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 イフルは呼吸を整え終え肺に溜めた空気を吐き出し、目の前で今も呼吸を整えようとしているフィリアを見据える。

 

 フィリアも先ほどの攻撃は無理をしたようで、今も僅かながら肩で息をしながら、イフルの出方を伺っていた。

 

 フィリアは強い。これは間違いないだろう。指輪をしているのにも関わらずここまで強いとは同じシスターとは思えない。

 

 このまま戦えば、お互いに消耗し続けたとしてもフィリアが間違いなく勝つ。

 

 力を制限する指輪をつけていてもこれだけの力を発揮してくるのだ。まったく恐れ入る。

 

 たとえそうだとしてもこのまま、押し切られるのは私としても簡単に許せるものではない。私にだって意地はある。

 

 ならばやってみようじゃない。相手は格上。ならば挑戦者として挑んでやる。

 

 イフルは出せる全てをフィリアに出し切る覚悟を決めると呟いた。


 纏え。全ての奇跡、そして加護を。


 イフルの覚悟に応えるように、イフルの奇跡がその体を包み込むと、その姿は炎炎轟々と燃え続ける火の化身と化し、そのあふれ出す力によりイフルは思わず口元を緩めた。


 今までにしたこともない力の使い方にイフルは、多少の恐怖に似たものも体に纏わりつかれたが、それでもなおそれを上回るこの未知の力に期待するイフルは高揚感で消し飛ばす。

 

 離れた距離からも伝わるその熱にフィリアも思わず「へぇ、やるじゃないの」と呟くほどであり、万全ではないが白剣の切っ先をイフルに向けて迎え撃つ構えをとる。


「いきますわよ」

「ええ、どこからでも来なさい」

 

 火の粉をまき散らせながら、揺らめく炎と共にただフィリアに勝つ。それだけを強く思い続けイフルは手に持つ大鎌に力を込める。

 

 対してフィリアは押し寄せる熱波に怯むことなく、イフルのみを鋭い眼光で睨みつけ、いま出せる全てを出し切って対抗する。

 

 炎と共に振り下ろされた大鎌を白剣で迎え打つと同時にフィリアは距離を取った。

 

 その戦闘を眺めていたクロノは、この戦況について顎に手をあてて考える。

 

 フィリアはイフルの大鎌を受けきることは出来たが、問題はあの炎だ。

 

 その熱量は、ここから見ていても伝わるぐらいであり、恐らくフィリアも自身が持つ加護では防ぎきれるものではないと始めから思っていたようで、様子を見る為に近づいてみたが、今の状態では焼き殺されると判断したのだろう。

 

 さすがに模擬戦だから、焼き殺しはしないと思うけど。

 

 だが、イフルもそれほど余裕があるように見えず、その証拠にその勢いは今も少しずつ失いつつある。

 

 戦況の終わりが近いのは間違いなく、勝利をどちらが勝ち取るか分からない面白い試合になってきたことに、クロノとセラは二人の戦いを一瞬も見逃さない様に、前のめり気味に観戦していた。

 

 イフルは自分の残る力が僅かになってきているのを感じながら、攻めの態勢を崩さずにただただフィリアを攻め続けた。

 

 あれからフィリアは防戦一方となっていたが、その目はまだ諦めておらず、残る力を気にかけつつイフルの攻撃を受け流す。

 

 お互いの削り合いと読み合いが続く中、とうとうその時はやって来る。

 

 それはイフルの限界であった。最初に纏っていた炎はすでにほぼ消えかかっており、勢いも衰え始めていた。

 

 フィリアはその姿を見ると最後の好機として、残る力を振り絞り、最後の特攻を仕掛けたのだが、イフルはそれを予想しており、迎え撃つ構えを取る。

 

 その構えにフィリアは表情を歪めたが、それでも構わずに特攻の構えを崩さずにお互いの武器が衝突する。

 

 フィリアの重撃にイフルは、歯を食いしばって半歩下がりつつも受けきるが、これ以上押し込まれれば、受けきれずにやられるだろう。

 

 よく頑張ったと、遠くから聞こえた気がして力が緩みそうになるが、最後の最後まで力を振り絞るイフルは吠えながらその声をかき消し、目の前にいるフィリアを見ると、


 「無理。力が入らない」

 

 悔しそうに呟いたフィリアの声と同時に白剣をリングへと戻して座り込むその姿を見届けたイフルは一番聞きたかったその声を聞き終えると、「やった」と小さく声を上げると同時に力なく地面へと倒れこもうとしたが、柔らかく支えられ、その身体はいまもその人に抱かれている。


 「二人共お疲れ様。とても素晴らしい戦いだったよ」


  クロノはイフルを抱き抱えながら、二人の健闘を称えるのであった。


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