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魔王の手帳  作者: Karionette
零章 アカメの日記帳
31/219

虐め4



※この小説は実体験か夢かおぼろげですが、それをもとにして作成しております※




R15 残酷描写あり ホラー








「…………それで、女の霊に追いかけられる、と」




「そうなんです。もう夜になったら絶対に…。あ、あた、あたし怖くて……!!」






娘が家から出なくなって一週間


何故かと問いただすと、心霊現象に襲われていると言い出した。


馬鹿らしいと思ったが尋常ではない娘の様子を見て、一度専門の方に相談することにしたのだ。


これで気分が紛れて前のような明るい娘に戻るならばそれでいいと思ったのだ。






「な、なにか、あたしに憑いてるんですか!?」




「…強い恨みを感じます」






はは。やっぱり。


娘はガタガタと震えて叫び声を抑えているが、私は傍で支えながら心で笑った。


強い恨みを感じます、か。もっともらしい言葉だ。現代で誰からも恨まれていない人間の方が珍しいだろう。






「どうにかできませんか?」






私は努めて平静を保って言った。


霊能者を名乗る彼は言う






「なんとかやってみましょう」






霊能者は金額の話をし、行う手順を説明する。


何も頭に入ってこず、任せますとだけ伝えた。


そのかわり絶対に祓ってやってください、と。




金額は大きかったし、家も少々汚れるが構わないだろう。


娘のためだ。金も家も、娘と比べれば安いものだ。




霊能者は四隅に塩を盛り、清酒をかけ、ろうそくをいくつも灯す。


そして数珠をもって何かを唱え始めた。


何を言っているのかはわからないが、聴いたことのない言葉だ


お経とも、英語とも違うような気がする






「きゃぁあああ!!」






窓にヒビが走る。驚いて私の声も漏れた。


慌てて霊能者の顔を見ると、霊能者の体も小刻みに震えている。






「れ、霊が怒っています」






ホントかよ!!という怒鳴り声を飲み込み行く末を見守る。


霊能者は再び呪文を唱えだす。今度はドタンドタンと暴れまわる音が響いた。






「お父さんお父さん!!怖いよ!助けて!!」






娘を強く抱きしめる。


大丈夫だと何度も言った。それは自分に対しての言葉でもあった。




いつの間にか電気は消え、ろうそくの光だけになっている。


昼間だというのに、カーテンから漏れる光すらない。




私は電気のスイッチを押す。押して、押して、押しても明かりはない。


それでも続けると、女の叫び声が家じゅうに響いた。






「い、いやぁぁぁあぁぁぁあぁ!!!」






娘も指を差して同時に叫ぶ。


その先には、何かがいた






「あアあぁアアアアアァ……」






女だ。女の霊だ。


生きているわけがないほどに傷だらけで、粘り気のある赤い液体をぼたりぼたりと流している。


手を伸ばしている。でもそれは手ではない。足だ。


ずるりずるりと張っているが、腹から突き出た手の指は5本どころではない。


そして顔には、目も口もない。ただの3つの暗い空洞があるだけだ。






「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」






3人の叫び声が喉をついて飛び出す。


逃げようとするも体が動かない。霊能力者は必至で呪文を繰り返している。


霊が暴れまわる。叫び声のような恨みがましい声が家じゅうに響き渡る




その時扉が吹き飛んだ。




転がり込むように現れた青年は一瞬で霊能者に飛び乗ると鳩尾を貫いて意識を奪った。


すぐに数珠を粉々にし、酒や塩盛りを崩した。






「だ、めか。遅かった…」






青年は言う。途端に青年はがくんと膝をつくとボトボトと口から血を吐いた。


黒髪がぐらりと揺らぐ。それでも倒れはせず、彼の拳は床を叩いた。




大丈夫かと声をかける前にこちらを…いや、私の背後を彼は見る。






