戦法 相性 立場
その授業の仕方はセラも驚くほど順調に進むと同時にクロノの習得もこれほど早いとは予想もしていなかったので、予定よりも早く講師のバトンはセラへと渡されるのであった。
「さてクロノ様。これから行うのは戦法についてですがその前に我々の戦い方は前提として奇跡や加護の使い方によって相性というものが出てきます」
「それって、火に強いとかフィリアみたいに氷の奇跡が得意とかそういうこと?」
「そうです。相性によっては相乗効果もあるので期待値が更に高まりますが、基本的は打ち消しもしくは、邪魔をしてしまうので使い方は意外と困難です」
クロノはセラの説明を受けながらイフルの戦法をぼんやりと頭に浮かべながら話を聞いていた。確かあの時もイフルは徹底して火の奇跡を使わせており、イフルの戦場との相性が更にイフルの追い風となりクロノは死ぬ間際まで追い詰められたほどである。
「また、クロノ様は戦場での基本の立ち居振る舞いは、どーんと自信を持って立っていてくれればいいです。冥獄凶醒やセラ達では太刀打ちできない相手の場合は、先頭に立って戦っていただくしかありませんが、基本は待機です」
「本当にそれでいいの? 僕が戦った方が言ってしまうとあれだけど、早く事が達成できるし、なるべく戦ったほうがいいんじゃないかな」
「クロノちゃんは確かに強いけど、頼り過ぎは良くないし、クロノちゃんが戦えない理由ができて私達がそれに振り回されるようじゃ一枚岩過ぎるわ」
「確かに何かあったら大変だし、他のみんなも強いから問題ないよね」
「そうよ。私だって力を取り戻したし、次はメイオールぐらいだったら余裕で倒して見せるわ!」
「ちょっとフィリア静かにして。今は私の授業中よ」
セラは刻印が刻まれた右目を少しだけ輝かせて、フィリアを注意するとフィリアは先ほどのお酒の件もあってか、おずおずと言われた通りに黙ってセラの話に耳を傾けた。
「さて、次ですがそれらを踏まえてクロノ様には得意な奇跡と加護をセラ達に教えて頂かないといけません」
「とりあえず知っている限りだとイフルの時には火は大丈夫だったし、あとは試してみないと分からないね」
「そうですか。そうしたら火は問題ないとして他の属性も確認しないといけませんね。フィリアは氷が出来るとして、後は後々確認するとしましょうか。とりあえずセラとフィリアの戦い方とクロノ様の戦い方の確認が取れれば今度は連携などの話になるでしょうし」
「うん。それでお願い。フィリアもその時はよろしく」
「もちろんよ。私だってクロノちゃんとは一緒に戦いたいし、確認は大事だわ。そうしたらセラ。早く確認する為に演習場に行きましょうか」
「分かったわ。そうしたら、内容を考えなくてはいけないから、ちょっとフィリアこっちに来てくれるかしら」
二人は演習内容について話し合いを始め、使徒としての役目や立場について早く理解を深めたいと思っていたクロノにとってはこの順調に準備が整っていくことに期待を寄せて二人の話が終わるのを待っていると、
「ん? あれは」
その時だった。フィリアが勢いよく椅子から立ち上がった際に落ちてしまったのか、先ほどまでフィリアが呼んでいた本が開いた状態で落ちてしまっており、フィリアは気づかずセラと何やら今後の段取りについて話合っているのでクロノはその本を拾い上げると、そこにハニトラ対策として今後行われる練習が記載されており、内容の意味合いとしては使徒となったクロノにその立場を利用しようと色仕掛けに襲われた時の対処の方法を覚える為らしいが、その中には過激なものも書かれていてクロノはその内容を想像してしまいそうになった時に、
「そうしたらセラ、もう少し調整してから行いましょうか」
「そうね。そうしましょう。クロノちゃん。ちょっとこっちに来て!」
「え⁉ あ、今行くよ。あとフィリア。これ落ちていたよ」
「ありがとう。クロノちゃん。それで今セラと話をしたことだけど説明するわね」
「あ、うん。よろしく」
クロノはフィリアと話をする前に、使徒の能力を使って赤くなった顔を冷ましてなんとか気づかれていないことに安堵したが、使徒の能力を無駄遣いしたことによる罪悪感が心の中に残った。
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