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魔王の手帳  作者: Karionette
第三章 霊道
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御堂家1






御堂家




古くからある武家の一族




詳しくは知らないし、いろいろと謎に包まれた一家なんだけど、何の縁か、僕はその直系である薙くんと剣ちゃんと知り合い、そして彼らの家にいる。






何故かって?






早朝急にアカメさんが呼び出してきたからだ。










「サヤ。醤油」




(ソウ)、コップだしてくれる?」




「じゃ剣。醤油係は任せたぞ」




「兄貴、卵」




「ああ」










なんだろう。この一家。




目の前を醤油瓶が飛び、目玉焼きが浮いて皿に乗り、魚が乗った大皿が机に滑り込んで、割れやすいコップは投げるくせに熱いお茶は丁寧にいれる




……なんだろう、この一家。










「なにがごく普通の一般人だよ」










隣のアカメさんですら苦笑を隠せない。




家の見た目は普通だった。普通の住宅で、古式な屋敷でもなければ瓦屋根の一軒家ですらない。




赤い屋根の普通の家だ。








中身は別として。










「そんな固くならなくていいよ」




「固くというか、なんというか、驚いただけ」










隣に剣ちゃんが座る。




そして素早くご飯を並べていった。










「剣ちゃんもここで、その、こんな感じに育ったの?」




「いや。私はじいちゃんたちに育てられた。兄貴がいるからさ」




「……どういうこと?」




「歳離れてるからしょうがないにしても、兄貴に負けまくるのは教育に悪いからって」




「御堂家ならではってことか」




「まぁそうなるかな。あたしの性格を考えてのことでしょ、たぶん」










それならここは実質薙くんの家ということか。




となると、剣ちゃんと両親は不仲なのかもしれない。










「小僧ども。言っとくが剣はやらんぞ」










お茶を注ぎながらそんなことを言う御父さん。




うん。不仲なんてことはなかったらしい。










「やめなさい。子供たちが誰かを家に招くなんて初めてのことよ。

いきなり威嚇して気おくれさせるるようなことするのはやめて」










既に朝食準備で気おくれしてます。すみません。








朝食はすんなりと、そして意外と静かに行われた。




お父さんの槍さんからは時折強烈な視線を向けてきていたが、そのたびにお母さんのサヤさんから痛快なビンタが飛んで中止になっていた。




なるほど。母は強しの家らしい。










「それで?薙が連れてくるということはそれなりの人物ということなんだろう?」










お茶をずずずと音を鳴らして飲む槍さん。




歳は40くらいに見える。皺はあるが、精悍な顔つきをしている。




なんとなく、目は似てるかな。薙くん










「祖父へ会いに行きたい」




「……なに?」




「急用だ。取り次いでくれ」










親相手でも何ら変わらない薙くん。そしてわかりやすいほどの怒気をあげる槍さん。




待って。そんなにおじいさんって地雷なの?それならもう少しゆっくりと……










「なぜ、この、餓鬼どもが、爺どもと?まさか関係を?まさか、手前(てめぇ)ら、ほんとに剣と……」




「いや違います。説明させてください」








そして僕はゆっくりとなるべくわかりやすく事情を説明した。




なるほど。アカメさんが僕を呼んだ理由はこれか。




























「なるほど。あんたは寺育ちの霊能力者で、そこにいる餓鬼は人間じゃなくて、魔王で、霊の管理人で、帰れなくなって困ってると」




「……そうです」




「で、帰る方法が由緒正しい御堂家にあるのではないかと。そういうことだな?」




「です、ねぇ」




「剣を嫁にもらう話じゃねぇんだな‼‼」




「そうです‼」






そこだけはしっかりと熱意をいれて伝える。




嘘くさい話なのは認める。我ながら胡散臭すぎて笑えるほどだから。




それでも、剣ちゃんとどうかなる話ではない!!






「あら、残念。剣にいい人がみつかったのかと思ったのに」




「さささささサヤ!?」




「だって、槍。考えてもみてよ。剣の相手って、あの剣の相手よ?そうそう見つかると思う?」




「…………」






当の本人は家で飼っているらしい猫と戯れてる。








「大丈夫です。サヤさん。僕は弱いんで」




「そう?体つきからして弱者ではないでしょうに」






弱者って言い方が怖い






「それにそっちの赤眼の子は、魔王うんぬんはともかく只者でないことくらいはわかるわ」




「・・・・・・」






あ、アカメさんが何も言わない。怖い。








「やめとけ。人外に女を貢ぐな」




「それが胡散臭ぇんだよ。人外かどうかはともかく、人知を超えた力がほんとにあ……」








アカメさんがすっと指さす。






「サヤ。隣の部屋の黒いタンスの下」




「ぃやめぇろぉぉおぉおぉおおおおおおおおお‼‼‼‼」








瞬時に反応してその場から消えるサヤさんと、縋るように叫ぶ槍さん。




見えないけど、何が見つかったのかは察するところだ。




というかタンスの下って




普通引き出しの下とか本の間とかじゃないの?








「な、薙ぃいいいいい‼」




「私なわけがないだろう。親のへそくりの場所を知って何の得がある」




「なんでへそくりってわかるんだよ‼‼」




「想像がつく。そんなことをしなくても小遣いをもらえばいいだろうに」








にこにこ顔で戻ってきたサヤさんは優しく笑う






「薙は知らないだろうけど、若い時に勝負してね。小遣いの値上げは一切認めないって決めてるの」






奥さん、手早い






「まぁこれでアカメくんについてはわかったわね。それで、リンくんの力はどうやって見せてくれるの?」






これだよなぁ




アカメさんの証明は楽でも僕のはそうもいかないんだよ






「おい。悪いが時間ねぇわ」






と、急にアカメさんは立ち上がった。




よく見れば少し呼吸が荒い




そして何をするかと思えば、おぞましい速度で拳を床にたたきつけた






「銀髪?」






そして床板をはぐ。素手で、バリバリと








「おい!手前!人の家に何を……」








僕はとびかかる槍さんの手を制す




床板が剥がれてわかった。








「ねぇ、父さん。床になに入れてるの?」






ずばぬけてカンの鋭い剣ちゃんもわかったらしい




それほどの、モノだ








「なにって刀だ。ただの」




「只の、ではないです」








床下に潜ったアカメさんが手にしていたのは




お札と汚れた布にまかれた一本の刀








「っ」






僕からすると、刀に見えないけど




手だ。手だけだ




血まみれのまっかな手の塊






くそ。吐き気がする








「薙。当たりだ。御堂家にはこっちに精通してるやつがいる」








呪いのような文字、血のような何かで汚れた布、明らかに異常な刀の様子




そして僕が気付かないほどに封じた床板の術式










「じゃないと誰が好きで妖刀なんか床にいれるかよ」








この妖刀はやばいな

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