ヴィジョン火竜2
周辺は火球が爆ぜた際に出来た灼熱の大地と成り果てたが、その中心に出現した火の球体が今も轟々と燃え続けながら居座っており、その球体はこの灼熱の大地を自分の物と主張するかのように取り込んでいた。
火竜はその違和感に従って更に火球を打ち込んだが、球体は火竜の火球を弾き飛ばし後方の岩場へと衝突させ爆発すると、岩場はガラガラと崩れ落ちることからその威力はかなりのものだと誰もが理解出来たが、それよりも理解出来ないのは、その火球を打ち込まれても一切動じず今も炎炎と燃え続ける球体である。
この謎の球体に火竜も警戒をしている為近づくことを躊躇っているが、近づかなくても充分に攻撃の手段は残されていた。
火竜は再度口腔内に火球を放つ準備を始め、それと同時に足場に力を込め地面を掴みだした。
この行動を確認したセラは、守りを主戦にするタンクなどと対峙するときに見られた行動をデータとして反映したものによる火竜の連射態勢であることを理解した。
その理解と同時に火竜は、今も溢れ出してしまいそうな灼熱の火炎を口腔に溜め終えると、勢いよく放ち続け再度猛烈な勢いで、謎の球体目掛けて打ち込むと同時に爆裂を繰り返し周辺は爆裂の際に発生した煙で何も見えない状態となってしまったが、火竜は本能で感じているのか休むことなく大翼を広げ、剛脚で地面を蹴り出し、火球に向かって爪撃を繰り出そうとした瞬間にその球体から現れたクロノは長剣と変化させたコクウで爪撃を受けきると同時に、腕に力を込めて弾き飛ばした。
弾き飛ばされた火竜は何とか着地をしたのだがその際に体勢を崩してしまったのをクロノは見逃さずに瞬時に火竜に近づくと長剣を振りかざし渾身の一撃を放つ。
「うぉぉぉぉおおおおおおッッ‼」
クロノは火竜の頸部を両断すると、火竜は動きを止めて消滅し火竜の消滅と共に、岩場も消え元の演習場へと戻るのであった。
クロノはその事を確認すると、少しずつ力を抜き使徒の力を収め遠くからセラの声がして振り向くと、走ってこちらに向かってくるセラの手元には一枚の紙が握られていた。
「クロノ様―! お疲れ様でした。それでこれが今回の演習結果になりまして先に結果を見させてもらいましたが、やっぱり使徒様のお力は強いのですね」
クロノはセラからその紙を受け取って見てみると火竜の絵が記載されており、その絵の首元のみ黒く塗られており、補足として記載されている内容からするとどうやら一撃判定であったようだ。
絵の隣には今回の結果の評価が書かれており、書かれていた文字はSであった事を確認しクロノは安心し胸をなで下ろした。
「さすが、ブラッ――――、じゃなかった。クロノ様でしたね。まさか、首元の攻撃だけの一撃で倒すなんてセラは思ってもみなかったですけど、結果の示す通りS判定でしたしこの判定なら問題なくむしろ余裕に倒せるという判定になりますからね」
セラが、ウキウキと嬉しそうに話すのを見て、
「でも、僕の力だとこのぐらいは普通になってしまうのかな?」
「申しにくいのですが、言う通りです。正直クロノ様はもっと強敵と戦わなければならないお立場ですから………。でも、それだけ力を持つ人がこの本拠地にいるとなれば、ここにいるみんなも士気が上がりますよ!」
「そっか……。そうしたら僕もこの力に慣れてみんなの為に頑張らなきゃ!」
「セラもクロノ様を助けられるように頑張ります!」
使徒の力については未だ不明な事が多いが、この時のクロノは少しだけ前進したと思えていた。
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