ナニカ3
あ
体が
できた
なんども
粉々になったのに
なんども
ずたすだで
砕けて
潰れたのに
声を聞いてくれた
声なんてないのに
既に捧げてしまった
魂ごとすべて
「教えてください」
なにを
なにを
なにもわからないのに
なにを知りたい
考える頭もないのに
「あれは何ですか」
あれは
龍
そう呼ぶ
あれは
霊を殺す
或いは消す
霊だけでなく
全てを
私の体を消した
私の魂を食らった
そういう存在
時の概念すら消す
魂の根底から消す
事実さえ消す
「貴方達はこの村の人ですか」
そう
我らは人柱
龍を宿して死に
対価で魂を喰らわれ
永遠に
永遠に
時の牢獄に捕まった
なんども死んで
何度も悲しんで
何度も何度も身も心も砕かれ
何も感じなくなった
人でも死霊でもない
ナニカだ
「あれに、何が出来るのか教えてください」
肉体と霊体を行き来する
自由に
肉体に宿り人ならざる動きをする
殺し、消す
あれに殺された人間は存在ごと消える
いなかったこととなる
霊は消滅する
消えてなくなる
時も消せる
記憶も消せる
人柱はみな記憶を失う
体も失う
やがては使い古され死ぬ
心が狂わないよう巫女がいる
巫女の命で巫女とだけ話が出来る
それもやがては消える
もって1年
私は1ヶ月
私は3日
私は1週間
人柱が壊れれば次のを用意する
出来なければあれは眠る
眠りは長くて1年
巫女が産まれるまで眠る
巫女が産まれれば人柱を用意する
「御堂薙。ご存知ですか?」
あれは逸材
あれは傑作品
あれは人柱
そうなるはず
そうなるはずだった
だが、あれが邪魔した!!
たが、あれが龍を起こした!!
そのせいで時が狂った!!
そのせいで記憶が狂った!!
人が死に!霊が死に!
事実が変わった!!
名のない鬼子が
名のない忌み子が
殺しの呪い子が
「………そんなに憎いですか」
憎い
憎いとも
あれのせいで龍は怒った
怒り狂い暴れた
何度も肉体を殺した
私たちの魂を削って暴れた
何年も何年も何年も!!!
ですが
永遠に龍を止めました
龍を体から逃がしませんでした
龍がいるから苦しい
龍がいるから痛くて辛い
なのに1度も
体から離そうとしなかったんです
「なぜですか?」
龍は代理の体を求めてませんから
御堂薙を求め巫女の命を求めますから
だから体から離さず何度も殺されました
あれは
あれは龍に諦めを植え付けるほど
10年も
体感ではそれ以上に
何度も死に殺され記憶を消され事実を変えられ
それでも
目的を見失わず
ここにきた
子供のできることじゃありません
時の狂うこの場所で確かに20を超えていても
知識も経験も何も無い
精神だけが成熟した子供で
あんなことができた
皆下がりなさい
私が話します
龍川凛
知るべきことは方策です
私たちがいるから龍には力があります
絶対的な信仰と
捧げた命に魂、そして時と肉体
あのような存在には力を与えます
そして龍は殺せません
命の概念を1度として知らない
それを殺すことはできません
そしてあれが死ねば
その加護で存在するこの村の存在と命は消えるでしょう
「なんとかします」
そうですか
それでは最後に
貴方に迷いを与えます
あなたも恨みを少し知るべきですから
貴方の