刻印 そして力の在り方
「間違いなくこの王国の中心部にいるはずじゃが、どうやら用心深くしているようで、簡単には尻尾を掴むことは出来そうにないが、奴らは必ずどこかで行動を起こすじゃろうから逃がさない様に注意するのじゃぞ」
真剣にリフィアの言葉に耳を傾け、冥獄凶醒がいるという知らせを聞いた瞬間に目つきを変えて聞き入る。
「冥獄凶醒ってことはまたあのヴェドのような奴がいるってことか」
「そうじゃな。それに今度の冥獄凶醒はヴェドよりも強い力を持っていると想定しておいたほうがいいじゃろうな。ヴェドはどちらかというと。本体が戦うよりも「凶」を多く作り出して巧みに戦ってくる相手じゃったからの」
「ヴェドよりも強いとなると僕でも勝てるのかな」
「クロノは力をひきだせれば勝てるのじゃ。ただ、問題は他にもあるのじゃ。それは、まだこちら側の情報がそれほど集まっておらぬし、広まるのにも時間がかかるということじゃ。だからこそクロノやフィーちゃん達の行動が現状だとかなり重要となるじゃろう」
「そうなるとしたら、僕らは何を優先すべきだとリフィアは思っているの?」
「そうじゃなぁ。今回はどこにいるか分からない相手となると、連携が重要となるじゃろう。しかし、フィーちゃんもそうじゃがどうもわらわの力を持つ者はちょっと性格が変わっておるから連携が出来るかどうか疑問じゃな」
「リフィアがそう言っているってことは残りの力のある人もそれなりに癖がありそうだね」
フィリアは一番の性格については言わずと知れたことだが、もしかしてセラもとなると今度会う時は身構えてしまうかもしれない。
「基本悪い子ではないのじゃが、どうも偏っている子が目立つの。まぁわらわの力を悪事に使おうとする輩がいないのだけが救いじゃが、この話は今は関係ないのじゃ」
リフィアの話口調からして神様側も力を与えるのには相当苦労があるように感じられたのだが、それよりも今は冥獄凶醒にどう立ち向かうかが重要である。
「そうしたら僕がやることは……結構多いのかなぁ。でも、そういう役割だし仕方が無いのかな。でも悪い人達でないなら、とりあえずは話してみるよ」
「それで良いの。ちなみにクロノよ。あれからフィーちゃんの力を見てみたか?」
「ちょうど今日フィリアと試験的にだけど戦ってみたよ」
「率直にどうじゃったか?」
「ん。 そうだね。確かに強さも感じられたし強いと思うけど」
「相変わらずとりあえず発揮出来ているようでまずは安心したのじゃ。あとはどれだけ消費して戦ったのかが重要じゃな」
「ちょっと待ってリフィア。消費ってどういうこと?」
クロノはリフィアが発した消費という言葉に、何かが引っかかりリフィアの言葉を遮って問いかけた。
「そうか。クロノには教えておらんかったか。わらわの力は身体に宿した刻印を消費して戦っておるのじゃ。そしてその刻印は自然と時間が経過すれば補填されているのじゃが、フィーちゃんは引き出す力はあるのじゃが、燃費が悪くてかなり消費してしまうのじゃよ」
「じゃあ、なるべく使わないほうがいいってこと?」
「そうじゃな。実はフィーちゃん自身もそれには気づいておるのじゃが、なかなか打ち明けられる内容ではないし、すぐに一人で改善出来ることでもないのじゃよ」
「そうか。僕に出来ることがあればしてあげたいけど」
「ほう! さすがクロノじゃ。予想通りの言葉を待っておったぞ!」
リフィアは待っていましたと言わんばかりのにんまりとした笑顔でクロノを見ると同時にクロノはこの場合から予想される嫌な予感がしまくっていたが、その時、扉がコンコンとノックされたので、リフィアは瞬時にムッと顔をしかめ、クロノはそそくさと逃げるように扉へと近づき、救世主を向かい入れた。
「クロノ様。遅くに失礼します。ちなみにお時間は平気ですか?」
「うん。平気だよ。それでどうしたの?」
「はい! クロノ様さえよければ、明日はセドナ王国を案内させてもらおうと思っていまして」
「本当に⁉ 行くよ!」
「良かったです! そうしたら時間は――――――」
「クロノちゃん! 明日は私がデートしてあげるから準備しておいてね」
「え⁉ フィリアもなの?」
「もちろんよ。それじゃ、そういうことだからよろしく」
フィリアはセラの話を遮るように現れ、颯爽とどこかに行ってしまった。
「……セラさん。ということで、明日はフィリアも一緒だけど、よろしく」
「ええ、よろしくお願いしますね……」
明日はフィリアとセラとの王国内デートとなったのだが、そのデートは荒れることが確定するクロノであった。
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