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魔王の手帳  作者: Karionette
第二章 殺害
73/219

来訪・新






薙くんの車の中




僕はぼんやりと見慣れない景色を見ていた


少し寝てただけで景色が一気に変わってしまった






「龍川。外はどうだ?」


「……どうって?」


「景色に異変はないか?」


「………そうだなぁ」






普通なら、田舎と都会の間の、ほどよくのどかな景色だろう


なんていえばいいんだろうか


住宅地っていえばいいかな


不便ってほどじゃないけど目に付くものは何もない場所だ




僕の目には少し違う


どこでも霊っているんだけど


ここにいる霊は、異質だ






「……怨霊パラダイス」


「B級映画のタイトルみたいだね」






霊のみえない剣ちゃんはそう簡単に言えるだろうけど


これは異常事態だ




お化けっていうのは大体は浮遊霊だ


死んだことに気づかなかったり、わかってても彷徨うことにしたり


意識すら朧気でただただ徘徊している状態だったりだ


死んだ人だからもし見えたら怖いんだろうけど、害意はないのがほとんど。




でもここにいる霊には、恨みがある


死ぬっていう大きな事があっても残るほどだ


殺された人だったり、恨みながら死んだ人たちが多い


こうなると、僕の話なんか聞きもしない


曖昧な意識のなかで、恨み事ばかり言ってる






「…気分、わるいなぁ」






こういった霊が人を殺そうというか、連れて行こうとすることが多い


つまりはアカメさんが手がける対象ということでもある


悪霊というやつは、恨みはあるけど何に恨みがあるのかまではきちんとわかっていないから


もう何でもいいから恨みを晴らさせろってなるみたいだ




〇〇さんに恨みがあるから殺す


そんなきちんとした意思がある悪霊は見たことない




意思がある幽霊って、ただただ彷徨ってみたいとか


成仏したくないからという自分本位な霊の方が多い気がする






「あたしが剣振り回したら、楽になる?」


「いや、いいから。危ないし捕まる」


「大丈夫だよ」






大丈夫じゃありませんって






「何故そんなに悪霊の類が集まっているんだ」


「霊ってね。惹かれやすいんだよ。そのGOLDって人に惹きつけられてるんだと思う」






GOLDっていうか、それに憑りついてる鹿にだけど


人間への恨みの塊っていうんだから、それはそれは惹かれるものがあるんだろう






「では、やはりこの地区内ということか」


「というかそこの教会だね」


「右手のこれ?タツ。そんなのもわかるんだ」


「明らかに禍々しいもん」






もう吐きそう


教会とか寺とかには霊は集まりやすいんだけど


だからってそんなにびっちりいる必要ないでしょ






「でも今はいない。保護するのは、難しそうだね」


「一発ぶん殴るのもなしか」


「朱鬼ちゃんはいつでも呼んでくれって言ってたけど、無駄になりそうだね」






まぁここまで場所がわかれば後はアカメさんに任してもいいんだろうけど


というかそっちの方が安全な気がする






「仕方ないな。帰路につく。日を改めよう」




車が動き出す


目をつむって景色がすぎるのを待った


嫌な感覚だ


多すぎる霊が車や人を通り抜けてる


僕のすぐ横を掠めた感覚もした


薙くんには申し訳ないけど、少し急いで離れてほしい



願い叶わず車は止まった


特徴的なサイレンから踏切だろう


薄目を開ける


駅前ならしい



「………え」



金の鹿がいる


触手を伸ばし、がんじがらめにしている


人も、駅も、踏切も


そして向かってくる電車を招いているかのよう



嫌な予感がする



「だめだ!!!!」



僕は叫ぶ


景色は真っ白になった





っ!

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