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魔王の手帳  作者: Karionette
零章 アカメの日記帳
28/219

虐め




ぴちょん ぴちょん




滴の音で意識が戻った


体が痛い。軋む。


耐えてゆっくり体を起こした




ここは何処だろうか






僕はいわばいじめられっ子というものをやっている


もちろん故意ではない。少し小さくて細くて眼鏡をかけてるからいじめられている




まったく馬鹿な話だ


なんで体の見た目とかでこんなことされなきゃいけないのか


青い狸の物語がそれを加速させてるんじゃないかと心なしか思うが実際どうなんだろう


眼鏡で細くて非力はいじめられる印象を植え付けてるんじゃないだろうか


だって、僕実際に「○○太く~~~ん」って言われてかわかわれたし




閑話休題




ということで、僕はいじめっ子たちに殴られ蹴られして置き去りにされたらしい


ずっと目隠しされてたから何もわからない


どうやら壊れたコンクリートの建物のようだけど…うーん、心当たりがない




あの悪がきども。親の車運転したな、絶対。僕たち高校生だぞ。絶対無免許じゃん


くやしいな。証拠とっとけば今頃僕の復讐コレクションの貴重なひとつになったはずなのに




おっと。物騒な言葉だったな。なーに単なる証拠リストさ。




いじめって親に言うとか先生に言うとか警察に言うとか、一応逃れる方法はあるじゃん。


逃れられるかどうかはおいといて


そんなのって、結局怒られるとか指導されるとかだけになる


うまくいっても「もうしません。ごめんなさい」って言われて涙目で睨まれるだけじゃん




なー。そんなんで満足いくと思う?


僕殴られてんだけど。蹴られてんだけど。めっちゃ痛いんだけど。


もしかしたら後遺症残るかもしれないじゃん。傷跡とか残っちゃうかもじゃん。メンタル崩れるかもじゃん。


それでも「ごめんなさい」で済んでしまうのがいじめというもの




はははー 許せるか、馬鹿野郎




ということで、僕はずっと証拠を集めてる。というか保管している


殴られ蹴られを録音。罵声を録音。写真をぱしゃり。時には録画。顔写真や身分証もなんなら手に入れてる。




僕はこう言う。「やめてよ、死んじゃうよ。お願いだよー」それでも止めない彼ら。


<命の危険を感じた>という記録完了




僕はこういう。「もう先生に言うから…警察にだって行くからね!」相手はこういう「そんなことしたらぶっ殺すぞ!」


やっほぃ!<脅迫された>という実録ゲットだぜ!




……ってなことをずっと続けてる


大人になるまで保管し続けるんだ




(いや、大人になってから訴えたところでそんなの時効だろ。できるのかよ…)


僕もそう思います。用意周到すぎて詐欺にすら思えるし。




だから。僕は警察にこれを提出する気はない。




あいつらが成人したとき 彼女ができたとき


就職したとき 結婚したとき


子どもが生まれたとき 親がそろそろ死ぬよってとき




大事なときに少しずつ公開してやる


家に職場に実家に知人宅に。最後には警察に届けてやる




え?なになに。これ使ってお金むしればいいじゃんって?


それしたら僕がお縄になっちゃうかもだもん。やらないよ。


あっちが「お金を払うから許してくれ!」って言ってもやめてあげないよ


こっちのネタが切れるまでは絶対にやめてやらないんだもん、ね!!






すっごい話がずれた


僕の短所だ。ごめんなさい。






とりあえずこの廃墟から脱出しなければならない




ちなみに、装備です


小型録音機・小型デジタルカメラ・ぼろぼろの上着とズボン・靴下(靴無)




スマホは、ありません。だって持ってたら壊されるか奪われるかなんだもん


靴はとられたかどっかに捨てられてるな。ゴミとかいっぱい入れられて




まぁいいのさ。あの靴、いじめっこの兄貴から拝借したものだし(笑)






隠していたデジタルカメラで現状をパシャリ。


置き去り記録済み。よしよし、時間も載ってる。


暗いけどまったく見えない程じゃないし、カメラに付属の電気があるからなんとかなるだろう


明るさが欲しい時はこうしてパシャリとすればいい




いざゆかん、と立ち上がった瞬間


目があってしまった




それはなにか




髪が長く、白い服をきて


顔が傷だらけで、あきらかに生気が無くて


ずるずると何かをひきずってる女




あなたはだぁれ?


ここはどこなの?


傷だらけだけどだいじょうぶ?


何をひきずってるの?


そんな疑問一つ持つことなく僕は脱兎のごとく走りだした




瓦礫も埃も関係なく、とにかく走ってアレから離れる




ナニアレ。まじ人間?


いやいやいやいやいやないね。あんなの人間っていわないね


あれ人間なら猿も人間って言っていいよ、たぶん


チンパンジーの方がよっぽど人間らしいわ




右も左もわからない道を我武者羅に走り僕は見つけたロッカーに飛び込んだ




息があがる。狭くて生き苦しい


そして冷静になる




おいおい、こんな出口も入口もひとつの所に逃げ込んでいいのかよ


ほんとに綺麗に通り過ぎてくれんの?


