駅5
アカメ
聞いたことがある程度だった
こういった霊現象を解決する人間でも霊でもない存在
出会ってわかった
確かに普通ではない
彼が現れた瞬間に景色が見えた
死体の山が消えて 大鹿と消えていく霊たちが見えた
消えたのか去ったのかは判別がつかないが
「赤眼ヨ」
鹿が唸る
獣のそれではない
まるで地響きのようだ
「我ヲ止メルナ」
「馬鹿が。そうもいかねぇよ」
アカメの銀髪が静かに揺れる
「選択肢は3つだ
1つは俺に消されるか。次に大人しく元の居場所に帰るか。
最後に誓いをたててここに留まるか、だ。それ以外はねぇ」
「我ヲ消セルカ?若キ王ヨ」
「さぁ、やってみたことねぇからな」
「………」
人ならば力量も図れる
しかし人ならざる者が揃い、どうなるか見当もつかない
「滅ベ」
鹿は聞き取りずらい音を出した
「滅ベ 朽チテ 死肉トナレ
全テ消エテシマエ 贄トナルガイイ
我ハ止マラヌ 永遠ニ呪イ続ケル
赤眼キサマガ何ヲシテモ
妖ヤ神ガ何ト言ッテモ
人間、人間、人間
憎イ憎イ憎イ
醜イ醜イ醜イ醜イ醜イ醜イ!!!!」
頭が狂う
鈍い私とてそれを感じた
咄嗟に茜に覆いかぶさるが、すでに彼女の意識はなかった
そして私の眼におぞましい光景が映る
怨嗟だ
それを絵とすればこうなるのかと瞬時に理解する
人でも獣でもないくぐもった声
口を開けた何かたち
苦痛ではない。ここにあるのは怨恨
呼吸さえゆるさない重々しい空気
地鳴りがやまない
金の鹿は枯れ木のような角を掲げ
大地が崩れて草木が枯れ死のにおいが漂う
だめだ 立っていられない
隣を見る
その中で隣の銀髪は平然と欠伸をした
「うるせぇ」
アカメは一言そう言った
そして姿が消え、銀色の光となって大鹿に飛びかかった
しかしその光が届く前に霧がかかる
煙のようなそれが晴れたときには大鹿の姿はなかった
「あーあ…割が、あわねーな」
アカメはぼつりとそう呟いてどかりと座った
気付けば辺りは暗黒
音は鈍く、全身に激痛が走る
全身が圧迫されて息ができない
死を認識する
拳を固め天を貫き、それで偶然崩れた土砂の囲いの外には星空があった
呼吸ができる
私は一息ついて、死の牢獄から抜け出した
さて、あとは人間の問題だな
凛のとこに行かねぇと
うまくやってくれたかな




