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互いの積もった恨み

 今まで何度も戦場を共にした白剣が重たくなったことに軽くショックを受けていたフィリアは、一度白剣を戻すと、指輪を外してセラに渡し、もう一度白剣をだして振ってみると、いつもと変わらない感触に安堵する。


 「着けてみて分かったと思うけど、それがその指輪の効果で、なるべく奇跡(きせき)加護(かご)を上手に使えるようにするために作られたものなの」

 「へー。面白い物を作ったわね。クロノ様、セラにも指輪を着けてもらえますか?」

 「うん。いいよ」

 

 クロノはフィリアと同じように指輪を着けると、セラは指輪を天に掲げ尊く見つめ、いつかは本当の指輪をこの手にと誓う。


 「さて、セラもそうしたら使ってみるとしますか」

 

 セラはホルダーから一枚札を選び、それを窓へと向かって放つと、周囲にバチバチと電撃を起こし、ほどなくして消え去るのを見届け、


 「なるほどね。確かに装着しているといつもよりも勢いが弱かったわ」

 

 セラもその結果に頷き、指輪を外しイフルへ返す。


 「この指輪は着けていれば、力は抑えられます。それで、いつもと同じ力出そうとすると、指輪が壊れる可能性があります」

 「それでこれの意味は?」

 

 フィリアは先ほどの明るさが嘘のような神妙な声で問いかける。


 「もっと、力を上手く使わなければならないということです。そうすれば、私達は冥獄凶醒(めいごくきょうせい)(まがつ)との戦いに常に全力で戦うことが出来ます」

 「なるほどね。それなら、これを借りるわ」

 

 フィリアは自分から指輪を手に取り、右手の中指にはめる。

 

 「さぁ、強くなる為に励もうじゃない」


                      ☆

 

 フィリアが急遽、勉強会を中止してやって来たのは演習場であった。

 

 きっとフィリアも思うところがある為、早く実戦形式で試したかったのだろう。


 「さて、誰か私の相手をしてくれないかしら」

 「よくも自分の授業を休止にしておいて言えるわね」

 「今日はクロノちゃんもあまり乗り気じゃないし、どうせ鍛錬はする予定だったからいいのよ」

 

 クロノはフィリアに痛いところを突かれたが、この結果になったことはむしろ望んでいたことなので問題ない。だけど、こうして言葉にされると改めて申し訳ないことをしたと思う。


 「私の相手はクロノちゃんでもいいし、セラでもいいのよ」

 「僕はこの間戦ったばかりだから、辞退しようかな」

 「セラはいやよ。セラとフィリアだと、どうしても相性が悪いからセラの方が不利だもん」

 「ん~。そうなるとしたら、ぐるぐるはどうかしら?」

 「イフルです。いい加減に覚えてくれませんか?」

 「そうねぇ。私に勝ったら覚えてあげるようにしてあげるわ」

 

 フィリアはイフルを見下しながら挑発し、イフルも怯むことなく対抗して睨み返す。

 

 「そうですか。それなら制限があるとしても勝たせてもらうとしますね」

 

 フィリアとイフルはお互いに一歩も譲らずに、睨み合っており、その威圧は外野から声をかけるのもためらいそうになるぐらいだ。

 

 だからと言ってこのまま放っておくとただの喧嘩に発展しそうなので、クロノが間に割って入り、二人を落ち着かせて状況を整理する。


 「それじゃ、フィリアとイフルさんが模擬戦をするんだね⁉」

 「そうよ、この女には随分とクロノちゃんがお世話になったようだからお礼も兼ねて躾てあげないとね」

 「あーら、私はクロノ様には本当に申し訳ないことをしたと心から思っておりますが、フィリアはメイオール様の計らいに甘えてずっと、言いたい放題、やりたい放題してくれやがったじゃないですか。正直、その事もあって謝るのに随分と悩みましたが、まさかフィリアにも謝った上で更に躾をされるなんて冗談じゃないわ。なんならちゃんと、出来るように私が躾をしてあげますわ」

 「ちょ、ちょっと、二人共落ち着いて!」

 

 売り言葉に買い言葉とはまさにこのことで、二人は演習を始める前から一触即発の緊張した状態へと早変わりしてしまい、クロノの声すら聞こえなくなるほどにヒートアップしてしまった二人をどうすることもできず、クロノはおどおどしていると、

 

 「二人共! 口喧嘩はそこまでにしてさっさと始めるわよ! フィリアは指輪を着けているわね。イフルも準備完了ね!」

 『もちろんよ(だわ)!』

 「それでは模擬戦開始!」

 

 セラの無駄のない的確な指示と誘導により、フィリアとイフルによる怨恨の模擬戦が始まる。


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