僕なら中視るわ。とりあえず見るわ。


でも相手は人間でもなさそうだしどうだろうか




ってか何でロッカー入っちゃったかな、僕。ホラーゲームの定番かな!?




頭のなかで悶々としていると、やがてその時はきた


いや、やがてというよりもうすぐその時がきちゃった


僕がさっき走ったことなんてなかったことになったくらい




ずず、ずず、ず……




長いドレスと何かが引きずられる音


小窓からちらりとのぞくと、引きずっているのは人形のようだ


小さな女の子の人形


子どものお化け的なものならわかるけど、相手は大人の女性みたいな生き物だ


人形持っていても不気味でしかない




通り過ぎてくれよ、頼むから


僕は目を固く瞑って祈る




がたがたとロッカーが揺れる


触れてるのか風なんのかはわからない


よし。なら風で揺れてると信じよう、そうしよう






どぉおおしてぇえええええ






低い声が響く






どぉぉぉしてなぁのぉおおおお






知るかよ何がだよこっちのセリフだようるせぇよ


心の中で最大限に文句を言い放つ


い、いやいや。これは風だ。風なんだ!




気付けばあちらさんのどおして?は四方八方から聞こえるようになってる


ロッカーが揺れる音だけじゃなくて、がりがりとひっかく音やベタベタとすがりつく音が混ざる


あれ風じゃないじゃん




……悲鳴なんてあげてたまるか


ぐっと口を押えて、涙の溢れる目を伏せた




がたがたがたがたべたべたべたべたがりがりがりがり


がりがりがりがりがたがたがたがたべたべたべたべた


べたべたべたべたがりがりがりがりがりがりがりがり




僕は目を瞑る。耳も塞ぐ


最後にちらりと見えたのは小さなのぞき穴から入ってくる細い指だ。


………忘れよう。僕は何も見ていない




頬を冷たい何かがふれた


……叫んで、も、いいだろう。か。いや、だめです。ですよね。




でもここにいても変わらない


音で判断するに相手は増えてる。それも大量に


となると増え続ける前に脱出する方がいいはず




背中にある箒の柄を握りしめる


目の前の細い手を凝視する


耳障りな音を無視する




そして扉を蹴り開けた


















いいか。我々がすべきは目先の利益でも味方を集めることでもない


すべきは復讐!FU★KU★SHU だ!




嘆く暇はないぞ、そこ!親にだだこねたってだめだぞ、そこ!


憎い憎いと紙に書くのもだめだ、そこー!




嘆くのは奴らの未来であり、親は我らが迷惑をかけてはいけない一番の存在である!


そして紙に描くは計画書だけだ!






「うぉうぉうぉうぉぉうぉぉぉ………」






だが君たちはそれを考えることもなく死んでしまった!それは逃亡でもあり、諦めでもある!


復讐のチャンスを自ずから手放したのだ!






「うぉうぉうぉうぉぉうぉぉぉ………!」






だから君たちはもう終わりだ!復讐はできん!あきらめたからにはしっかりと諦めるのだ!


だからこそ残してきた家族や大切なもの!だいすきなキャラクターでもいい!


彼らの行く末を守るのだ!今ある魂の己の愛するものに使うのだ!


ここで諦めきれないと嘆いたって仕方ない!時間は有限!有効活用せよ!!!






「うぉうぉうぉうぉぉうぉぉぉ………!!師匠ぉぉぉぉぉおぉぉぉ………!!」










……僕。何してるんだろ




学校の講堂のような広い場所のステージにたち、電源の入っていないマイクをがっつり握りしめ、


頭がなかったり手首にがっつりと傷がはいってたり、おかしな首だったりするお化けちゃんたちへ演説。




僕。何してるんだろ






「ほんとな。俺も何させてんだか…」






と言いながらお腹を抱えて笑っている黒髪赤眼の人とはさっき会ったばかりだ




あの時意を決してロッカーを開け放った僕はちょうどこの黒髪赤眼と遭遇した


うじゃうじゃいるお化けちゃんたちを、容赦なくぶん殴っている最中が初対面


印象は最悪さ。古傷がずくりと痛むくらいには。


お化けちゃんたちは子供が多くて、女の子もいたのに全く手加減しねーんだもん




おっと


お気づきかもしれないが、ここにいるお化けちゃんたちはみんないじめが原因で亡くなった子供たちばかりだ


そして僕がここにいる理由も彼らが原因となる






経緯を説明する






まぢいじめってどうかとおもう~




だよね、まぢさいあく~




そういえば生きてるやつでパナイいじめられっ子いるらしいよ?




なんそれ?まぢ笑える~




ちょっとみてみたくね?




話聞いてみたくね?






んな感じ。


いや、まぢ迷惑だよね!






