テケテケ1
オカルトに興味なんてない
でも、あれがなんだか知ってる
子供
血がべったりとついている愛くるしい顔は
地面にほど近く、肘先程度しか離れていない
それもそのはず
子供は立っていない
立てない
なぜなら足がないから
下半身がまるごとないから
手で立って 手で歩くから
「ふふふふ、ふふふふふ」
子供は歌うように笑い ゆっくりと進む
走る
走る
走る
足が絡まっても
荷物が散らばって飛んで行っても
走って走って走る
「ふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
それでも耳元から笑い声が離れない
たすけてと叫んだ
何度も叫んだ
だっておかしい
今の時間は仕事帰りの人が多い
場所は駅前だ
なのに誰もいない
そんなはずはない
そんなはずはないのに
たすけて
たすけて
たすけて
たすけて
たすけて
たすけて
たすけて
たすけて
たすけて
たすけて
たすけて
『だぁああぁあああめ』
耳元の声は笑い声をやめて
少女の声でおぞましく言った
体がうごかない
『足 ちょうだぁい』
『2つもあるもの』
『1つでいいから』
『ちょぉおおだぁぁぁああい』
叫び声が枯れる
涙があふれる
足に小さな指がふれる
くいこむ
うばわれる
いたい
いたいいたいいたいいい…
「あんた大丈夫?」
人の声がした
涙に滲んだ視界には、女子高生がいた
口にみたらし団子を咥えた女子高生が
「たす、けて・・・・」
足元にばけものがいるの
てけてけ
有名なアレがいるの
このままじゃ死んでしまう
足がとられてしまう
言いたい言葉は足の激痛で消し飛んだ
代わりに飛び出したのは悲鳴
いけない
子供を巻き込んじゃいけない
痛みに泣きながらそう思った
「逃げ………、……て?」
必死の声もむなしく女子高生は御団子を食べながら私を抱え起こした
「道のど真ん中でなに泣いてんの」
え。
「ほら。残りのもう一本あげるから泣かないでよ」
そう言って彼女はわたしの口に御団子を差し込んだ
「まっぺ、あしが…てぺてぺ……」
「怪我して泣いてるの?」
いや違うわ!!
「ぅうううううぅううぅぅぅうう!!!」
またも激痛が走り、歯を食いしばって唸る
困惑するのは女子高生だ
「そんなまずかった?いや、嫌いなら言ってよ。ごめんて」
だから違うわ!!!!!!!!!!!!!!!
というかたとえ嫌いでもあの速度で口に入れられたら断れんわ!!
盛大に突っ込みをいれる
そのとき、テケテケが動いた
『なんで?はいってこれたの?おかしいなあああ』
テケテケはまたも笑い、今度は女子高生ににじりよる
止めようと手を伸ばすも子供の姿では想像できないほどの力で手は握りつぶされた
悲鳴をこらえて逃げてと叫ぶ
女子高生は未だに状況をわかっていないのか首を傾げる
テケテケの手がのびた
「あ?」
ドスの利いた声
吹き飛んだテケテケ
団子の串を突き出した女子高生
は? なに?
何がおきたの
「なんか……喧嘩売られた?」
女子高生は嗤った
そしてテケテケも真っ青になるほどの声色で言ったのだ
「いい度胸だな。殺すぞ」
姿が見えていないのだろう
見当違いの方向を指さして彼女は言うのだ
「御堂家に敗北はない」
え。なにこの子
そう思ったのが最後で、私は意識を失った
剣ーーー!!!!




