あいつ
「あかめさん!」
「………」
ああ
やばいな、あいつ
ホントに半身奪われた
で。あの会話
中身が問題か
外見は…あれで人間だっていうのが信じられねぇけど
「おい、キサラギ」
「…」
「おれにその傷移せ。その程度どうにでもならぁ」
「……」
まぁ
たしかに
あんなのを凛たちに任せてらんねぇよな
人間の手に負える範疇を軽く超えてる
「おい」
「……うっせぇ」
「いいから聞け。アレは多分、この世で最強だ」
「……」
最強か
そうか
肉体があって
霊体を消せて
この世でかなうやつはいない、か
なるほどな
「アレは生き物も消せる。妖怪が消えるならな」
「……消された妖怪がいるのか?」
「消滅した知り合いは腐るほどいる」
まぁ黒妖犬なら
死んだか消えたかの違いがわかる
消えたは、消滅だ
「ヤバかったら逃げな。アレはお前の管理レベルを超えてるだろ」
「…ばか。管理にレベルなんかあるか。人間じゃねぇなら、人間じゃねぇ要素があるなら、俺の役目なんだよ」
相手は地上最強の生物
それにしては、だいぶ不安定だ
クソ野郎
俺が黙ってられると思うなよ
「黒妖。頼んだ。朱鬼、サポートは任せる」
「はい」
「おう」
傷を黒妖に移し、全力を体に宿す
髪が銀色になり景色は一瞬真っ赤に染まった
傷だらけの黒妖はあくびをしながら言った
「いってらっしゃい、くそ魔王」
なにがくそだ
俺ほどの働き者はいねぇだろ
さーて
始めるとするか