培った経験と過去の過ち
「そうそう言葉遣いはそんな感じで、あとは相手を見て合わせればいいと思うわ。次は食事の時について説明するわね」
フィリアによる礼儀作法の練習は予想以上に順調に進んでいき、フィリアの意外と上手な説明の仕方とクロノの吸収力により一般常識程度の礼儀についてはすぐに習得し、現在は更に上級の礼儀作法をフィリアから習っている。
その進行のスピードにセラも驚きつつあったが、以前から疑問に思う程のフィリアの礼儀作法については少しだけ羨ましく思っていた。
「相変わらず、意外とフィリアは礼儀作法が出来るのよねぇ」
「まぁ、昔取った杵柄ってやつかしら、体に染み込んでいて自然と出来ちゃうから特に意識したことも無いけどね」
「昔ってことは、セラと会う前の時だからやっぱり教えてくれないよね」
「うん。もちろんよ。昔のことも秘密よ」
「秘密なのはいいとして、フィリアってお酒飲むときも結構上品に飲んでいるし、そういえば初めて会った時も、豪快のようで上品だったよね」
現在着ているシスター服だって露出は多めだけど不思議と上品さが感じられるぐらいであるし。
「あ、クロノちゃんその話はちょっと………」
クロノが気づいた時にはフィリアが気まずそうに横目でセラを見ており、セラはわなわなと肩を震わしていた。
「ちょっとフィリア、今の話ってどういうことよ?」
「いやー。その場のノリっていうか。ほらっ私ってあの時結構暴走していたじゃない。だからやっちゃえと思ったらついがばっと飲んでしまいました」
フィリアの言葉は、どんどん小さくなっていき最後はわずかに聞こえるほどにまで小さくなってしまった。
「セラさん。もしかしてここにいる人ってお酒で制限とかあるの?」
「いいえ。お酒については年齢相応の度数は飲んでもいいのですが、問題は外で飲んでいたことで、シスターやモンクがお酒で事件や事故に巻き込まれない。もしくは起こさないように外ではなるべく飲んではいけないという決まりがありまして、仮に破ったとしても事件や事故を起こさなければ罰則とかありませんが、フィリアは優れた奇跡や加護を持つので高い意識を持って模範的な行動をしてもらいたいと言われていますので、これはなるべく広まらない方がいいでしょうね」
「本当にごめんなさい」
「してしまったのは、仕方ありませんが被害者とか迷惑をかけた人がいないことを祈るばかりですよ」
フィリアは本当に申し訳なさそうに反省しているようなので、セラもこれ以上咎めるような言葉は何も言うことはなかったのだが、最後にセラのボヤくように呟きを聞いてしまったクロノは思わず声を大にしてこの時言いたかった。大丈夫。被害にあったのは僕だけだからと。もう一人大柄の男もいたが、あの男は勝負に負けたので被害者ではない。敗北者だ。よって被害者は僕だけだ。と。
「セラ。それは安心して。あの時も被害者はいないから何か言われる事はないわ」
フィリアが静かにセラに向かって言うその姿を見て僕は疑問形の言葉を発しそうになったが大きく目を見開いてフィリアを見るぐらいで留まったが、フィリアは一切僕の方を見ることはなかった。
「まぁ、それならまだいいですけど」
セラは納得したのか椅子にまた座り直し、クロノは見計らってフィリアの肘をちょんちょんと指でつつく。
「どうしたの。クロノちゃん?」
「僕ってあの時被害にあったと思うけど………」
「もうクロノちゃんたらぁ。そんなこと言って。クロノちゃんはもう身内でしょ。だから問題ないわよ」
「あ、そうですか」
フィリアはセラに聞かれない様に注意しながら少し焦ったように話だし、その妙に説得力のある内容に僕はこれ以上何も言うことはなかった。
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