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【七夕特別編】

ミーンミンミン ジージー ギチギチ


バシャバシャ キャッキャ ジュージュー


午前中は森でカブトムシやセミなどの虫取り、川で水浴びやバーベキューなんかを楽しんだりして……


夜。


「ふぅ……やっぱり田舎は星が綺麗だねぇ。リーリーと鳴くスズムシや、リンリン揺れる風鈴がまた風流だよ」

「……ん。えっと、まず状況説明して貰える? どっかの田舎の家の縁側、ってのは分かるけど」

「あん? どしたん急に。今日は(箱庭家の)別荘のこの日本家屋に一泊しに来たんでしょや。『三人』で」

「はぁ、また唐突に……ん? 三人?」

「にーに?」

「えっ? この(ウカノの脚の間に納まってる)女の子……なんか『父の日』に見たような……?」

「そうっ。パパンの隠し子【コナシ】ちゃんだよっ」

「なんでまたじこしょーかい?」

「この子は定期的に記憶を失うんだよコナシ」

「変な説明やめて……」

「その様子じゃ君がビキニ(の日七月五日)着て川遊びしたり、明日町まで行ってナンパ(の日七月八日)しようって計画したのも忘れてそうだね」

「うん……てかちょいちょい変な間あるのなに?」

「夕ご飯はソーメン(乾麺の日七月七日)茹でてくれたり、そこにある夏の三種の神器【蚊取り線香、とうもろこし、スイカ】用意したのも君なんだよ?」

「なんか説明くさいな…………この子、と、君のお父さんは?

「こなし置いてどっか行っちゃった。わはは」

「あははっ、すてられたー」

「いや笑い事じゃないでしょ……ま、後で迎えに来るんだろうけど…………因みに、今日は何の日?」

「星の川を眺めながら男女の相引きを覗き見る日だよ」

「七夕、か。てか小さい子いるのに変な言い回しやめなさい」

「たなばたー?」

「うむ、いい機会だからこなしに教えてあげよう。むかしむかしー」


………… ……… ……


「すごーい! そこで【おりーめ】と【ひこーし】のふたりがあいのちからで【かぐやひめろぼ】をうちたおしたんだねっ。それでそれでっ!?」

「別作品のキャラ出てない……?」

「ああ。しかしかぐや姫の呪いは凄まじかった。二人に呪いを残したんだ。一年に一度しか会えない、という呪いをね」

「かなしー」

「一応軌道修正はするんだね……」

「それが今日っ、七月七日っ、七夕の日なのだっ。今頃天の川では二人がいちゃついてるだろうさ」

「でも、それだけあえないと『けんたいき』もありそう。あめのひはあえないだろうし、こいのねつも、さめるんじゃ?」

「リアリティーだな……」

「むぅ、そんな事気にしちゃダメだよコナシ。創作の世界に倦怠期は存在しないのっ。雨の日も宇宙だと関係ないのっ。愛は冷めないのっ」

「にーに、かわらないものなんてないの。こころもれいがいじゃないの。かわらない、なんて、それはもう【ろぼっと】とか【ぷろぐらむ】とおなじ」

「なんだとぉ? 少女漫画ならヒロイン(主人公)があっちこっち男とっかえひっかえするのは分かるけど、僕は男性向け作品の基準で話してるのっ。ヒロインに元カレ居るとか心変わりするとか経験済みとか炎上不可避だぞおいっ」

「幼女相手に何の話を……」

「えんじょーしようが、いちどくすぶったひがもどることはないの。そして、べつのひとにたいしてふたたびもえあがったひも、だれにもけせないの。まわりのこえなんて、どうでもいいの」

