ヴィジョン火竜との戦い
大きな翼を羽ばたかせ少しずつ距離を詰める火竜に対してクロノは出方を伺い続けた。仮想の敵であろうと相手は火竜である。使徒というSクラスの力を手に入れたとしてもそれよりも先にあった普通の冒険者として感覚が火竜を目視した瞬間反応してしまうのは最早反射に近いものかもしれない。
完全に把握していない使徒の力と、ただの冒険者時代の力の慣れについては言うまでもない。
だからこそ、ここで上書きを少しでも進めることはクロノの使命である。
火竜は速さを調節しながら目標であるクロノが接近しても逃げも構えもしないこと少しばかり違和感を検出していたが、目標がその場に留まっているのであれば完全に捉えたと言っても過言ではない。
警戒を続け火竜は一気に下降を始め、力を溜めに溜めたその剛脚を下降と同時に振り下ろした。クロノがいた場所に振り下ろされた加速により威力が加えられた剛脚はまともに食らえば原型は無く潰される。
クロノは当たる瞬間ギリギリまでその場に待機し、その瞬間に跳躍し回避した。
火竜はその着地場所にいるはずであるクロノを見下すように確認しているのだが、もちろんその場に場所にはクロノはいない。
その姿をクロノは離れた場所で見ており、そのクロノの表情には余裕はあったが、心臓の鼓動は今までにないぐらいに大きく鳴り響いて身体中を振動し続けた。
火竜が気づくまでに鼓動を抑え込もうと落ち着くように体に呼びかけるが、驚きふためいた体は今も騒ぎ立ている。
それもそのはずで使徒の力を信じたクロノは当たる寸前までその場にいるという、自殺行為を実行し、見ていたセラも異常が起きたのかと思ってしまう行為だ。
火竜はクロノを仕留め損なった事を確認して、周辺をキョロキョロと見渡すと、なぜそこにいるか理解することすらせずひたすらに鋭い眼光で睨み付け殺気を放って来る。
クロノは今すぐにこの場を離れて、火竜との間隔を離して隙を作りだし翻弄しながら戦えという過去の情報に基づいた脳から提案を何ども却下し、使徒となった自分を愚直に信じて再度構えることなく火竜を見つめた。
その行動に火竜は最早理解が出来なかったが、この戦いにリタイアしたと結論付けただただ排除をすることを決定した。
決定に従って、火竜は行動を選出し出した答えは火球を放つことであった。
火竜の火球はその威力で、周辺を高温の熱により焼き払う火竜が持つ最強の必殺技である。
その口腔内には、溶鉱炉の様に灼熱が溜められており今か今かと放たれるのを待ち続けている。
クロノはその火竜の姿を見ても逃げる事なくひたすらにその姿を見ながらその場に留まり続けた。
脳の指令は最早無くなり、心臓も落ち着き先程までの鼓動が嘘のようであった。
火竜は準備を終え、その溜めに溜めた灼熱の火球をクロノ目掛けて打ち込んだ。
高速で接近する火球に微動すらしないクロノを見てセラは思わず声を出したが、非常にも火球はクロノを焼き尽くそうと熱を帯びながら距離を縮めていく。
クロノは感覚を研ぎ澄まし、その限界ギリギリで目を見開き能力を解放すると同時に、火球は猛烈な勢いでクロノを包み込むとその形を崩して爆発した。
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