異界3
銀髪は強かった
いや、知ってたけど わかってたけど
「身体能力…こんくらいが人間かー」
どう?
「体重い。すごい非力。レベルすっごい下げられた気分」
思ったよりあんたってゲーム脳だね
「わかりやすいだろ?」
人間がどうとかこうとか文句を言ってる銀髪だが
こいつはあっという間にモンスターを次々と狩っている
あたしにレクチャーしながら、見たこともない技を使って仕留めているのだ
あたひは凝視する
そして隙あれば銀髪を攻撃
常に銀髪は軽く流して笑っていた
「惜しい」
うるさい
ほんと楽しくなるくらいに銀髪は強い
「そりゃお前の修行相手がシロクマでも、俺の相手は大蛇だしな」
おろち、大蛇、オロチ?
なるほど 強いわけだ
「お前もこっち側が視える目があればな」
うん ほんとに残念だ
銀髪のいる側には楽しいことの方が多い気がする
いつか連れてって
「考えとく」
しばらくは二人でモンスターを狩った
時に危ないときは助け合い、何故か二人で取っ組み合ったりもした
「何故じゃねーよ。お前が仕掛けてきたんだろうが!」
無茶ぶりで武器まで渡されたりもした
剣や槍ならともかく、斧とか扱った事すらない
おい これでも女だぞ
こんなでっかい斧投げて渡すなよ
……ま、いいけどさ
なーんてこともあったが、銀髪の動きを見て覚え、レクチャーを受け、最終的には何故か二人で取っ組み合った
とにかくそればっか
「だからお前が…」
気分は爽快だ
ハンターランクは100は軽く超えた気がする
「ならいいけどよ」
そんな楽しい時間も終わりが来た
この世界の王様らしい人が地球へ繋がる道を開いてくれたらしい
ここに長くいたいわけではないけど、離れるとなると少しさみしい
もっと腕を磨いていたかった
あと、銀髪な
楽しかったよ、ほんと
「ああ、こちらこそ」
おばあさんが無言で消える
同時に銀髪の姿も霞んできた
ああ、お別れか
いいさ しろしろと遊ぶからいいんだ
どうせこの記憶だってなくなるんだし
「おい」
瞬きする間に、銀髪の赤い眼が近くにあった
「黒髪の俺を見つけたら、また遊ぼうぜ?」
あと足元注意な
銀髪はそう言って消えた
おっと
石ころにつまずいて足元が揺れる
でも予期していたあたしは倒れたりはしなかった
予期?
なんのことだろうか
あー、でも、なんか充実感がある
なんだろう そんなに今日の修行はうまくいったかな
いや、いつもうまくいくまでやるんだからそんなことは……
気にしてもしょうがないか
母にメールを打つ 「今日のごはんは御鍋がいい」
返信は即座に返ってきた 「りょ」
あたしは意気揚々と帰路についた
ああ、なんだか新しい武器を扱いたくなってきた
そうだな……誰も扱わないような…斧なんてどうだろうか
会わねぇ方がいいんだけどな