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魔王の手帳  作者: Karionette
第二章 殺害
74/219

事故1





炎だ




揺れる赤い熱




ゆらゆらと




さて。さすがに死んだかと思ったけど生きているらしい






隣の兄貴は心配ないだろう




あたしが生きてて兄貴がこんな事故で死んだんならむしろ笑うところだ




となると、後ろのタツの方が気になる






「・・・・・・・・誰」






片手で車の天井を支えて、長い脚で車の扉をへこませている彼


姿形はタツだけど、ちがう





「少しリンに体を借りた。剣士よ。その刀を寄越せ」




「は?人の愛刀を…」




「リンの体では腕が持たん」






ち。






意味が分からないけど渡すしかないか






『カガシ殿。問題ないゆえ、お力を抑えなさいませ。それ以上は御身に触りまする』






変なのが沸いた




着物を着た女




美人




色白いアジア系の








『ハクコに呼ばれて参りました。わたくしを呼ぶとはどのような事態かと思えば…。相手が山の祟り神とは恐れ入りました』




「狐か」




『人は玉藻前やら妖狐と呼びまするが、何でも構いませぬ。蛇とは古来より神に精通する生き物。

その上位たるカガシ様と比べれば、人と戯れた妖怪など比較にもなりませぬ』




「御託は不要。手を貸せ。これは人の体だ」




『それが我が一族たるハクコの願いでもありますゆえ』






意味不明な会話ののち、着物の女は片手で車の天井を引きはがし、私たちを外にだした。




というか兄貴がいない。いまさらだけど






『では、わたくしは王の手伝いをしましょうか。あの方は加減がいっさい利かないようですので』




「いや、我が行く。あれは我らよりリンの言葉の方が聴く」






そういってタツもどきはどっかに行った




どっかっていうか銀髪のところか






『そこの人間』




「あたしは剣だ」




『どちらでも構わぬ。働け』






さっきとは大違いだな、こいつ






『まだあの祟り神は近くにいよう。探して斬れ』




「見えない」




『役立たずが』




「あ?」




『ほう。人間ごときが楯突くか?』




「なんだよ。マリモが」




『ま、マリモ?!玉藻じゃ!』




「玉になってる藻なんてマリモしか知らん」




『ほおおおおおおおおおおん!!????言うたな人間!!』




「聞こえなかったか?ま・り・も」






目の前の女から相当なプレッシャーを感じる




筋力量を見ても強いわけがないが、一応刀に手をかけた




やられる前にやれ。世の常識だ






「お待ちください!!」






その間に立ったのは、小さな着物の女






「シュッキ?」




「剣さん、お収めください。このようなことをしている暇ありません!玉藻前様もどうか!」




「あんた声でるの?」




「そこはいいの!!!」








というか急に出てきたじゃん




全然気配も感じんかったわ






「兄上さまは衝突時に車から飛び出し、そのまま人命救助に向かっております。

赤目さんとカガシ様、玉藻前様のお力で異空間化し時間の流れを遅くしておりますが、このままでは付近もろとも爆発します。どうか剣さんもお力を」




「意味わからないけどどうなってんの?」




「脱線した電車が駅に衝突しました。しかし、その当時より時間の流れの遅延を行っております。車両から火が発生し、踏切前に待機していた車に燃え移っています。兄上様は火にまかれる前に助かる命の救助を。赤目さんは…もう知らない!!!」






なんで怒ってんのさ






「剣さんも兄上さまに尽力を!玉藻前様は炎の進みをお止めください!」




『あいわかった。ぬらりの愛娘の願いならば叶えようぞ。人工の炎程度たやすいたやすい。

人間。蟻のように働け』






ふん




諸々気にくわない点はあるけど言う通りか




確か死んだ人間が多いほど、あの悪霊に力いくんだしな






「わかった」






刀を腰に差し、並んだ車両の後ろ




おそらく兄貴がいるであろうところへ走った






・・・・というか兄貴




自分の妹助けるよりもそっち優先したのかよ。いいけどさ





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