「だよなー」






ですです






「でも助かったわ。俺、こいつらの気持ち全然わかんねぇし。


めそめそしてるやつ好きじゃないんだわ」






そりゃあんた、見るからにいじめる側だもんね


めそめそって意味すらよく理解してないタイプだろ






「うん」






うんって(笑)






「あ。そういやこいつ、いじめられっ子代表のお化けさんな。


一応都市伝説になってる。モリヒキコ」






あ、そう


ひきこさんね。なるほどなるほど


ごめん。知らないや


都市伝説ってトイレの花子さんくらいしか知らない




聞くところによると、いじめっこを引きずり回す都市伝説ならしい






……甘い!あまいぞ!ひきこよ!!!


お前たちというのは皆揃って甘味料か!!


それで都市伝説名乗るとは片腹痛いわ!!




僕は再びむっとしたひきこちゃんと笑う黒髪赤眼


あれ。僕また演説しちゃうの?




引きずり回すだと⁉そんなもの中世の拷問で既に行われとるわ!たわけ者!


オリジナリティに欠ける上に、あっちなんて馬だぞ!馬! 


舗装もされてない砂利道で馬の速度で引きずり回されんだぞ!?


もっと言えば釘を打った樽の中に入れられてから引きずり回されるのもあるんだぞ!




日本なんて所詮コンクリよ 石ころが時々転がるだけよ


そんな場所で、こんな僕に逃げられる速度で引きずる?




はん




時々あるでっぱりで頭打ったり?無駄に抵抗して爪剥げたり?


いや、そこまで頑張るいじめっ子はいないな、うん


よくて指の腹が擦り剝けるだけだわ




それを、死ぬまで?






「効率悪いな」






そういうことだ!黒髪赤眼!!わかってんな!




聞いたか!ひきこ!


もっともっと復讐を突き詰めろ!


頭を引っ掻き回してアイデアを絞り出すんだって………




痛ぁぁぁぁぁ!!!?






「勧めんな、バカ。俺はこいつらが人の世の中に出ないようにするのが仕事なんだよ」






なるほど。つまりは突き詰めたらいけないのか


そうか。それはすまなかった




やはり復讐は生きてるモンがやるべきだな、うん






「それはいーとして、素朴な疑問なんだけど」






うん?






「なんで親とかにいわねーの?」






……ははは




親、先生、警察。そんな権力者たちに言ってみろ


「僕はいじめられっ子です」ってレッテルを貼るようなものだぞ?


そんな永遠の弱者みたいなレッテル、将来に役立つとは思えないね!






「なるほど」






それに、うちの親、シングルマザーで妹もいる


息子はいじめられっ子、お兄ちゃんはいじめられっ子、なんて思われたくないんだ


これでも男だもん。僕だって






「ふむふむ」






それにうちの親に言ったら…包丁持ちだす。危ない。だめ絶対。


いじめられっ子なんてレッテルどころじゃなくなる






「なるほどなぁー」






わかんないだろうな、黒髪赤眼には






「うん。復讐のためとはいえそんな長丁場俺には無理。その場であらん限りの力でぶっ飛ばす」






だよなー。それができたら僕だってそうするかもなー。


1対1でも無理ゲ―なのに5人だもんなー。諦め諦め。






「んじゃ教えてやるよ。筋力なくてぶちのめす方法」






え?いいの?


使うかどうかは置いといて知っときたいかも






「いじめ死亡霊たちへの御講義のお礼に。俺も面白かったし」






いじめ死亡霊って…


言い方すばらしく悪いね、うん




よしよし。はじめよう!というかよろしくお願いします!!

































僕はいじめられっ子だ。結構筋金入りの。


それが最近進化した




進化とは




僕をいじめた人は幽霊に襲われるという噂がたっているのだ


噂というか、いじめをしてきた人が泣きじゃくりながら僕に言ったんだ


もうしないから許して、と




いや、なんでだよ。僕なんもしてないんだけど




中心人物だった5人組は、手首が切れてる幽霊や首が異常に伸びた幽霊、頭が無い幽霊に追いかけられたのだという


曰く、彼らは「ししぉぉおのたえぇえぇえぇええ!!!!」おどろおどろしく叫びながら追いかけてくるのだと




そして追いつかれる!!って寸前で、女の幽霊がその幽霊たちをひきずっていくんだとか




なにそれ怖い 僕のチンケな心臓なら一発で止まるね


塩のタレ?獅子唐のため?何言ってんだかさっぱりだし、女の幽霊は回収班かなにかなの?






…まぁなにはともあれ、このおかげでいじめっこは僕から離れ、代わりにオカルト好きの連中が友達になった


ふむ。なんだろ、釈然としない。だがこれはこれでアリか。


集めまくったいじめの証拠たちは永久に保存するけど。






「今日は何の話をしてやろうか?」






んー。そうだなー。


よし、ひきこさんについて語ろう






「ひきこさん?」






なに?知らないのか。映画にもなってるぞ


ひきこさんってのはな………










人間の感性豊かさには驚かされるな

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