「こ、このガキ、父親のせいで恋愛観が歪んでやがる……!」

「血筋だと思うけどなぁ……」

「ええいっ、まだ恋を知らないガキが生意気言うなーっ(ホッペぐにー)」

「ふへー」

「へっ、ガキが……これが大人の力だっ」

「幼女に言い負かされて最低な手段取ってる……」

「兎に角っ。織姫も彦星もいつまでもラブラブなのっ。僕とアンドナもラブラブなのっ」

「流れ弾!?」

「にーに、これ作ってー」

「うーん、子供特有の(話題の)飽きやすさ。で、なにそれ? 幼稚園児向け雑誌の付録?」

「うん。【てづくりせるふれじ】だって」

「スゲェな……東◯テックコラボとかガチ仕様やん……商品のミニチュアもリアルだし、バーコードセンサー付きだし。幼稚園児向けとは?」

「今は小学生向けの少女漫画雑誌付録も、化粧品とかポーチとか本格的だしね……」

「『じーじ』が『おれにはつくるのむりだ』ってさじなげちゃって」

「パパンめ、面倒くさかっただけだな。よしっ、『森の賢者』と呼ばれたにーにの凄さ、見せてやんよっ」

「ゴリラだよそれ……」


……………… ………… ……


「キャッキャ、見て見てっ、値段の判定はランダムだけどちゃんとバーコード読むよっ」

「君が夢中になってどうするの……」

「へー! バックナンバー見ると、ゲーセンのメダルゲームとか、◯ら寿司とコラボした回転寿司マシーンもあるんだって! 取り寄せようかなぁ」

「そういうグッズは沼って聞くからあまりオススメしないけどね……」

「ほらほらコナシ、ちゃんと見てっ」

「スー……スー……」

「こ、このガキ、作らせるだけ作らせて寝やがった……舐めやがってっ、起こしてやるっ」

「寝かせといてあげなさい。一杯遊んで疲れてるんでしょ」

「母ちゃんみてーな事言いやがって。全く」


リー……リー…… サワサワ…… カランカラン……


「母ちゃんと言えば、パパン曰く、実はこの子『僕らの子供』らしいぜ?」

「…………は?」

「僕らの、というより、確定してんのは『僕の』、らしいけどね。母親は不明だけど……この『銀髪』と『紅い瞳』な特徴見るに、まぁ、三人の内の誰かって事だろうさ」

「……説明してくれる?」

「早い話が『タイムスリップ』だよ。アパートにある【祠】を介してね。去年の学園祭で、恋愛神社で使ったって言ったぢゃん? 祠の中には僕の髪の毛が入ってんだけど……アレが媒介になって、色々あって、結果的に、未来からこの子を召喚した形になった、だって」

「……いや、君のパパが自分の娘って言ってたじゃん。この子も、未来から来ただのなんだのとは一言も……」

「なんかタイムスリップの影響でこの子、記憶喪失らしいぜ? 憶えてるのは、(僕の)パパンを見て『じーじ』だって分かった事くらいで。取り敢えず父親代わりになってるみたい。コナシ自身も、僕や君を見ても今の所ピンと来てないみたいだね。懐いてはくれてるけど」

「……記憶喪失? ならなんで、タイムスリップ云々って分かるの?」

「さぁ。パパンやママンが調べた結果らしいけど」

「……子供……」

「あはっ、本気で信じてる? いつものパパンらの冗談だよ。記憶喪失がガチでパパンがその辺から拾って来た(年長さんくらいの)子だってんなら、警察案件だぜ? 普通にパパンの子供だよ」

「……それなら、随分とタチの悪い冗談になるね」

「だねー。けど、そこはこの子も付き合ってあげてんじゃない? 賢い子だし」

「……、……タイムスリップが本当なら、どんな目的で来たんだと思う?」

「んー? ノリノリだねアンドナちゃん。しかし、それは愚問も愚問だぜ? 未来から子供が来る展開なんて、『未来を変えに来た』って相場が決まってるじゃ無いか」

「……未来を、か」

「何が不満なんだろうねー。未来には僕らという最高のパパンママンが居るってのに、なぁ? ……おっ、見た? 流れ星だよ流れ星っ。願い事しなきゃねー」

「……………………『居たら』、ね」

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