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魔王の手帳  作者: Karionette
零章 アカメの日記帳
51/219

敗北は許されない





「………で。兄貴はその妙な事件に巻き込まれていた、と」




「そうだ」




「それで、この銀髪だったやつに助けてもらったと」




「そうなる。記憶も戻してもらっているから嘘ではないようだ」




「…で、あたしはあんたに会ったことがあると」




「まぁな」




「ふぅん……」






さっぱり意味がわからない






「それで。他の人たちはどうしたの?」




「茜には念入りに記憶消去。抱えるには若すぎるし、力も無さ過ぎる。

俊祐と卓也には記憶はそのままで報告係になってもらった。

ネットとかよくしてるみたいだし、そういう案件があったら凛に報告いれてくれる」




「で。兄貴は」




「消そうと思ったんだが消えなかった。こいつが拒否してるから」




「知ったからには忘れたくない」




「だそうだ」






ふむ。なるほどなるほど


さっぱりわからないが、要するに兄貴は心霊体験というものをしたということか






「赤眼。それよりもいいのか?妹に話をしても」




「いいんだよ。黒髪の俺を見つけたら遊ぶって約束だしな」






うん?約束?


なーんかあった気もするな。そんな約束。




んー……。






「……斧!」




「ああ、そういやー天下一武道会で使ってたな」




「見てたの?」




「優勝おめでと」






なんだコイツ。ストーカーか




裏で行われている天下一武道会


武器、年齢、身長、体重。どれも制限なし


あたしや兄貴の遊び場だ




なんだコイツ。ストー……






「ストーカーじゃねぇよ」






そんなことより、と赤眼の男は向き直る。






「薙と剣。お前らはどうしたい。

知ったところでお前らは見る眼すらないし、一般的な人間よりそっち方面に関して圧倒的に鈍い。

だから、忘れて人間世界でのんびり生きていいんじゃねぇか?」




「は?」




「覚えていてもお前らにできることは何もないって言ってんだ。

それに、俺はあちら側の管理人だが人間は管理下じゃない。人間が死のうが生きようがどっちでもいい。

俺の仕事が結果的に人のためになっても、人間のためにやってるわけじゃねぇ」






だから、どうなっても知らないし責任もとれない。と言った。




ふむ。どうしようか。


幽霊という存在を知れたところで出来ることはない。だから忘れて生きろ、か。




道理にはあってるが性には合ってないな。






「役立たずと言われるのは不愉快だ」






兄貴は言った。


一日土の中に埋まって全員の骨にヒビがいってる兄貴


いや、なんで折れてないんだよ。と医者も驚くほどではあるが一応重傷だ




そんな傷を意にも返さず続ける






「記憶が戻り、今まで考えていた。要は心理的な問題ということだろう?」




「………は?」




「いないと思っているから見えない。殺されないと思っていたから死なない。

つまり存在を認識し、加えて彼らに私は殺せないと認識すればいい」






何言ってんだ、こいつ。銀髪が表情で物語る。


こっち見んな。うちの兄貴は時々変なんだって。






「意思の問題。見方を変えればいい。否定するのを止める。見えない物は存在する……。


………なんとかなりそうだ」




「いや、意味わかんねぇ」






突っ込みを無視して、兄貴はすっとあたしを指さした






「剣。顔の右側」




「は?」






と言いながらあたしは裏拳をかました。当たり前だが何にも当たらない。


ただただ、銀髪の眼が丸くなる。






「………は?」




「赤眼。うっすらだが見える。なんとかなるものだな」




「いや、ならねぇよ。なんだよその根性論」






いや、なるんだよ。兄貴の場合。


この殴られたことの無さそうな優顔しながら、兄貴はあらゆることにおいての天才だ。


頭もいいし、武道においても並ぶものはない。


映像見てイメージするだけで、どんな技でもできてしまうような天才。


見えないものが見えるようになってくらい、身内のあたしからすれば驚きもしない。




だが、それよりも!!と銀髪はあたしに掴みかかってきた。


咄嗟に防御姿勢をとり、いつでも相手の重心を崩せるように…






「んなことはいいから、おまえ何したんだよ!」




「は?」




「霊が消し飛んだ!でも消滅じゃなくて成仏…?何したんだよ!」






何って…裏拳?






「成仏っていうか、死んだ?殺された?は?」




「えーと。落ち着けって」




「死んだ霊が死ぬ?なんだ、その呪いみたいな…。いや、でも違う。


あんな拷問じゃない。一瞬で首とられたみたいな…。


最後に感じたのが恐怖と快感?あ??意味わからん!!!!」






だめだ。バグったわ、こいつ。




しばらく銀髪はぶつぶつと一人言を続けた






「………前言撤回」






そして銀髪はゆらりと立ち上がる。






「お前ら二人、意味わからんけど役に立つ。何も出来ないなんてことはない。


だから、記憶は消さない。でいいな」




「いいよ」






なんかわからないけど、役立たずではなかったらしい。


それはよかった。まぁそう言われても役に立つと言うまでぶっ飛ばすつもりだったけど




兄貴は銀髪の言葉に当然とでもいうように鼻をならす。






「私を殺せなかった時点で私の勝利とはいえ、傷の借りは必ず返す」






そうそう。確かに。身内やられて許せるあたしではない。こいつを殺るのはあたしだ。




頷くあたし。兄貴は当然と言わんばかしに笑った。






「御堂家に敗北は許されない」






最後に兄貴はそう言った。






異常兄妹


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