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師匠との出会いなんですけどね

「んもぉ〜、何処にあるの〜ドラゴンの泪〜」


どうして僕が凶暴なドラゴンの住むこんな危険な山奥に一人で来なきゃいけないのか…


僕は後悔していた、売り言葉に買い言葉というか、どうして自分はああも自制心がないのかな…


せっかくの休みだったのに、片道2時間かけてまで僕がここに来た理由は、昨日職場の同僚に言われた一言だった。



『トレジャーハンターなんてもうやめれば?』



不意に言われたこの言葉に、僕はめちゃくちゃ怒った。けれど、僕の怒号とは裏腹に、落ち着いた声で彼はこう言った。



『だったら何かトレジャーハンターらしいことしてきてよ』


『いいよ!やってやるよ!!!』



そんなことがあって今、僕は遠い山奥で一人[ドラゴンの泪]という宝石を探しているというわけだ。


ドラゴンの泪っていうのは、火吹きドラゴンの口内に存在する、所謂火打ち石のことだ。火を吐くタイプのドラゴンは体内で作られたガスを吐くと同時に、口内にあるこの石を使って火を起こすらしい。


この石こそが今回の僕が狙うお宝だ。


特に歳を取ったドラゴンからとれる[ドラゴンの泪]は、円熟された深みのある翠色をしており、とても高い値段で取引されるらしい。




…さっきから、らしいらしいと言っているのは、このお宝の事は人から教えてもらったからだ。



『危ない所だから決して無理しちゃダメよ、アムルちゃん』


このお宝の事を教えてくれたもう一人の同僚は、少し不安そうな顔で僕にそう言った。



「それにしても山頂まであとどのくらいなんだろ…、僕体力に自信のあるタイプじゃないんだけど……」


大して舗装もされてない山道を登って数時間、僕の心は折れかけていた。


「もう帰ろかな…、このままだと夜になっちゃうかもしれないし…。本当だったら今頃、家でPLCサンドと紅茶で優雅なティータイムのはずだったんだけどなー……」


そんな弱音を吐いていると、数メートル先の草の茂みがガサッと動いた。


「なっ、なに……!?」


物音に驚きながらも僕はサッと身構えた。


(もしかしてドラゴン?…でも野生のドラゴンが生息するのはもっと山頂付近のはず…。てことは、他の野生生物かな…、この辺りはハイエナウルフやイノジカがでるらしいし……)


物音はさっきよりも大きな音を立てながら、確実にこちらに近づいてきた。


(…よし、ここは先制攻撃だ。炎魔法で、茂みから出てきたところを狙ってやる!)


じっくりと僕はそいつが物陰から出るのを待ち、狙いを定めた。そして、次の瞬間…!


「…今だ!《下級火球(エリフィシュート)》!」


勢いよく飛んでいった僕の炎魔法は、見事に目標に命中した。

ボン!と爆発音が鳴り、『僕が狙い通り!』と喜ぶ間もなく、その声が響いた。




「うぎゃあああああああああああ!!!!!」




「えええええっ!?もしかして人間!?」



僕は慌てて駆け寄り、茂みの中を覗き込んだ。


そこにいたのは、この時代に似つかわしくない鎧を着て、少し前髪が焦げてしまっている金髪の男の人。



「うわわっ、ごっごごごめんなさい!!!」


僕の心が反省や後悔で満たされてる中、目の前は彼は一言こう呟いた。



「はっ……はら……へった…………」





これが、僕、魔法使いアムル・クスラムとエイド・ジンの最初の出会いだった。

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