えたけど……」

「お互い頭を冷やす、という意味で、【かき氷】でもどうですかー? (スッ)」

「いや何であるの……隠してたにしては大して溶けてないし……」

「ふふーん、動物ちゃんにおつかいをお願いしてたんですよー。タイミングバッチリでしたねー(ポンポン)」

「あっ、そんな所(木の陰)にクーラーボックスが……一体なんの動物がカキ氷屋に行ったのか……」

「味のチョイスはその子に任せてますからねー。……おっ、見てください、デートにピッタリなチョイスですよー」

「……色的にブルーハワイとメロンだよね……配慮とは?」

「うふふー、まぁ食べましょうかー」

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