「そいつらを守れ。人を殺させるなよ」






瞬間にとんと肩に手が触れる。叫び声をあげるその前に、彼女は唇に指を沿えた。


言い方は悪いかもしれないが、日本人形のように美しい女の子だった。。


着物を着た彼女は何処かこの世の者ではないように見えるが、触れた肩からは確かにぬくもりを感じた。






「朱鬼…と、そこ二人。あんまり、この音を聞くなよ。読み取ろうとするな」






この音、と聞いてはっとする。呪文だ。


唱えていた霊能者は青年に殴られて気を失っているのに呪文は続いているのだ。






「聞こうとすんなって言ってんだろうが」






私は夢中で頷く。そして抱きかかえた娘を見た。


娘は声も失って青ざめた顔で震えている。もう叫ぶことすらできないようだ。


この分なら呪文のことも気づいていないかもしれない。






「ごめんな、遅くなった」




『ヴァ…アガ、めザぁん……』




「痛かったな、辛かったろ。ほら、俺の力いくらでも使っていいぞ。ゆっくり戻れ」




『あがめ、サん、ドウジ、て…わダジ、いじメレれるノ?』




「やめろ。んなこと考えなくていいから体を治せ。ほら、ひきこも待ってるぞ」




『なん、デわだシな、ノ?いツ、もイツもいつ、も。悪イこと、ジでなイよ』




「そうだな。わかってる。俺はわかってるよ。次はちゃんと守るからさ。だから…いいから戻れよ」




『ナンデ、ナンデ!!教エテヨ!!モウ痛イノハ嫌ダ!嫌ダ嫌ダ!憎イ、憎イ!大キライダ!


死ネバイイ!滅ベバイイ!呪イ殺シテヤル!ミンナミンナ殺シテヤル!!!!!!』




「……」






青年は傷だらけで、血だらけになっていた。


幽霊の傷が癒えて戻っていくにつれて。


それでもずっと霊を抱きしめ放さなかった。




だが、霊の様子はどんどん変わる。




言葉が機械的になり、光の戻った目に怨念が宿り、


言葉や視線から殺意が感じられた。




青年は何も言わない。






『私ニシタ苦シミヲ知レ!後悔シロ!嘆イテ苦シンデ、後悔シテ死ネバイイ!!


味ワエバイイ!人デナクナル苦痛ヲ!屈辱ニ恐怖ヲ!私ガ教エテヤ………』






青年の髪が銀髪へと変わる。そして黒い闇が霊を包み込んだ。






『アガ、メ…?』




「……」




『私ヲ消ス、ノ?』




「ああ」




『アカメ、モ、苛メル、の?』




「いや。違う。どっちかっていうと、処刑」




『処、刑?』




「苛めですらない。お前の意見は聞かない。一方的に、お前を消す」




『消、ス………』






黒が、飲み込んでいく。






『嫌ダ…』






窓ガラスが割れ、床が吹き飛び、赤い血が飛び散った。






『嫌ダ!嫌ダ!助ケテ!!助ケ…、『ゴメンナザイ…アカメサンゴメンナサ…、


『消エタクナイヨ!アカメサン言ッタデショ!苦シンダ分、次ハ幸セダッテ!コノ嘘ツキ!!!、


『死ニタクナイ、消エルクライナラ殺ス!コロシテヤル!!』


』アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』タスケテ!アカメサンタスケテ!オネガイイイイィイィィィ!!!』






同時にいくつもの声が飛び交う。同時なのに、何を言っているかが理解できるほどにはっきりと。


呪文の音すら掻き消えるほどのそれは、霊が完全に闇に飲まれるまで続いた。




そして霊は消えた私と娘は切り取られた空間に取り残されたようだった。






「全て忘れろ。全て、だ。いいな」






生きているのが不思議なくらいの傷を負っている青年は鋭い赤い眼光を光らせてそう言った。




何があったのか、貴方は何者なのか、返事のしない娘はどうなったのか




疑問は山ほどある。しかし、問いかけてもアカメと呼ばれていた青年は何も言わなかった。


無言で私たちを守ってくれた少女と共に、玄関を通って消えた。






あれ?傷が、治らん

血も止まんねぇ…

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