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94 会長(?)と恋愛神社


そんなわけで辿り着いたのは……二度目の屋上。

行き方は特設の校舎裏階段からではなく、校内から屋上への正規ルート。


扉を開けると ゴッ 何かとぶつかる。

この硬くも柔らかくない感触……(僕がここに持って来てその後ママンがこっち側に移動させた)木、だ。


「あらー、ごめんなさいねー『ドリー』ちゃん。痛くなかったー?」

「……木に『その名前』を付けたんですか?」

「はいー。木の精霊ドリアードをもじったんですよー。『知り合い』に同じ名の子がいるのですが、その子もよく動く植物さんでしてねぇ」

「普通の木は動かないと思いますが……というか、いつまでそのキャラを続けるつもりで?」

「この格好をしている間は、ですー。貴方こそ、二人きりの時は カヌレに戻って良いんですよー?」

「あ、ああ、そうだったね。癖になってたよ」


扉を半分まで開け、その間からスルリと抜ける。

わらびちゃんは胸の分つっかえて苦労していた。

ぐにゅりと潰れる胸もまた良き。


扉を抜けたすぐ先にあるのは祠の裏側だ。

二人分の体を隠せるくらいは広い外壁がある。

僕らはその外壁に背中を預け、座り込んだ。

場所的にドリーの木陰。


…… ザワザワ ガヤガヤ

ジャラジャラ パンパン ……


表側の賑やかさがこちらまで伝わってくる。


「大盛況ですねー恋愛神社。一人でも迷える子羊の助けとなっているのならば嬉しい限りですー」

「多くの者を迷わせている当人がそれを言うとマッチポンプにしか聞こえないね……いつもの事だけど」

「お賽銭箱の中身は神へのお恵み。大切に使わせて貰いましょー」

「先ほどの袴姿でそれを言うならまだ分かるけど、今の修道服姿は神社とはミスマッチ過ぎるよ」

「雰囲気作りにガラガラ鳴る鈴も付けておけば良かったですねー」

「それは別にいいんじゃないかな……どうせ『なんちゃって』神社だし」

「信仰が集まればそこはすでに『なんちゃって』ではなくなるのですよー」

「本格的に教祖とか目指し始めないでよ? 君の場合、実現出来そうで洒落にならないから……」

「はてさて、子羊の皆さんはどんなお願いをしてるんですかねー。下界(下々)に目を向けてみましょうかー」

「神気取り? 正体現したね……」


「なむなむ……恋愛の神様……箱庭ウカノとカヌレ会長を引き離して下さい……」「会長は騙されています……」「あとセレス書記と付き合わせて下さい」


「(スッと立ち上がり)うふふー、神代雷かみのいかずちを落として差し上げましょー」

「(ガシッ)沸点低すぎでしょ、神話に出てくる理不尽な神か」

「愚民には天罰が必要な時もあるんですー、選民ですよー、手を離して下さーい」

「取り敢えずその十字架は仕舞って座って」


「……でも最近、カヌレ会長綺麗になったよな?」「より一層、な。認めたくないが、恋する乙女はなんちゃらってやつか……くそっ、会長の幸せも願いたいのに肝心の相手がっ」「毎日スケベな事して綺麗になるホルモンドバドバ出してるのか……くそくそっ(ハァハァ)」


「(スクッ)ふぅ、全くー、今回は許してあげますかー」

「へ、変な誤解されてる……」

「しかし、恋愛成就を願うのも別れを願うのも、全ては本人の努力次第ですのにー。愚民はすぐに楽な道に行こうとしますねぇ」

「……その若者の浅はかさ狙いで恋愛神社を建てたのでは?」

「ここまでとは思いませんでしたのー」

「まぁ、日頃の行いによる正当な周りの評価という事で諦めてくれ。反省はしないだろうけど」

「反省するような行動、取りましたっけー?」

「君はそういう奴だよ……」

「おっ? 次のお客さんが来たようですねー」


パンパン 表の方から拍手が聞こえる。

むっ、ピンと張り詰めたこの空気……悪ふざけとかネタとかじゃない真剣ガチ味を感じた。

気になった僕は、ひょっこりと祠の上から顔だけ出し、参拝客を覗き見る。

(補足しておくが、参拝時、祠の前やその周囲に居られるのは一人や一組ずつとしている。他の客は前の人の願掛けが終わるまで鳥居の前で待機)


「ナムナム……姉さん……幼馴染み……アイツ……(ブツブツ)」

「(ヌッ)あらー? 貴方はー」

「え? その声……もしかしてウカちゃん?」

「うふっ、シスターウカと呼んで下さいなー、モブガールBさん?」

「私Bだったんだ……別にいいけどさ。てか、なんで『目瞑って』んの?」

「うふふー、おっとり系シスターには『薄目キャラ』が多いでしょー?」

「強キャラタイプの薄目にしか見えないよ……開眼したらヤバそう」

「武器は体ぐらい大きい十字架ですよー」

「いるいるそういうキャラ! ってのはさて置いて……今更だけど、そんな裏側にいるワケは?」

「わらびさんとイチャつく為ですよー」

「(ボソッ)こ、こらっ、何言ってんの……!」

「うわぁ……悩みを抱えた人が参拝する恋愛神社の裏でシスター服プレイとか……ホント怖い物無しだね君達。そこにわらびが居るの?」

「今『顔を出せない状況』でしてー」

「見えないとこで絶対変な事してるよ! エロシスターめ!」

「(ボソッ)だから変な事言わないで……!」

「さて……それよりも子羊さん、何やらお悩みがあるようですねー? これも何かの縁。シスターが懺悔をお話聞きますよー?」

「や、やめとくよ。絶対話ややこしくなりそうだし……てか懺悔って」

「神の御加護もありますよー?」

「そんな通販番組感覚の抱き合わせ商法みたいに言われても……」

「今なら特製の【惚れ薬】もつきますよー?」

「効き目凄そうだけど絶対ロクなオチが待ってないやつ!」

「もうつべこべ言わず言いなさーい? (スゥ)」

「ヒェッ! このタイミングで半目見せないでよっ」

「(ペロリ)」

「なんで舌舐めずりしたの!? 無理矢理口を割らす気!?」

「好きな殿方が居るんですよねー? わかりますよー、恋する女の子は匂いでわかりますー、海っぽい匂いするんですよー」

「ぅぅ……なんかそれっぽい事言ってて恐ろしい……ち、因みに、私の事じゃないけど、参考までに聞くけど……好きな異性と結ばれる為の最善の行動は……?」

SEXっちまえばいいんですよー」

「身も蓋も無い!」

「ふざけた答えではありませんよー? ようは相手の心を自分で満たすのです。一度でも身体を重ねてしまえばー、罪悪感なり使命感なりで貴方の事ばかり考えるようになりますよー?」

「そ、それは……流石に力業とゆうか……ピュアじゃないとゆうか……き、君らみたいな爛れたカップルを基準にしないでっ」

「(ボソッ)巻き込まないで……!」

「高校生なんてみなリビドーに従ってるというのにー……もしや、そのシチュに持ち込んだ後が不安ですかぁ? 特別に手解きしますよぉ、わらびさんと共にぃ(ペロリ)」

「さんぴー!? ま、また捕食者の顔……わ、私じゃ二人の足引っ張るから! アブノーマルな初めては勘弁だからあああ!!! (ダダッ)」

「あらあら…………行ってしまわれましたねモB子さん。彼女の恋のお相手、気になりましたのにー」

「とんだ神主も居たもんだよ……」


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