三人の王国デート開始
「ちょっとセラ! クロノちゃんから離れなさいよ!」
「フィリアこそクロノ様から離れたらどうなの?」
「二人共もう少し仲良く……それとちょっと近すぎない?」
クロノ達は昨日の約束通りセドナ王国内をデートしているのだが、学園を出てからずっと二人はこの調子なのである。
お互いにクロノの腕をがっしりと掴み合いクロノは一見両手に花の状態で歩いてように見えるのだが、肉食モンスターが餌を自分の方へと寄せようと引っ張り合うように引き合っているというのが、正しいのかもしれないとクロノは思ってはいたが絶対に口には出さずにいた。
その際に、二人の多少の包容力は差があったが柔らかい感触が腕に襲いかかって来ている。さすがにこのままは感情的にマズい。
「ほら、そうしたら僕が二人の手を繋いであげるからこれでいいでしょ」
「むー、納得できないけどクロノちゃんが言うなら……」
「セラも本当はもっと近くがいいですけどこれ以上クロノ様に迷惑をかける訳にはいきませんし」
「二人共言うことを聞いてくれてありがとう」
二人に挟まれる格好で王国内を歩き続け、フィリアもセラもこの場所のことを熟知しているのか、裏道やおススメの隠れ家的なお店も紹介してくれたので、まずはここからということで今はこのお店に来店している。
「うむむ。こっちもいいけど、この季節限定も捨てがたいわね。ねぇセラは、どれにするの?」
「私は決まっているけど……あ、ちょっと待って。やっぱりこっちにしようかしら」
二人はメニュー表を見つめてどれにするか悩んでおり、その二人の姿は一見仲良しに見える程で先ほどの言い争っている姿を想像できないぐらいであった。
その二人を見る限りだとまだまだ注文するのに時間がかかりそうだし、ゆっくり待っているついでに昨日のリフィアとの会話を思い出していた。
一つはこの王国内に冥獄凶醒が既に潜んでいるということ。
もう一つはこちら側の戦力及び連携についてである。
それに昨日の話だとフィリアにもまだ秘密はあるようだし、いったいフィリアには秘密がいくつあるんだよと、誰かに聞きたいぐらいでありながら、フィリア攻略完了までの道のりが見えない闇のようだと思いつつ肩を落としていると、
「クロノちゃん。注文はどうするの?」
気がつくとフィリア達は注文を決めて店員さんを呼んでいたこともあり、せっかく決めていたのだが、どこに記載されているかが分からなくなり、パラパラとめくりながら見つけ出し、これ以上待たせては申し訳ないので、早く注文しなければと思う一心で注文を発すると、
「あ、僕はこれでお願いしまひゅ」
「ぷっ。は、はい。……かしこまりました」
一瞬、しんと空気が凍ると店員さんはクロノが噛んでしまったことを笑わないように口元を伝票で覆い終始笑わない様に、早歩きで注文を調理場へと伝えに行ってしまうと、フィリアは口角を上げてにんまりとしており、セラは顔を緩めない様に手で口元を押さえていたが、目は笑っていた。
「クロノちゃん。かわいー。最近見てなかったけど、クロノちゃんの困ったような表情が見られてだけでここに来てよかったと思うわ」
「セ、セラもそんなクロノ様見られて良かったと思いますよ」
「お願いだから忘れて下さい!」
クロノは恥ずかしさのあまりに顔を赤くして、いじるのを止めるように懇願するのであった。
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