お祝いのお食事
演習を終えクロノは自室へと案内されると、部屋に設置されている脱衣所で初めて使徒能力で体を浄化してみたが、気持ち的には本当に綺麗になっているか分からなかったので、肌を触れてみると確かに汚れは無くなっているのでとりあえずは成功したと思われる。
アクアミラビリスにいた時は温泉で体を癒やしながら汚れを取っていたので、それに慣れてしまっていたクロノには、今のところはどちらかというと後者の方が合っている気がした。
脱衣所を出ると食事の準備を終えたシスターがちょうど支度を終えて出て行こうとしていたので軽く頭を下げるとシスターも応えるよう頭を下げて、静かに部屋を出て行くのを見送ると用意された食事が机の上に並んでおり、クロノとセラの為に用意された食事はクロノが見ても豪華なものだと一目で分かる程であった。
「クロノ様、食事の準備が整いましたので早速食べましょうか」
「そうだね。それにしてもすごく豪華に見えるけど本当に食べていいの?」
「もちろんですよ。さぁー、クロノ様! 動いた後の補給も大事ですからいっぱい食べて下さいね!」
クロノは慣れない豪華な食事を前にして、どれを最初に食べたらいいのか迷っていると、セラが「これが美味しいですよ」とおススメしてくれた料理から口へと運ぶと、薄味だが触感が良くて止まらずにそのまま食べ進んでしまった。
「クロノ様、よろしければ次はこれを食べるとよりこの食事が楽しめますよ」
「あ、うん。これだね。…………これ柔らかくてとっても美味しいなぁ」
箸で切るとほろっと崩れるその肉料理は、量は少ないがそれ以上はいらないと思える程の絶妙な量であって味も充分記憶に残るようなインパクトのある料理であった。
クロノはその後もセラのおススメに従いながら箸を進めて行き、今は食後のデザートを食べている。
「セラさん。この甘味もとっても美味しいね」
「クロノ様が気にいってくれてセラもとっても嬉しいです」
セラもクロノが料理を終始嬉しそうに食べている姿を見て上機嫌でデザートを口へと運ぶ。
「まさかここでこんなに美味しい料理を食べられるなんて思ってもみなかったな」
「ここにいるみんなはこれ程すごい料理を食べている訳ではないですが、基本的に食事に制限はないので好きに選択して食べていますよ」
「まさか。セラさんは毎日こんなすごい料理を食べているの?」
「いえいえ、セラもこれ程豪華な料理を食べるのは久しぶりですし、今回はクロノ様をおもてなしするためにセラが用意したものですから」
「わざわざこんなにすごい料理を用意してくれたなんて本当にありがとう」
「クロノ様はこれからこの本拠地で過ごすのですからこれぐらいお祝いしないと、むしろこちらとしても失礼ですから、そんなに気にしないで下さいね」
ん? これから本拠地で過ごす?
クロノは今のセラの言葉に違和感があり、そのモヤモヤを解消するために、おそるおそるセラに問いかける
「セラさんちょっといいですか」
「はい。なんでしょう」
「僕ってこれからここに住むことになっていますか?」
セラはクロノの質問にきょとんとしてしまい、その姿を見たクロノはこれ以上質問を続けるのを止めることにした。これは経験上ここに住むのが確定しており、聞いても間違いなく住まわされることは間違いないことだから。
「あ、セラさん。もういいですよ。もう自分で解決したので」
「すいません、ちょっと言葉が出てこなかったもので。あと、クロノ様が前に住んでいました家に在った物はこちらに順次運ばれますので、もうしばらくはお待ち下さいね」
「そっか。それは良かったよ」
あの家には元々置いてあった物がほとんどだったので、私物は自分の部屋にあったわずかな物だけであるだろう。
シスターさん達が今頃綺麗に掃除してくれているだろうから、次に入居する人が気持ちよく使ってくれればそれでいいし、僕は短い間だったが使わせてもらった家に感謝をするしかなかった。
それにしても、セラさんも見かけによらない行動を実行してくるので、僕はこれからここでやっていけるのかと少しだけ不安に感じた。
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