お久しぶりです
その後は引き続き三人で授業を進めていたのだが、終了の時間となったので今は各自自室に戻っており、クロノは改めて与えられた自室について確認をしていた。
演習場から戻ってくると、以前住んでいた家に置いてあった私物が全て運ばれており、クロノは今度運んでくれたシスター達にお礼を言わないといけないなと思いながら窓枠に手をかけ外を眺める。
アクアミラビリスも観光地として整備されているので中心部はとても明るく綺麗な夜景が見えるのだが、残念ながらクロノが住む家からはその夜景は見えず月明りぐらいしか灯りがないほぼ暗闇なのだ。
それに代わりこの部屋から見えるセドナ王国の夜景はキラキラと輝いておりとても美しい夜景で眺めているだけ癒される。
しばらく夜景をぼんやりと眺めてからゆっくりと窓を閉めてベッドの方へと振り向くと、そこにはよく知った小さな姿ちょこんと座っており、その小さな神様はいつも通りの感じで、
「久しぶりじゃの。元気にしていたか?」
「うん。元気にしていたよ。リフィアこそ、元気にしていたの?」
見た目は子供だがこの教会にいる者全てに力を授けた神であるリフィアはあどけなさを残しながら、その魔石のような深い蒼色をした目でクロノを見つめるのであった。
「急にやって来てどうしたの?」
「なに、以前ほど引きこもりにならずに済むようになったので、こうしてクロノに会いに来たのじゃよ」
「そうなんだ。今、お茶を用意するから待っていてね」
クロノは素っ気ない返事をしてから、リフィルをおもてなしする為にお湯を生成し適量の茶葉を容器入れて茶葉を蒸気で蒸らしながらお茶が出来るのを待っていると、
「クロノよ。ついでにこれも剥いて切ってくれるかの?」
「もちろんいいよ。切り方は前と同じでいいかな」
「それでいいのじゃ。それにしても順調に使徒の力を使い始めているようじゃな」
「まぁね。本当は頼りすぎない方がいいと思っているけど、早く慣れないといけないってこともあるからなるべく使うことにしているよ」
「確かに今のクロノは早くその力を自分の物にすることが急務であるからな。頼りすぎないようにするのは、慣れてからでも充分間に合うじゃろ」
「そうだね。それにしてもこんなに早くリフィアに会えるとは思っていなかったよ」
「そうじゃな。わらわも試してみたがこんなに早く出て来られると思っていなかったのじゃ。やはり専用の使徒がいるのはわらわにとっても意味のある行動じゃったな」
クロノはリフィアから受け取った果物を斬り終えると、細い串を刺してちょうどいい大きさの皿に並べてリフィアを自分の方へと来るよう呼ぶと、少しだけ面倒そうな表情をしながら、渋々リフィアは机に置かれた皿にのっている切られた果物に刺されている串を取って小さな口へと運びシャリシャリと咀嚼する。
「ところでリフィア。この果物はどうしたの?」
「これはいつもおいてあるお供え物からもらって来たのじゃよ」
リフィアはこの教会にいる者全てに関係する存在の為力を授けたシスターやモンクから毎日祈りやお供え物を受け取っているのだ。
そのお供え物の一部を持って来てリフィアはこうして話をしながら、更に串にカットされた果物を刺して今度はパクリと一口で口の中に入れこんでゆっくりとシャリシャリ言わせながら咀嚼している。
クロノは自分で淹れたお茶をすすりながら美味しそうに果物を頬張る小さな神様を眺めていると、
「ほへへな。ひゅろろにひゅたたいたいことがあって来たのじゃよ」
「リフィア、ちゃんと食べてからいいなよ。あと最初の言葉がよく聞こえなかったからもう一度言い直してくれないかな」
「それでな。クロノに伝えたいことがあって来たのじゃよ」
「それで、何を伝えに来たのかな?」
「この王国に冥獄凶醒がいるのじゃよ」
「なっ⁉」
クロノはお茶を吹き出しそうになるのを何とか堪えて、じっと、リフィアを見つめるようにして次の言葉を待つのであった。
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