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魔王の手帳  作者: Karionette
第三章 霊道
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訪問1


相手の方が頭がよくても


相手の方が足が速くても


相手の方が賞をとっていても


相手の方がでかくても


相手の方が武器を持っていても


相手の方が牙も爪も鋭くても




ぶち殺したら自分の勝ちだ


それを続けたら自分は人類に勝利するのだ






そんな考えを持った完全にぶっ飛んだ老人のところにこれから向かう。






敗北を許さないという言葉の本髄は勝利を獲れ。


人間だけでなく全ての生き物に対応させた考え方。




もともと武家である御堂家の言葉の意味はそうだったらしいけど、


ぶっ飛びすぎてるし、人間ばなれしてるし、現代的でもない。


隣にそれを真っ当に継承した女子高生がいるわけだけど。




負けないために秀逸になった薙くん。


勝つために生物的な勝利を求めた剣ちゃん。




なんというか。すごい兄妹だよな。








「ついたぞ」








車で2時間程度。


着いたところは、いやこれ刑務所じゃないのと聞きたくなるほどの壁に覆われた所だった。








「刑務所と勘違いしてる人多いけど、ただの家だよ。周りから見られたら色々困るからさ」








意気揚々とした剣ちゃん。




いやだ。もう正直帰りたい。こんなところ普通の人が入るべきじゃないって絶対に。


普通じゃないけど。僕も。








「銀髪。起きろって。着いたよ」








車の中で眠ったアカメさんをゆする剣ちゃん。




アカメさんが眠るなんて初めてのことだったんだけど、二人には言わないでおいた。


理由なんて簡単だ。人が休むのは体力回復のため。アカメさんも同じような状態なのだろう。


または、起きていられない程に弱っているか。








「。」








剣ちゃんの手が、ぶれて消えた。


背中が破裂しそうなほどの甲高い音が響く。








「つつつつ剣ちゃん!?」




「起きろ、バカ」








それ常人にやったら背中赤くなるじゃ済まないよね!?








「……」








ゆっくりと体を起こすアカメさん。




こんな仕打ちをされて苦言を吐くどころか、ぼんやりとしている。


むしろ当たったのが不思議か。いつものアカメさんなら。


それでもあの危険な刀は離していない。




アカメさんが何処か虚ろな目で言った。








「…お前、誰?」








言葉を失う僕、顔を引きつらせる剣ちゃん。




次の瞬間には更に速度を上げた手刀が走り、それがアカメさんの首筋に当たる。




…と思った。








「っっっっっっっ‼‼」










車を揺らすほどの頭突き。






アカメさんが、手に持った刀の柄に、頭が割れる勢いで、やった。








「俺、今なんて、言った……!?」




「……」








さすがの剣ちゃんも手をおろす。




誰も何も答えない。




一滴の血が額から流れ、アカメさんは苦笑を浮かべた。








「まさか、消えるって…そういうことなのか」








盛大に舌打ちをして、乱暴に扉を開けるアカメさん。




ずかずかと進むその背中にあるのは、悲哀でも恐怖でもない。




単純な、怒りだ。








「知っててやってんなら、誰が相手でも容赦しねぇぞ……‼‼」





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